菓子パンは悪なのか?
こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。
【連載一覧はこちら】⇒スギアカツキ連載「悩まない子どもごはん」
「菓子パンだからNG」だとは思わない

先日、ひとりのママさんから質問をいただきました。それは、「うちの子が朝ごはんを食べてくれません。唯一“菓子パン”なら食べてくれるのですが、このまま続けて大丈夫でしょうか?」という内容でした。
うーん、これはわが子にも同じようなエピソードがありますし、同様の悩みを抱えている家庭は少なくないでしょう。
「朝ごはんは大事」という考え方は、かなり浸透してきていますが、何をどう食べるのが正解かは、いまいちわかりませんよね。子どもの朝ごはんについてさまざまな提唱がある中で、私は教科書通りに実践することは現実的に無理だと感じることもあります。
そこでもう少しやさしい実践法を優先したいと考えました。つまり、今もやもやしている誤解や不安を解消して、本当に大切なことを一つでも実践できたらいいなということ。
結論から言えば、菓子パンだからNGだとは、私は思いません。もっと他の視点に目を向けて、「子どもの健やかな成長に寄与する工夫」をひとつだけご紹介したいと思います。
菓子パンがNGではない!問題なのは……
まずは、不安解消の話からはじめましょう。
朝ごはんに菓子パンを食べさせること自体が悪ではないと、個人的には思います。おにぎりだから安心、というわけでは決してありません。
栄養学や科学的なエビデンスをふまえながら、育児や食育をリアルに実践する立場としてお伝えしたいのは、主食を何にするかよりも「たんぱく質」を朝ごはんに摂取できているか? という視点を重視すべきだということです。
極端に言えば、菓子パンであっても玄米ご飯であっても、子どもがおいしく食べていればOKで、主食に合わせてたんぱく質を食べているかのほうが大事。そこには大きな理由があります。
たんぱく質が足りていないとどうなるのか?
厚生労働省の調査によると、子どもだけではなく大人も含めた現代日本人がたんぱく質不足であるというデータが出ています。
これによれば、現代人のたんぱく質摂取量は戦後まもない1950年代と同水準にまで減少しています。たんぱく質を重視する理由は、次の二つが大きく関係しています。
①朝のたんぱく質が筋肉を増やす
近年の研究(※1)では、3食のうち朝食で摂ったたんぱく質がもっとも筋肉になりやすいことが明らかになっています。
②朝食のたんぱく質は、友達とのトラブルを減らす
たんぱく質をしっかり摂ることが周囲の人たちとのトラブル軽減につながるといった研究データが出ています(※2)。
またたんぱく質には血糖値の急上昇を穏やかにする働きもありますから、主食を何にするか? ではなく、「たんぱく質を摂取しやすい主食のスタイルは何なのか?」を点検してみることは有意義であると考えます。
そこでここからは、無理なく少しでも簡単にたんぱく質を摂取するためのアイデアをいくつかご紹介してみたいと思います。
最初から教科書通り、他人スタイルを全部習得することは難しいですから、できることからはじめてみるのがオススメです。
<参照元>
※1…早稲田大学HPリリース「タンパク質摂取時間と筋量増加の関係」より
※2…『医師が教える 子どもの食事 50の基本 脳と体に「最高の食べ方」「最悪の食べ方」』(ダイヤモンド社)より
意外と簡単!? タンパク質メニューの準備アイデア
まずは、加熱不要のウインナーやハム、レンチンするだけで食べられるシュウマイやハンバーグなどの冷凍食品はいかがでしょうか? 継続性を考えれば、冷蔵庫の状況や子どもが好きなメニューを優先していいと思います。
二つ目は、冷凍餃子をスープスタイルにして出すアイデア。主食とおかずを両方用意する時間がないときに便利です。同じ視点で、甘いだけの菓子パンではなく肉まんを選ぶのもアリ。
「これはダメ!」と否定するよりも、「こう変えれば少しでもたんぱく質が足せる!」というポジティブ思考が大切です。
残りものやお弁当のおかずを活用したっていい
最後は、残りものやお弁当作りのついでを利用するアイデア。
必ずしも朝にゼロから作る必要はなく、昨晩のおかずを温めたり、お弁当作りのついでにトースターでウインナーと鮭を同時に焼いても、おかしな仕上がりにはなりません。これらをワンプレートに乗せてあげると、子どもは難なく食べてくれると思います。
以上いかがでしたか!? 毎日の朝時間はバタバタと忙しいですし、親も心ある人間。体調が悪いときだってありますから、まずはたんぱく質に意識を向けつつ、無理なくできることから実践してみてはいかがでしょうか?
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
スギアカツキ
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。ビューティーガール連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
(エディタ(Editor):dutyadmin)





