<女性が一生、お金に困らないためのレッスン vol.23/経済評論家・佐藤治彦>
最近、株式投資を始めたという人が増えているようです。今までやってこなかった人でも、ボーナスの一部などを元手に少額からやってみたいという声も。
でも、具体的にどのような株を選べばよいのか悩ましいという人向けに、著書『素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書』が話題の、経済評論家・佐藤治彦さんに解説してもらいました。(以下、佐藤さんの寄稿)

株式投資をやっている人の多くが嬉しそうな理由
5月に日経平均が3万1000円まで上がったことは、ニュースなどでも大きく報道されたのでご存知の方も少なくないと思います。何と33年ぶりの高値だったんです。
33年前といえばこの記事を読んでいる人の中には生まれてない人も多いでしょうね。もしくは、子どもだったと言う人もいると思います。もっとも私はもう働いていたのです。うーん、なぜか残念。
ここまで株価が上がってくると、株式投資を既にしている人の多くが儲かってます。嬉しそうな顔をしています。何で儲かったかというと、株価が安い時に買ったからです。
でも、その人たちも高いうちに売らないと儲かったことにはなりません。また下がることだってあるからです。ですが、まだ上がるかもしれない、もっと儲けられるかも、となかなか売れないのも事実です。
売買で利益を出す株式投資、もう一つの側面とは?
このように株式投資は、株価の上下によって儲かったり損したりします。
ここまで上がってくると、安かった時と比べると十分高くなっています。もちろん、これからも高くなっていく株もあるでしょうが、そうでないものもあります。
たまたまた自分が買った株式が下がっていくものだったら損をしてしまいます。そして、どの株がこれからも上がっていくか、それとも下がっていくかを正確に言い当てることは誰にも、いやAIにもできないはずです。

写真はイメージです(以下同)
しかし、株式投資にはもう一つの側面があります。それは、配当金で儲けることです。
株式を買うということは、会社の一部を所有することです。ですから、会社が利益を出した時には、その利益を配分してもらえます。これを配当金といいます。
会社の人気・株価が上下する仕組みは?
毎年、株式1株あたりにいくらの配当金を出すと決めます。
株主にとってみると、配当金を多く出してくれる会社は嬉しい良い会社です。株式を持っていて良かったと思います。たくさんの配当金を出してくれる会社の株式は長く所有しておきたいと思うものです。
会社が計画以上に多くの利益を上げた時には、配当金をよりも多く出す「増配」を決めることがあります。すると、その会社の株式はより人気が出て、株価も高くなるものです。
反対に、会社が配当金を少なくしたり出さないこともあります。これは「減配」と言います。すると、会社の人気は落ち、株式が売られ株価も下がったりします。
コロナの時には、厳しい移動制限で出張も旅行もできなくなりましたから、航空会社や旅行会社は、経営が苦しくなり配当金を大きく減らしたり無くしました。当然、株価は大きく下がりました。
会社の経済的な価値は株価で決まると言ってもいい
経営にとって会社の株価をできるだけ高くしておくことはとても大切。それは会社の価値を決めるものだからです。
世の中が認める会社の経済的な価値は、その会社の株価で決まると言ってもいいかもしれないくらいです。
例えば、株式を10万株発行していたとします。その時に10株を持つことは会社の1万分の1を所有したことになります。そして、その株価が1000円だったら、1000円×10万株=1億円。この会社の価値は1億円だとなるわけです。
会社が仕入れや運用資金のために銀行からお金を借りる時に、貸す側の銀行にとってみると、会社の価値が1億円の会社と10億円の会社があったとすると、もちろん、それ以外の条件もあるのですが、10億円の会社の方にお金を貸しやすいものです。
株はいつのタイミングで買うと得?
企業経営者にとってみると株価の高い人気のある会社にしておくことは大切なのがお分かりいただけたでしょうか。
会社が多くの利益を出せなくて株価が下がったり、利益は上げているのに正当な配当金を出さないと、株主から今の経営者は良くない、辞めさせろと言われることもあるくらいです。
ですから、多くの企業経営者は株主に安定した配当金を出そうと頑張ります。できれば利益をもっと出して増配したいと考えるのです。
例えば、今年は株式を持ってる所有者に、1株につき100円配当しよう。そういう具合に決めます。
ところが、株価自体は毎日変動するものですから、1株1000円の時に買った人も1200円の時に買った人もいるのです。1000円の時に買った人も1200円の時に買った人も同じ配当金が支払われます。ですから、できれば安い時に買ったほうが得ということになります。
配当利回り・配当落ち日って?
株式取引をする時に、配当利回りという数値があります。
これは、いま売買されている株価で株式を購入すると、買った時に払った金額に対して年に何パーセントの配当金がもらえる予定か、という数値です。
例えば、株式が1000円で売買されている時に、ある会社は1株50円の配当金を払うことになっている場合は、配当利回り5%となります。
また、株式は毎日売買されます。株式の所有者も毎日変わっていきます。そこで、年に1日か2日の日程を決めて、その所定の日に株式を所有していた人に配当を払うと決めます。これを配当落ち日と言います。
配当金が欲しいので、配当が配られる直前になると、株価が上がることがあります。また、配当落ちの後には株価が下がることもあるくらいです。まあ程度によるのですが、私はしばらく配当金がもらえないとしても、下がってから買うほうが好きです。
株式を買ってみるのに大切なことは?
皆さんも夏のボーナスの一部で、配当利回りの高い会社の株式を買ってみるのはどうでしょうか?
繰り返しになりますが、覚悟と注意が必要です。株価は上がったり下がったりするもの。多少下がってもいいとしても、倒産すると会社は消滅したことになりますから、株式の価値はゼロになります。その後に会社が再建されても、元の株主は何の権利もなくなってしまいます。
ですから、配当利回りの高い会社だけでなく、潰(つぶ)れそうにない会社を選ぶこと。これがとても大切なのです。
また、初心者にとってみると、あまり株価が高い会社よりも、手頃な価格で買える会社のほうがいいと思います。
ゆうちょ銀行も日本郵政も1株あたりの配当金は50円
株式の売買は単位株といって、会社ごとに100株単位、もしくは1000株単位というように売買される単位が決まってます。株価が1000円で単位が100株だと、投資資金は10万円必要となります。
いくつかの会社を紹介しましょう。私も、もちろん所有している会社の株です。
例えば、ゆうちょ銀行(7182)です。この7182という数字はゆうちょ銀行の株式を売買する時に間違わないように会社ごとに振られた番号です。銘柄コードと言います。
また、郵便事業、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の持株会社である日本郵政(6178)はどうでしょう。株価は一時期と比べると下がっていて、6月2日現在の株価はやはり1000円弱くらいです。
日本郵政もゆうちょ銀行も1株あたりの配当金は50円です。ですから、株式を1000円の時に買ったとすると、配当利回りはどちらも5%となります。
配当金を手にする仕組み
もしも、株式が1200円まで上がってしまったとすると、その時の配当利回りはどうなるでしょう。答えは約4.17%です。
では800円まで下がったらどうなるでしょう。配当利回りは6.25%です。
それでは、もしも、私が日本郵政の株式を1000円の時に100株買って、800円まで下がった時にもう100株買ったらどうなるでしょう。私は200株所有していることになるので、200×50円ですから、今の配当金が続くとなると毎年1万円の配当金がもらえることになります。
私が株式を購入するのに使った金額は合計18万円ですから、約5.55%の配当利回りの配当金を手にすることになるという具合です。
配当利回りが高いJT、ソフトバンク
もっと高い配当利回りの会社はないの?と言われれば山ほどあります。
有名な会社で、その配当利回りで人気を集めている例がJT(2914)です。そうです、日本たばこ産業です。
こちらは、株価は6月2日現在1株3070円くらいで、1株あたりの配当は188円。ですから配当利回りは6.1%くらいになります。ただし、100株が売買の単位となり、購入するのにこの時点で1株3070円なら30万7000円必要になります。
ほかに配当利回りの高い会社は、1株1500円くらいで(15万円くらいのお金が必要になる)携帯電話やPayPayなどを手がけているソフトバンク(9434)があり、こちらは配当利回りは5.8% くらい。1株あたりの配当金は86円です。
銀行の定期預金の利息と比べると…
10万円を銀行の定期預金に入れておいても1年間にもらえる利息はきっと20円くらいでしょう。それと比べると配当金の高い会社は、5000円といった金額になるのですから、びっくりですね。
また、ゆうちょ銀行の場合は、500株以上を所有している株主には、配当金のほかに株主優待ももらえます。所有者には、3000円相当のカタログギフトが送られてきて、好きなものを選択できまます。

また、もう一つ大切なこと。
銀行などの利息には、税金がかかります。その税率は20.315%です。株式を売買して利益が出た時や、配当金に対しても原則として、この税率がかかります。
ところが、NISAという少額投資をする個人投資家向けの税制優遇制度があり、この枠内で購入すると売買した時の利益や、配当金に対しても税金がまったくかかりません。相当お得ですね。
2024年から大きく変わるのですが、今年に関しては120万円までとなります。株式投資初心者にとって十分すぎる金額だと思います。
夏のボーナスの一部で株式投資を初めてみては?
最初に申し上げたように、ここでご紹介した銘柄は株式投資ですから、買った株式が上がることも下がることもあります。
ですから預貯金とは根本的に異なるのですが、夏のボーナスの一部で株式投資を初めてみるのもいいのかもしれませんよ。
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※株式投資はご自分の判断と責任に基づいておこなってください。
<文/佐藤治彦 チャート/googleファイナンス>
佐藤治彦
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』など多数 twitter:@SatoHaruhiko
(エディタ(Editor):dutyadmin)




