北村匠海と吉高由里子が年の差10歳の恋愛模様を演じるドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)が、毎週火曜日夜9時から放送されている。
豪華キャストの本作でひときわ目を引くのが、ディーン・フジオカ演じる新米産婦人科医の佐々木深夜。容姿端麗さとドジなギャップが絶対的に萌える役柄で、視聴者を笑わせ、キュンとさせる。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、二枚目でも三枚目でもお構いなしな“おディーン様”の“現在地点”を見つめる。
“おディーン様”のイメージ
ディーン・フジオカをイメージするとき、真っ先に浮かぶのが、月9ドラマ『シャーロック アントールドストーリーズ』(フジテレビ系、2019年・以下、『シャーロック』)で演じた主人公・誉獅子雄のクールビューティーなたたずまいだろう。同作の彼は“おディーン様”の愛称(いや、敬称?)にふさわしい振る舞いで、終始一貫して現代版シャーロック・ホームズになりきっていた。
深田恭子主演の傑作ラブコメドラマ『ダメな私に恋してください』(TBS系、2016年、以下、『ダメ恋』)でも三浦翔平の柔らかさとは好対照にクールなドSキャラクターを演じていた。でもディーンはときにイメージを大きくぶっ壊しにかかる。『星降る夜に』では、イメージ崩壊を恐れない振り切り方がすごい。
「マロニエ産婦人科医院」の新米産婦人科医である佐々木深夜は、爽やかイケメンなビジュアルとは裏腹に、ドジな奴でまだ仕事ができない。手術室に急ぐ途中、段差でつまずき、すれ違った看護師と衝突。尿検査のカップを頭からかぶってしまう。おしっこまみれのおディーン様、これは初登場にして衝撃的な場面だった。
お笑い偏差値が高い根っからのコメディアン
民放連ドラ初主演となった『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ系、2017年)では、ギャグを連発する三枚目キャラが新鮮だったが、筆者は常々この人はコメディが絶対に合うタイプの俳優だと思っていた。もちろん『シャーロック』などのクールな演技は超絶品だとして、根本的にはお笑いの素質を持っているのではないかと。
というのも、主演映画『Pure Japanese』(2022年)で筆者がディーンに取材をしたとき、彼の笑いに対する感性がエキセントリックに感じたからだ。大抵の場合、笑いは多くの人の笑いを同時に誘うものだが、ディーンさんの場合、人が笑わないところでむしろひとりだけ大爆笑する。しかもそれがものすごい声量でワイルド。この笑いのズレこそ、実はほんとうのお笑いの感覚な気がする。
ひとり大爆笑のあとには表情を変えてピタリとクールな佇まいに戻るのも面白かった記憶があり、独特な笑いのセンスを持った人だなと思った。『星降る夜に』の冒頭場面でおしっこをかぶろうがどうしようが驚くなかれ。我らがディーン・フジオカは、実は、お笑い偏差値が高い根っからのコメディアンなのだから。
二枚目と三枚目のすれすれ
手術中はうまく指示通りに動けず、看護師たちには半ば呆れられて怒られてばかりの深夜だが、産まれてきた赤ちゃんを前にカチコチの変顔をやったりする不器用だけれど、律儀な性格には好感が持てる。
休憩室で院長の麻呂川三平(光石研)に励まされると、新しい命が誕生することの奇跡と感動についていきなり演説口調で話しはじめてしまう。話し終えて、思わず息が上がってしまっていた自分にあっと反省の表情を見せたりするあたり、ディーンの低音ボイスでひと息に流れるからよりコミカルに映る。
一応はイケメン新米医者で通っているらしく、このクールな低音ボイスだし、二枚目ではないけれど、三枚目ともいいきれない。二枚目と三枚目のすれすれのところでの演技。単にクール、単にコミカルとは表現できない微妙な細やかさがディーンの真骨頂といえそうだ。
“萌え超人”ディーン・フジオカ
新米医師とはいっても、深夜は45歳。医大には30代後半で通ったというのだからかなりの苦労人でもある。でも彼は苦労をにじませる代わりにすごくキュートな顔ばかり見せてくれる。それを1980年生まれ、現在42歳のディーン・フジオカが演じるギャップには萌えずにいられない。
尿検査のカップをかぶって廊下にどてんと倒れている大きな身体。座敷の小さな机のパソコンに身体を縮めて打ち込んだり、上司である雪宮鈴(吉高由里子)のアドバイスを熱心にメモしたりする折り目正しさ。あるいはケーキをおごるといって馬鹿騒ぎしている院長を横目に全員分のお茶をさっそく注ぎはじめる健気さ。お茶を入れるとき、両手がふさがっているために食べていたおにぎりをパクっとくわえていたり。
大きく野性的な身体とのギャップ萌えビジュアルの数々は、あげはじめたらきりがない。『ダメ恋』でもドSなのに実は優しいというキャラクターのギャップが印象的だったが、本作は40代のディーン・フジオカが繰り出すギャップ萌えの宝庫。 “萌え超人”ディーン・フジオカの新しい姿がここにある。
ディーン・フジオカの“現在地点”
本作はディーン・フジオカの現在地点を指し示していると思う。その意味でも第2話は象徴的だった。
産まれてすぐに病院に置き去りにされた子どもを見て深夜は胸を痛める。彼がここまで感情を高ぶらせてしまうのは、出産時に妻と子どもをどちらも失った過去を持つからだ。医師である以上は主観的な感情は押し込めておかなければならないが、深夜の背中はすごく人間味があって視聴者に何かを訴えているように感じる。
柊一星(北村匠海)が働く「遺品整理のポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)は、実は深夜とは高校時代の同級生。ふたりが会話する第2話のラスト、産婦人科医になる前は、都庁でばりばり働いていたという深夜の現在の姿を見た千明は、「最近背中が丸いよ」と言う。確かに外で昼食を取る深夜の背中は心なしかもの悲しげで丸い。
ディーン・フジオカ、42歳。深夜のこの丸い背中には、ディーンの“現在地点”が丸め込まれている気がした。第3話では酔ってしまい、つまづいてもいないのに素っ頓狂な動きですっ転んでしまったり。かと思えば二枚目な顔を時折見せたりする瞬間もある。二枚目だろうが三枚目だろうがお構いなしなのが、現在のおディーン様なのだろう。
<文/加賀谷健>
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