「ネコノ農園」というオンラインショップを開くと、木彫りで作られたリンゴやエリンギなど果物や農作物の中に猫の顔が! なんとも言えない猫の表情がじわじわきます。そしてその横には、ほっかむりを被り農作業をしている木彫りのネコが一匹佇んでいます。
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この“猫が猫の農作物を売る”という不思議なストーリーの作品を作っているのは彫刻家の花房さくらさんです。「ネコ農園」以外にも、花房さんの作る猫の彫刻作品がかわいすぎる!ということで花房さんにお話を聞いてみました。

「人間が猫から猫の農作物を買う」ストーリも楽しんでほしい
――農作物と猫をかけあわせた作品を作ったきっかけを教えてください。
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花房さくら(以下、花房)「作った作品を販売する機会がなかなかなくて、『WEB上でも販売して欲しい』という声を多くいただいたのがきっかけです。でも、ただ猫を作ってWEBで販売してもおもしろくないなと考えて、猫が作っている農作物を、猫がオンラインショップを経営して、猫が売っているというストーリーにしたら楽しいんじゃないかなと思って、『ネコノ農園』を作りました。人間が猫から猫の農作物を買う、というストーリー自体も楽しんでもらえたらうれしいです」

――バナナの猫や栗の猫など、猫の表情がなんとも言えずクセになります。
花房「ありがとうございます。猫そのものがかわいい存在なので『かわいい』と言ってもらえることが多いのですが、かわいい以外にも『怖い』『気持ち悪い』など、いろんな気持ちを楽しんでもらえればと思って作っています」

モチーフの野菜や果物は、一つ一つモデルがある
――農作物のモチーフは、どのように決めているんですか?
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花房「ネコノ農園は毎月作品を販売する予定なので、旬の農作物を作るようにしています。作品を作る時期になると、スーパーに行って目をぎょろぎょろさせながら、旬の野菜や果物を探しています。あとは自分が彫って楽しいモチーフを選ぶようにしています。毎回同じ物を掘っても楽しくないので、彫刻で彫った時に色や形が素敵だな、と思う農作物を選んでモデルにしています」
――野菜や果物にもモデルがいるんですね。

花房「モデルにする農作物は一つ一つ買って、それを見ながら彫っています。個体には個性があるので、モデルがあったほうが作品にもより説得力が出ます。農作物の個性を読みとって、それに似合う猫を掘るようにしています。シュッとしたアスパラだから、若い猫にしようと考えたりします。モデルになった農作物は作品を彫った後に全部食べています(笑)。フレッシュなバナナにあう猫もいれば、くたっとしたバナナにあう猫もいます」
全部が同じ顔にならないように、それぞれ個性を
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――猫にもモデルはいるのですか?
花房「彫刻を始めたばかりの時は、猫の形を見るために飼っている猫をモデルにしていましたが、今は特定の猫をモデルにしていません。今まで、何百匹と猫を作ってきた中で『鼻筋がスッとした子はこんな感じ』『猫っぽいキリッとした目の子はこういう形』、みたいなイメージが自分の中に蓄積されているので、それをもとに作っています。全部が同じ顔にならないように、いろんなジャンルの猫の顔を混ぜて作っています」
――作品のテーマは、最初に考えているのでしょうか。

「作っているうちにちょっとずつ見えてきます。タイトルも作りながら考えます。栗を掘っていたとき、『りんごには、津軽とかふじとか名前があるのに栗にはないなぁ』と思い、栗にも『栗谷くん』『栗山くん』などの名前をつけて彫っていきました。アイドルにもかわいい系やおもしろい系などいろんなタイプがいるみたいに、栗にも個性があるなと思い、名前で遊びながら掘りました」


世の中への皮肉を込めた作品も
――ネコノ農園以外にも、猫が猫を売り歩く「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」など、不思議な猫ワールドの作品がたくさんありますね。
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花房「はい。『寄ってらっしゃい、見てらっしゃい』は猫の行商の親分が、子猫を売っている作品です。私の中にある『おかしい』という気持ちが、これらの作品を作る動機の一つになっています。『ペットショップで猫を売り買いするのが嫌だな』という気持ちや『人間だからという理由で、動物に何をしてもいいの?』という思いを作品に込めることもあります。『人間がかわいいと認めた猫以外は、生きちゃいけないの?』『人間社会からあふれてしまった猫は、どうして殺処分などのひどいことをされるの?』と、皮肉を込めています」

猫2匹との生活は、女子3人のルームシェアのよう
――花房さんのご自宅にはどんな猫がいるのでしょうか。
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花房「私の家にはメスの猫が2匹います。『つむぎ』と『ひなた』という名前で10年くらい一緒にいます。付き合いが長いので、『よしよし、かわいいな〜』という距離感ではなく、同じくらいの年齢の女子3人で、ルームシェアをしている感覚です。気付いたら横にいて、お互いあまり干渉はしません」
――つむぎちゃんとひなたちゃんとは、どのように出会われたのですか?
花房「ひなたは里親募集で出会い、つむぎは知り合いの知り合いから『殺処分されそうな猫がいる』と聞いて、迎えにいきました」
猫だからいいのではなく、2匹の人格と魂が好き
――それぞれどんな性格ですか?
花房「2匹とも若い時はキャピキャピしていましたが、年齢とともにだいぶ落ち着いてきました。日中は押し入れや暖炉の前でよく寝ています。『抱っこして欲しい気分なの!』という時だけ私のところにきます。女友達に話を聞いて欲しい時に、『ねぇ、ちょっと聞いてよ!』と話しにくるのと近いと思います」
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――花房さんにとって、つむぎちゃんひなたちゃんはどんな存在ですか。
花房「いてくれるだけでいい存在です。猫だからかわいい、どの猫でもいいというよりも、この子の人格と魂が好きだから一緒にいる存在です。猫が好きというよりも2匹が好きです。作品を掘る時も、猫の形を掘っているけど、猫自身の性格や持っている雰囲気を彫りたいと思っています。彫るなかで内面を表現したいと思います。自分がおかしいと思ったことを作品に込めたいという思いもありますが、まずは見ていただいた方に『おもしろい』『楽しい』と笑顔になってもらえればと思います。」
花房先生のInstagramには数多くの猫作品が掲載されています。猫たちが作り出す不思議な世界観がたまらなくかわいく、見れば見るほどはまっていきます。ネコノ農園のオンラインショップとあわせてチェックしてみてください。
【花房さくら】
Twitter:@hanafusa_sakura/Instagram:@sakura_hanafusa/petel gallery Instagram:@petel_gallery
彫刻家。淡路島在中。猫をモチーフにした彫刻作品を制作し、個展や展覧会をおこなう。
<取材・文/瀧戸詠未>
瀧戸詠未
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB
(エディタ(Editor):dutyadmin)


