小学生時代から10年間、母の再婚相手から性的虐待の被害に遭った魚田コットンさん。その経験を描いたコミックエッセイ『母の再婚相手を殺したかった』(竹書房)が2022年3月に上梓されました。
物心がつく前に両親が離婚をした魚田コットンさん。それから母と姉と3人で暮らしていましたが、小学校4年生の母が連れてきた“ツカサ”と名乗る男性と出会います。ツカサはのちに魚田さんの新しい父親になり、一緒に暮らすことに。最初は遊んでくれたり、可愛がってくれていたものの、魚田さんに性的虐待をするようになっていきましたーー。
インタビューの中編では、継父から性被害を受けながらも大学受験に合格した体験や、虐待に気づかなかったお母さんへの思いを聞きました。
今回は、3話を紹介。後半では現在幸せな家庭生活を送っている魚田さんに、いまの日常生活のことや性被害についてこれから発信したいことなどを聞いていきます。
【1話を読む】⇒「母の再婚相手を殺したかった…」10年間の性的虐待被害を描いたワケ<漫画>
【2話を読む】⇒「大事なところはきれいに洗わんと」継父からの性的虐待が始まった日…。今の思いを作者に聞いた<漫画>

現在の継父に対する感情
――現在はご実家の継父やお母さんと交流はあるのですか?
魚田コットンさん(以下、魚田):今住んでいるところが実家から遠いので年末年始に顔を見せるくらいで、それ以外にやり取りすることはほぼありません。
――継父と顔を合わせた時は怒りの感情が湧きますか?
魚田:今はまったくありません。私にとって完全に過去のことになったし、過去の出来事に怒り続けても何のメリットもなく時間の無駄だと思ったからです。それよりも今の家族と楽しく過ごしたり、自分のやりたいことをする時間を大切にしたいと思っています。
――性的虐待について継父を訴えようと思ったことはありますか?
魚田:私の中では本当に終わったことなので、訴えようと思ったことはありません。訴訟を起こして夫や家族に性的虐待のことを知られるのは避けたいという気持ちもあります。それよりも今の穏やかな生活を守りたいと思っています。
子どもを性被害から守るために
――子ども達を性的虐待から守るためには、どんなことが重要だと思いますか?
魚田:子どもが性被害に遭いそうになった時に自覚できるように、小さい頃から「大人がこういうことをしてきたら、それは虐待なんだよ」という知識を身に付けさせる必要があると思います。自分の子どもには「体を触ってきたり、見せてと言ってくるのはおかしいことだから、そう言われたら絶対にママに話してね」「家までの帰り道も1人にならないように。変な人がいっぱいいるからね」と言い聞かせています。
また、この作品を描いている時に思い出したのですが、幼稚園くらいの頃に近所の高校生のお姉さんに性的なことをされたことがあるんです。その時はまったく分からなかったのですが、今考えると性的虐待でした。だから性的虐待の加害者は異性とは限らないと思います。
あと、子どもが安心して相談できる関係性を学校の先生や親など周りの大人達が築かなければいけないと思いました。
今は“推し活”にまい進中
――「過去よりも今の生活を大事にしたい」と仰っていましたが、今はどんなことを楽しみにしていますか?
魚田:「推し活」です。「クリープハイプ」というバンドが大好きなので、ライブに行ったりして楽しんでいます。
「自分を大切にしよう」と決めてから、「今は子育て中だし」とか「お金が無いから」と理由をつけて自分のやりたいことを我慢するのは止めようと決めました。子どもの頃から自分よりも誰かのために我慢することばかり考えていたので、夫に気を遣うのもやめました。
自分を大事にすることで家族との関係がよくなったと思います。今後はアウトドアに挑戦して夏にキャンプに行ったりしてみたいと思っています。
――ご自身の経験を踏まえて、子育てで大切にしていることはありますか?
魚田:自分の気持ちをできるだけ言葉で伝えるようにしています。例えば子どもの帰宅時間が遅かった時には「遅い!」と怒るだけではなく「こういう理由で心配だから遅くならないようにしてね」と話すようにしています。
性的虐待から逃げる難しさを伝えていきたい
――これから魚田さんが描きたいテーマはありますか?
魚田:性被害に遭った人に対する偏見を無くせるような漫画を描きたいと思っています。読者の方から、「主人公(被害者)にイライラする」「結局、大嫌いな加害者に養われているじゃないか」とコメントされることがよくありました。性的虐待の被害者は逃げるのが困難な心の状態になってしまいます。なぜそうなってしまうのかというプロセスを分かりやすく描ければいいなと思います。
――性的虐待の被害者に対して「もっとこうすればよかったのに」と責める風潮は、被害者をさらに追い詰めてしまいますね。
魚田:いただいたメッセージの中には「40代になった今もまだ加害者の父と暮らしています」という方もいました。私が今も実家と付き合いを続けているのは、「夫や夫の実家に迷惑を掛けたくない」と思っているからでもあります。
もし今になって私が実家と連絡を絶ったら、継父や母が夫の実家に問い合わせるかもしれません。実家と絶縁する理由として「継父に性的虐待をされた」と説明したとしても、皆が皆「それなら仕方ない」と納得してくれるとは限らないと思います。そうなるくらいなら、年に数回会う程度は苦痛ではないので現状維持しているという面もあります。虐待の被害者に「加害者から逃げればいい」というのは簡単なことではないと知ってもらいたいと思います。
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<取材・文/都田ミツコ>
(エディタ(Editor):dutyadmin)




