
モンチッチといえば、世代を問わず誰もが知っているキャラクター。
「前髪を切りすぎた」ときに例えとして名前が出ることもあるが、モンチッチの容姿以外のアイデンティティ的な部分はあまり知られていない。
今回はモンチッチを製造・販売する株式会社セキグチの商品本部 マーケティング部 シニアマネージャー 幡野友紀さんに話を聞いた。
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当時珍しかった「体はぬいぐるみ、顔と手足はソフビ」の理由
株式会社セキグチは1918年に創業後、ふのり製造を行っていた。その後セルロイドの人形(発火の恐れがあることが指摘された以降はソフトビニール製に変更)の加工業も行うようになり、「日本だけじゃなくて世界に向けた人形作りをしよう」と動き始める。
「しかし、ヒト型の人形だとどうしても国ごとに支持されるビジュアルが変わってくることから動物をモチーフにしたものを作ろうとなったのです」
そこで、いくつかの動物モチーフのぬいぐるみが作られた。体部分は布製のぬいぐるみ、顔と手足部分はソフトビニールを活用したもので、これは当時かなり珍しかったという。
数多いる動物の中から、なぜ猿?
「すべて布製のぬいぐるみというのは型紙を起こすのも難しく、高い技術が必要とされます。しかし弊社はセルロイド・ソフトビニール製の人形をずっとやっていた会社なので、その得意な技術を活かしてみてはどうかという案が浮上したのです。ソフトビニール製なら顔の細かな表情も印刷で再現できます。その上で、ぬいぐるみのくたくたっとした感じを出すために身体部分は布製にしました」
何種類かの動物のぬいぐるみがあった「くたくたシリーズ」の中でも特に人気があったのが、猿の「くたくたモンキー」だった。
さらに人気を高めるべく、この「くたくたモンキー」に同じくセキグチで製造していたおしゃぶりをする人形「マドモアゼルジェジェ」の要素を加えて誕生したのが「モンチッチ」だった。
「当時の1970年代は働く女性が増えてきた頃。子どもが保育園や託児所でお母さんに会いたくて指をしゃぶっている姿が多く見られたそうです。そうしたその世の中の動きを反映させたこともあり、モンチッチは大ヒット商品となりました」
発売当初、定番サイズのモンチッチの価格は1,000円。当時の大卒初任給が78,700円だったことを考えると、現在の物価では3,000円くらいの価格になるが、それでも売り場にモンチッチが入荷した瞬間すべてなくなるほどの争奪戦だったという。
爆発的人気に……しかしブームは10年で終了

しかし、そんなブームも徐々に落ち着き、1985年には一時販売を休止。
「今でこそ50周年を迎えることができましたが、当時のモンチッチは弊社にとって“商品のひとつ”でしかありませんでした。どんな商品もサイクルしていくもので、どんなに社会現象を起こしてもいずれは落ち着く……そんな考えから、商品的なジャッジとして販売数が落ち着いた10年目に発売終了となりました」
商品が変わらず売れ続けていたフランス・パリでの販売は継続していたものの、国内では在庫が終了次第終了となったことで多くのファンからの問い合わせが殺到。「もう買えない!」という声があまりにも多かったことから、1996年には再度販売をすることになったという。
ファンからの熱い要望で再デビュー……以降変えた「モンチッチの在り方」とは
「1970年代に子どもで、モンチッチが好きだった方が大人になった頃、もう一度モンチッチが欲しいと多くお問い合わせを頂きました。そこで1996年の再販時にはぬいぐるみに加え、大人の方が普段使いできるグッズも販売しました。再度お子さん向けのブームを狙うという案もあったのですが、近年は子ども向けの商品は綿密なマーケティングをする必要があり、難しい。大人向けに照準を絞り販売する判断になりました」
セキグチとしても「再ブームを起こしたい!」という考えではなく、あくまで「ブームかどうかに関わらず売り場にい続けることでファンの皆さまとの接点を持ち続けたい」と考えている。
「1974年の発売当初の大ヒット、販売休止を経て2004年の30周年にリバイバルブーム、そして40周年にも話題になるなど、何度かの波がありました。弊社としては売上が少し下がってしまう時があったとしても、『いま売れないからやめる』という判断はせず、逆にどう広げていくかを考える方向性です。日本ではあまり話題になっていない時でも中国でヒットしたり、インバウンドで売れ行きがあがったり……ということもあります。なので商品としてどうかではなく、売り場にい続けることが重要だと考えています」
現在では東京タワーに50周年を記念したフォトスポットが登場したり、ベイホテル浜松町にコラボルームが登場したりと、大人のファンに向けた施策が中心。モンチッチは子どもの頃の思い出を懐かしむことのできるよう、これからもマイペースにそこに存在し続けてくれるに違いない。
<取材・文/松本果歩>
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