自分が死んだあと、自分の財産はどうなるのか――。
配偶者や子どもがいれば、それほど悩む必要はないかもしれませんが、配偶者も子どももいない“おひとりさま”だと、年を取るほどに不安は募るでしょう。たとえば、親族が兄弟姉妹のみの“おひとりさま”の場合はどうなるでしょうか。
意外と身近な「相続トラブル」
「相続トラブル」という言葉を聞いたことはあるでしょう。そんなのお金持ちの家の話で自分には関係ないとか、うちは家族の仲が良いから大丈夫などと思っていたら大間違い。相続トラブルは、遺産が1000万円でも起こりますし、平穏な家族の間でも起こり得るものです。
なかでも、兄弟姉妹間のトラブルが最近増えてきていると、『子のいないひとの終活準備』の監修者である相続実務士の曽根恵子さんは警鐘を鳴らしています。誰が、どのくらい相続するかは法律で決められていて、法律で相続の権利を与えられた人のことを「法定相続人」といいます。
両親、配偶者、子どもがいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人になりますが、曽根さんによると、「兄弟姉妹は相続の権利が同じで、また年齢も近いため、意見がぶつかりやすい」ためトラブルにつながりやすいということです。
相続トラブルは決して他人事ではないことがわかるでしょう。
甥や姪に相続させる人が増えている
しかし、最近は兄弟姉妹に相続させるのではなく、甥や姪に相続させるパターンが増えているといいます。
兄弟姉妹は自分と同じ世代ですから、相続したとしても近い将来に亡くなる場合が多く、そうなると甥や姪に財産は受け継がれることになります。
このとき、相続税が発生する場合、税金を2回支払うことになります。結果的に甥や姪に財産を渡すなら、最初から彼らに相続させると、税金の支払いは1回で済みます。
また、「次世代の甥や姪に財産を残したほうが、自分の財産を有効に使ってもらえますし、喜んでもらえます」と曽根さんはいいます。
「遺言書」を準備しよう
しかし、何の準備もしていないと、甥や姪に財産は渡りません。すでに述べたように、法律では兄弟姉妹に相続権があるからです。そのため、甥や姪に財産を渡したいと考えている人は、準備を整えておく必要があります。
それでは、具体的にどのような準備をしておけばいいかというと、遺言書を残しておくことが重要になります。
遺産の分配は法律で決められていますが、遺言書があれば、原則として遺言書の内容が優先されます。
法律では、法定相続人に対して「遺留分」という権利を認められています。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取れる相続財産のことで、遺留分を満たさなかった額まで現金を請求することができるようになっています。
たとえば、相続人が子ども2人の場合、相続財産の4分の1が遺留分となり、遺言書で財産を相続させないと書かれていても遺留分を請求することができます。
ただし、遺留分が認められているのは配偶者、子ども・孫、両親・祖父母だけで、兄弟姉妹に遺留分はありません。そのため、遺言書に「遺産は、甥と姪に遺贈する」と書いておけば、兄弟姉妹を飛ばして自分の意思を実現させることができます。
自分の意思を実現させるための「遺言書」
とはいえ、自分の死後に兄弟姉妹にわだかまりを残すことは避けたいところです。なんの相談もなく、遺言書で初めて自分たちに遺産を残さなかったことを知れば、兄弟姉妹は驚くでしょうし、悲しむはずです。
甥や姪に財産を残すのであれば、なぜ次世代に相続させるのか、自分の意思を説明しておく必要はあります。また、遺言書の書式には規程のルールがあり、自筆よりも公正証書が間違いないところです。遺言書を書く場合は専門家に相談したほうがいいのでしょう。
生きているうちに死んだあとのことを考えるなんて縁起が悪いと思う人もいるかもしれません。
しかし、「遺言書に残しておけば、自分の財産の行き先を自分が生きているうちに決めることができます」と曽根さんがいうように、自分の意思を実現させるためにも遺言書は書いておくことをすすめます。
相続で“もめない方法”などは『子のいないひとの終活準備』で詳しく解説されています。
残された人たちが相続でもめるような悲しい事態を避けるためにも、生きているうちから身内としっかりコミュニケーションをとり、遺言書を残すことが大切なことなのです。
<曽根恵子 構成/ビューティーガール編集部>
(エディタ(Editor):dutyadmin)



