日本人のSNS普及率は2022年に80%を超え、今や大半の人がSNSを使っています。最近では自分の写真を載せて投稿する人も多く、本人の特定が簡単にできるようになったことで、仕事とプライベートの区別ができずに困っている人も多いようです。
世田谷区在住の田中奈美さん(仮名・28歳)も、SNSの発信が仕事に影響してしまったと話します。いったいどんな経験をしたのでしょうか。
保育士として初めて一人担任を持つことに
奈美さんは大学卒業後に都内の保育園で保育士として働き始めました。そして、保育士として4年目ではじめて3歳児クラスで一人担任を任されることになります。
「それまでは乳児クラスだったので、担任が複数人でした。年少さん以上は一人担任なので、私にもついに幼児クラスで一人担任する役目が回ってきたのだと、クラスがスタートした春は緊張と使命感でいっぱいでしたね」
進級の前に、クラスの子どもたちの氏名やアレルギーの有無、家庭環境などを確認した奈美さん。その時に気になったのが、父子家庭であるAさん親子のことだったそうです。
「事情は分かりませんがAさんは子どもが1歳の時に離婚していました。ひとり親家庭であるAさんとはしっかりコミュニケーションを取らなければと思いましたね」
Aさんが送迎に来る時には奈美さんは担任として、なるべく子どもの様子や変化を伝えてコミュニケーションをとっていったそうです。
プライベートのSNSにいつも「いいね」してくる謎の男性
一方、プライベートでは趣味のランニングの情報をインスタグラムにあげていたという奈美さん。毎週末に続けていたランニングでは、その日に走ったコースと距離、ランニングウェアを着た姿の写真を投稿していました。
「いいね」「どこのブランドですか?」「今日も頑張ってください」などスタンプやコメントも徐々に増えてきて投稿が楽しくなってきた頃、投稿する度にコメントしてくるフォロワーさんの存在に気付きます。
「最初は、いつも反応してくれる人がいるなーと思っていました。でも、まさかそれがAさんだとは、思いもよりませんでした」

奈美さんがその事に気付いたのは、『せんせい、明日は懇談会ですね、よろしくお願いします』というコメントだったそうです。そのコメントを読んだ奈美さんは、ゾッとして背筋が凍ったと言います。
コメントには「かしこまりました」とだけ返した奈美さんでしたが、それ以来Aさんとの関係性はおかしくなってきたそう。
懇談会や送迎でも微笑み掛けてくる!最悪!

それからは保育園で顔を合わせる度に、Aさんは奈美さんに微笑みながら、意味ありげに目配せしてくるようになりました。
「クラス懇談会では、Aさんは私の近くに座り、私が進行している間、何度も大きく頷いたり、『へー』と声を出したりと相槌が大きくて。そんなAさんの姿に、他の保護者が失笑しているような異様な空気が流れました」
その状況に戸惑った奈美さんは、用意しておいた懇談会の資料を読むだけで精一杯だったそうです。
「付き合ってるのでは?」噂話が保育園に流れる
「Aさんが私に好意を抱いているのがわかってからは、Aさんとの距離感がわからなくなってしまって……普通に会話ができなくなり、挨拶もどこかぎこちなくなってしまいました」
そんな奈美さんとAさんの姿に一部の保護者が気付き、ついに奈美さんとAさんが付き合っているという噂が流れるようになったそう。
「園長と主任に呼ばれて、事実関係を聞かれました。私もこの関係をどうして良いものか悩んでいたので、あの時呼ばれて良かったのかもしれません。Aさんに恋愛感情はなかったので」
事情を素直に説明したAさん。いくつかアドバイスをもらい考えた結果、SNSで『恋人がいる』という投稿をし、SNSの発信自体も控えるようにしたそうです。
投稿からしばらくして、Aさんから奈美さんへの目配せはなくなりました。
「以前のような良好なコミュニケーションをとるにはまだ時間がかかりそうで。それまでの間、Aさんが保育園に送迎にくる時間には、主任にクラスに入ってもらっています。でも、まさか、ランニング記録用のSNSが仕事に影響するとは……まったく思ってもいませんでしたね」
その後、奈美さんは本名や写真を伏せて、別のSNSでまたランニング記録を始めたそうです。
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<取材・文/maki イラスト/やましたともこ>
参照:ICT総研『2022年度SNS利用動向に関する調査』
(エディタ(Editor):dutyadmin)
