ママ友界は、子どもが同じ年齢だというだけで一緒に過ごす独特の世界。さまざまな人が入り乱れて、ときには驚くようなことをする人も現れます。
斉木朋美さん(仮名・40歳)も、想像のナナメ上の体験をしたひとり。
子どもの小学校入学をきっかけに、引っ越してきた斉木さん一家。まだ知り合いもいない中での入学式を迎え、ここで親子ともに良い出会いがあればいいなと期待に胸を膨らませていました。
入学式にオシャレなママと出会う
「入学式が終わって最初の保護者会で、たまたま隣に座ったのが、オシャレな雰囲気のママ、Oさんでした。保護者証を入れるカードホルダーがとても素敵だったので『そのカードホルダー、素敵ですね』と声をかけてみたんです」
するとOさんはニッコリと笑って、そのカードホルダーは手作りだと教えてくれました。タティングレースという細い糸を編んで作ったものだそうです。よく見ると、ピアスもハンドメイドのタティングレースを使った素敵なものをつけていました。
「とても素敵で似合っていたし、タティングレースというのも初めて見たので、興味津々でいろいろ聞きました。するとOさんは『もし同じものでよければ、カードホルダーを作りましょうか?』と言ってくれました」
Oさんの提案を嬉しく思い、お願いすることにした斉木さん。急がないのでいつでも大丈夫と伝え、連絡先を交換しました。入学早々、素敵な出会いがあったなぁとウキウキした斉木さんですが、その後、不穏な空気が漂い始めます。
予想外の発言にモヤッ

数日後、Oさんから「完成しました」という連絡がありました。あまりの素早さに驚きつつ、すぐに作ってくれたことに好感を持ちました。翌週、学校の避難訓練の日に、保護者の引き取り訓練もあるため、そこで受け取ることにしました。
「引き取り訓練の日、Oさんがわたしを見つけて近づいてきました。そしてカードホルダーを手渡したそのとき『2500円でいいです』と唐突に言われました。好意で言ってくださったと思っていたので『え、販売だったの?』とモヤっとしました。もちろん材料費などかかるので、いくらかお支払いするつもりでしたが、事前に何も言われなかったし、値段も思ったより高いしで、モヤモヤしながらも、事前に確認しなかったわたしが悪いと思いなおして、お礼を言ってお支払いしました」
Oさんのハンドメイドは趣味で作っていると思っていたので、まさかしっかりと請求をされるとは思わなかった斉木さん。事前に価格を言ってくれなかったことにも少し不信感が出ましたが、ぐっとこらえました。
家に招待されると、そこは売店だった
その後しばらくして、Oさんから、家に遊びに来ないかとお誘いを受けました。ひとりで行くのはちょっと気が引けたので、PTAのクラス委員で一緒になったママさんも誘って、一緒にお邪魔することにしました。

Oさん宅を訪れると、オシャレなOさんならではの素敵なインテリアに囲まれたお部屋に案内されました。美味しいデリの宅配を頼んでくれ、おしゃべりに花を咲かせて楽しいひとときを過ごしたあと、Oさんに「ここにわたしの作品コーナーを作ったの」とリビングの一角に案内されました。
「そこは思いっきり『販売コーナー』でした。作品にきっちり値札がついていて、どれもかなり強気の価格設定。可愛いですが、この値段だといらないかな…というレベル。ですがお宅に招いてもらって『いらない』とは言いにくいですよね。Oさんはずっとそばにいるし、買わずには帰れない雰囲気で、周りのママさんも一緒に、仕方なく一番安いものを購入して帰りました。後味も悪いし、まさかお宅訪問で営業されると思わなかったので、他のママさんにも申し訳なかったです」
彼女の正体は“押し売りママ”

家に遊びに行っただけなのに、まさかの「買うまで帰れません」な軟禁状態になり、人間不信に陥ったといいます。
「売りつけられた衝撃で忘れていましたが、宅配で頼んだデリも、ワリカンでで請求された額がひとり5000円。確かにオシャレなデリだったけれど、ママ友同士のお付き合いにしては高すぎる気がして、帰宅してからもさらにモヤモヤが増幅し続けました…」
しばらくしてから、他のママと話したときにOさんの話題が出たので、アクセサリーを作っているのよね、といちおう話を合わせていると「家に招かれなかった?」と聞かれました。よくよく聞いてみると、Oさんは何も知らない人を自宅に招いて自分の作品を売ることで、一部では悪評が立っているママだったとのこと。
いいカモにされてしまった…
「何人も同じ手口で家に招き、アクセサリーを売っていたようです。もはや『被害者の会』のようなものができていて、できるだけ彼女と関わらないようにしている人も多いそう。引っ越してきて何もしらないわたしは、いいカモにされてしまったようです」
斉木さんもその後はOさんとは一線を引くようにし、一緒にお宅訪問をしたママ友にもそのことを伝えたそうです。たまたまそのママ友たちもOさんの悪評を知らなかったので、うっかり捕まってしまったようです。
ママ友は、同年代の子どもを育てている同志ではありますが、いろんな人がいるのだと勉強になったと話す斉木さん。今は気の合うママ友も増え、楽しく毎日を送っているそうです。
―シリーズ「春のトホホ」―
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<文/塩辛いか乃>
塩辛いか乃
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。note/Twitter:@yukaikayukako
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