小学校3年生の時から息子の“もっちん”が学校に行かないことを選択するまでの日々を描いた今じんこさんの著書『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』(はちみつコミックエッセイ)が、2023年4月15日に出版されました。
小学校1年生から、もっちんが「学校に行きたくない」と言うようになり週に何回か休ませることにした今さんですが、周囲からのプレッシャーを感じストレスを感じるようになります。
今回は本書から第2話を紹介。後半では、小学校2年生になってから毎日通学するようになった「新年度ハイ」の時期や、家に毎日子どもがいることで母親が感じるつらさなどについて聞きました。
※本記事は全4回のうちの3本目です
【1本目を読む】⇒小1息子が「学校行かない」宣言。“テンパる母”の心情を描いた作者を取材<漫画>
【2本目を読む】⇒「学校に行きたくない」は命に関わるSOS。不登校の息子との奮闘を描いた作者に聞く<漫画>

「新年度ハイ」とは?
――小学校1年生は休みがちだったもっちん君が、小学2年生から毎日学校に通うようになった時期のことを「新年度ハイだった」と描かれていました。新年度ハイとは何なのでしょうか?
今じんこさん(以下、今):学校が苦手な子によくあることなのですが、新年度から急に学校に行くようになるんです。そして張り切って通うのですが、大人にもある「五月病」のように、少しすると疲れてしまう子は多いようです。
子どもの「頑張りたい」という気持ちを否定したくはないし、「喜んでいるお母さんたちを傷つけてしまうかな」と思ったのですが、あえて描くことにしました。「新年度ハイ」というものがあることを知っておいてもらわないと、親が大喜びしてしまうことで、子どもが「休みたい」と言い出せなくなり、どんどん苦しくなってしまうからです。そうなると、親も後からつらくなってしまいますから。
――新年度になったからといって学校に行くつらさが解決するとは限らないということなのでしょうか?
今:クラスが変わってすごくいいお友達や先生に恵まれたり、新しい環境がフィットして本当に楽しいと思えるようになる子もいるようです。でも「学校のシステム」自体がしんどいと感じる子は、クラスが変わったからといって学校のつらさ自体が急に解決することは難しいと思います。
子どもが「つらい」と言えなくなる恐ろしさ

イメージです
今:子どもは心機一転して頑張ろうとするのですが、その気持ちが本人のできる範囲を超えてしまいやすいんです。親や先生が「学校に行って偉いね、頑張ってるね」褒めることで、子どもが疲れて休みたいと思っていても「お母さんや先生が喜んでいるから」と言い出せなくなってしまうのが「新年度ハイ」の苦しさです。
――子どもが学校に行くようになると親は嬉しい気持ちを隠すのは難しそうですが、今さんの場合はどうだったのでしょうか?
今:私もそこで「頑張ってるね」と言ってしまっていたし、当時はそれが寄り添いのつもりでした。でもそれは「学校に行けないあなたは頑張っていない」と言っているようなものだったと思います。
親が学校に行くことを目標にしているうちは、子どもに圧力をかけている自覚が持ちにくいし、「頑張って行ってほしい」という気持ちは抑えられません。今はそもそも学校に行ってほしいと思っていないので自分の態度にも出ません。
現在はもっちんが学校に行かないことを受け入れているので、「学校に行こうかな」と言い出してもドキッとはしますが、行きたいなら行けばいいし、行かないならそれでいいというフラットさで接しています。
子どもが不登校になると、働きに出られない?

『学校に行かない君が教えてくれたこと 親子で不登校の鎧を脱ぐまで』(はちみつコミックエッセイ)
今:今の時代、「学校はすばらしい場所だから絶対に行くべきだ」という親御さんはそこまで多くない印象を受けます。でも実際に子どもがずっと家にいるとお母さんは家事や仕事ができないし、自分の時間が取れない。それがつらいから「学校に行ってほしい」という親御さんが多いと思います。
――現実的に子どもが家にいると仕事に行けないし、働けないと経済的に困る家庭もあると思うのですが、どう折り合いをつければいいと考えていますか?
今:SNSなどでも1番というくらい多い質問です。「今さんはフリーランスで在宅ワークだから家で子どもを見られるけど、うちは無理です」と言われることもあります。「子どもが学校へ行かなかったら親は仕事を辞めるしかない」と思っている人が多いのですが、そこは子どもの状況を見て「親がどうしたいのか」で選択していいと思います。働き続けることが物理的に難しい場合は、腹をくくるしかないと思います。そこは各家庭で葛藤しながら決めています。
子どもを心配しながら、それでもご飯を食べていくためであったり、自分の精神衛生を守るために働く選択をする人もいると思うので、それを責めることのない社会になってほしいです。
【1本目を読む】⇒小1息子が「学校行かない」宣言。“テンパる母”の心情を描いた作者を取材<漫画>
【2本目を読む】⇒「学校に行きたくない」は命に関わるSOS。不登校の息子との奮闘を描いた作者に聞く<漫画>
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
(エディタ(Editor):dutyadmin)










