<女性が一生、お金に困らないためのレッスン vol.15/経済評論家・佐藤治彦>
コロナで多くの人が困ってるのに、実は、マンションでも買おうと思って貯めていた頭金用の貯蓄の一部でこっそり始めた株式投資で、びっくりするほど利益が出ている……。そんな方もいらっしゃるでしょう。
この秋には300万円の投資が500万円に。嬉しい。大儲け!
そんなこと会社では言えないですよね。嫌われます。言いづらい。
ところが1か月ほど前に、日経平均が3万円台から2万円台に下がったことがありました。投資していた株式の金額も1割近く減ってしまった。500万円だった株価の評価は460万円に。なんてこともありますよね。
もう一度、500万円になるまでじっと待つのがいいのか?
それとも、これ以上下がる前に買った株式を売却して利益を確定したほうがいいのか?
今回はそんな、人には言えない、嬉しいお金の悩みを持ってるあなたにオススメしたい佐藤流投資の極意です。
いま考えておきたい経済の注目ポイントとともに解説します。
コロナ禍で売上が伸び、業績の良い会社もある
新型コロナウイルスに世界中が苦労しているこの2年の間、テレビや新聞のニュースでは、旅行会社、飛行機会社、ライブエンタメ、プロスポーツ、外食、ホテルなどに携わる人たちや会社の苦境が報道されてきました。
外食がダメなので、高級食材が売れない。旅行に出かけず、リモートワークのために、飛行機会社だけでなく、鉄道会社の利用者も減り売上が減る。
また、非正規社員やバイトの人たちの収入も大きく減っています。
メディアでは、こういう苦境に追い込まれた会社や人の話ばかりが取り上げられます。
もちろん経済全体としては下向きの感じがします。何しろ、日本経済の6割以上は消費者の個人消費が支えています。企業だけでなく個人消費も落ち込んだからです。
ところが、中には売上が伸び、業績の良い会社もあります。
新型コロナの経済の中で儲かっている会社とは?

例えば、機能の高まったスマホで十分と売れなくなった個人向けパソコン。勢いがなくなっていたパソコン業界の業績は大きく改善しました。とても売れた。リモートワーク用に自宅で使えるパソコンが必要だから買った人が多いのです。
スーパーマーケットも食品や家庭用品を中心に売上を伸ばしました。新型コロナの2年間でも悲喜こもごもだったのです。
実は新型コロナの経済の中で、国が得た2020年度の法人税は大きく増えました。これは儲かっている会社もあることを示しています。
株価が上がり続けた理由
そして、世界の株価は驚くほど上がりました。
新型コロナウィルスが世界を覆(おお)い始めた2020年の3月ごろは株価が下がる局面もありましたが、それ以降はほぼ一本調子でこの秋まで上がり続けたのです。日本も同様です。
日本は1991年8月以来、ほぼ30年ぶりに日経平均が3万円台を回復したのです。経済成長も個人消費もそれほど伸びてはいないのに、なぜ株価はこれだけ高騰したのでしょうか。
多くのマーケット関係者の一致した意見は、世界中の当局が行った徹底した金融緩和です。
金融緩和とは、金利を下げたり、市場に資金が行き渡るように、徹底的に世の中にお金を供給することです。
日本は数年前にマイナス金利政策をとったあとも、さらに金融緩和政策をし続けています。中央銀行が市場に資金を大量に供給するだけでなく、株式などのリスクのある資産を所有し市場を買い支えました。
さらに、市場にあふれた資金は、工場建設や社員教育、研究開発といったものに向かうのではなく、再び金融市場に還流し投資されました。そのため株価が上がったと言われます。
アメリカの中央銀行がドルを世界中へ流出
アメリカの中央銀行である、FRBは500兆円とも言われる未曾有(みぞう)の金融緩和でアメリカ国内だけでなく、ドルを世界中に流出させました。
このことによって世界の金融市場で、株式、債券、金、商品市場などに大量の資金が流れ込んだのです。お金が流れ込んで来れば、実体経済はよくなくても株価も金価格も上がっていくものです。
これは、新型コロナウィルスで落ち込む各国の経済の底割れを阻止しました。
リベンジ消費で思わぬ副作用も
2021年も年末に来てオミクロン株の感染拡大が問題視されていますが、今年の春ごろから年末に至るまでの間は、先進国を中心に新型コロナに対するワクチン接種も進み、それとともに感染状況も徐々に落ち着いてきました。
各国は行動規制を緩和し、新型コロナウィルスを克服したあとの世界経済を見据(みす)えた動きも出てきました。
企業も少しずつ前向きになり、消費者もリベンジ消費といわれるように、今まで我慢したり買い控えしてきた消費行動を積極的に行うようになってきました。そのため思わぬ副作用も生まれたのです。
色々とあるのですが、ここでは原油高、特にインフレを取り上げたいと思います。
進む値上げでアメリカが金融引き締めへ
リベンジ消費といっても、そう簡単にコロナ以前の生産の仕組みや体制に戻れるわけはありません。
コロナでリストラした船やトラックなどの輸送システムも新たな需要に追いつかず、全体的に需給のバランスが崩れてしまい、アメリカでは39年ぶりの高い物価高、インフレになってしまいました。年率6.9%(2021年11月)という驚くような水準になっています。
日本でも今年に入って、食料品を中心に値上げが進んでいます。食用油、マヨネーズから、ガソリンや灯油、電気代まで家計を直撃しています。
全体としてはまだまだ安定しているのですが、アメリカはもう見過ごせない水準になっています。そのため、今までの金融緩和政策を縮小し転換する方針を打ち出しています。
これは、株価にとってはマイナス要因です。アメリカの金融当局の引き締めは、どのタイミングでどれほど行うのか世界中の市場参加者は固唾(かたず)を飲んで見守っています。それは、もちろん日本の株価にも少なからず影響を与えるでしょう。
来年の経済を考える上で考えておきたいことの一つはアメリカの金融引き締めです。
さらにもう一つ不穏な動きがあります。それは、世界第2位の経済大国・中国発の経済不安です。
中国の不動産がらみの金融危機が起きるのでは
この10数年の中国の国内景気をけん引してきた大きな柱の一つは、何といっても不動産市場です。それもバブルと言っていいような状況でした。その大手、恒大グループの資金繰りに暗雲が立ち込めているのです。
とうとう先日、ドル建てで調達していた債券のドル建ての利払いができない状況に追い込まれてしまいました。
中国の不動産開発は、国内外の金融機関だけでなく市民など個人投資家からお金を調達し、進めてきました。かつてのバブル期の日本と大変似ています。
しかし、その手法はいささか強引です。自転車操業的なやりくりをしているところもあるのではないかという噂が絶えません。そのため、この数年、中国の債券市場、それも不動産がらみの金融危機が起きるのではないかと心配されています。
中国政府がコントロールできるか?問題が噴出するか?

今年になって特に注目されているのが恒大グループで、秋口から大型の利払いや債券の償還のスケジュールがあり債務不履行になるのではないかと心配されているのです。
実際利払いや元本支払いの先延ばしはすでに行われており、12月に入り、恒大グループの株価は連日大幅に値下がりしています。
すでに、恒大グループは2020年の秋口から資金繰りのために、全ての不動産の在庫を3割引で売るとか、所有する土地の多くを手放す、グループ傘下の会社を売却するなどしてきました。
恒大グループは不動産事業だけでなく、ミネラルウォーターや電気自動車からプロサッカーチームの経営など多角的な事業を行なっており、破綻するとなるとその影響はどれほどになるのかわかりません。
中国政府は、恒大グループの問題であり市場全体は健全であるとしているものの、果たしてこれは一企業だけの問題かという疑いの目が向けられています。
まもなく2021年北京冬季オリンピック、パラリンピックが開催されます。中国政府の国家の威信をかけた大イベントです。市場参加者の中には、北京オリンピック後に本格的に問題が噴出するのではないかと言う人もいます。
中国の債券市場の闇の部分を中国政府がうまくコントロールできるのか、それとも噴出して世界中にその影響が及ぶのか。2022年の経済を見るときの二つ目の大きなポイントだと思うのです。そして、これらも株価に影響を与えるでしょう。
日本では輸入品の価格高騰の可能性も
アメリカの金融引き締めで金利が上がり、日米の金利差が広がるとなれば、アメリカの株価が一時的にせよ下落する可能性は否定できません。
金利差から円安が進めば、食料やエネルギーのほとんどを海外に依存する日本にとっては輸入品の価格高騰となり、株式投資をしていない消費者にとっても痛手となるでしょう。もちろん株価にも影響を与えるでしょう。
さらに中国で金融市場が混乱すれば、世界経済に悪影響を与え、これも日本の株価に影響を与えます。日本にとって中国はアメリカと並んで経済的な結びつきが強い国なのです。
一方で、日本を含めた世界経済がポストコロナの状況に着実に進んでいければ、金融市場の混乱があったとしても、それらを乗り越えて不安材料がなくなることで、株価に良い影響を与えるかもしれません。
株式投資などをどうするべきか
以上、2022年の経済の流れを考えるときのポイントでした。
え、それで結局どうなるの? 株価は上がるの、下がるの? はっきりしてよ。
そう思われた方もいるでしょう。
経済の先行きを断言できる人など、誰もいません。当たるかもしれないし、外れるかもしれない。誰も責任を取りません。上がる要素も下がる要素もあるのです。
それが、経済なのです。どうなるかわからない。決まっているのならリスクなどありません。そういうものです。
じゃあ、儲かってる私はどうすればいいの?
一番大切なその話をいたしましょう。
こっそり儲かっている株式投資などをどうするべきかということです。
リスクがある限り、常に上がるかもしれないし、下がるかもしれないという不安定要素があるものです。あなたは、ご自分の資産について、1年後、どうなっていると思いますか? 上がっていそうですか? 下がっていそうですか?
絶対上がってる。きっと大きく下がってる。そのように確信があるのであれば、持ち続けるなり、買い増すなり、売却するなり、ご自分で判断ができているということになりますね。
でも多くの人は、6割は上がってると思うけれど、2割くらいは下がるリスクもあるのかもしれない。と不安もあるものです。
自分の思いに素直になるのがオススメ
例えば、200万円で投資したものが、今や400万円の評価額となり大儲けとなっているという資産があった場合はどうすれば良いのでしょうか?
私がオススメするのは、自分の思いに素直になるということです。上がるかもしれないし、下がるかもしれない。それが素直な結論です。
上がるかもしれないし、下がるかもしれない。そのような思いであるならば、例えば、半分だけ売って、半分は持ち続けるという、どっちつかずの結論を出すのはどうでしょう?
400万円の半分は売却してしまう。一体どうなるでしょう。

写真/PIXTA
来年も株価が上がっていけば、その恩恵に預かれます。この時にはきっとこう思うでしょう。ああ、全部売ってしまわなくてよかった。
反対に株価が下がってしまったなら、どうでしょう? ああ、半分売っておいて利益を確定しておいて良かった。こうなるのではないでしょうか?
リスク資産を半分にするということは、儲けも、利益が減っていくのも半分になる。もちろん、考え方によって、半分ではなく、3分の1だけ売却し利益を確定させる、リスク資産は大幅に縮小させ、3分の2を売却してしまうという方法もあります。
経済や市場のことを調べつつ、自分の欲望をどうコントロールするか
市場に左右される株式などのリスク性資産を持っている時には、もっと上がる、もっと儲けたいという思いと、下がる可能性と不安とのせめぎ合いとなるものです。専門家でも、市場動向についての見解は様々で、外れることもよくあります。
経済や市場のことを調べ勉強しつつ、自分の欲望をどうコントロールして判断していくか。案外それこそが、あとでニッコリするためのとても大切なポイントなのかもしれません。
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<文/佐藤治彦>
佐藤治彦
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』など多数 twitter:@SatoHaruhiko
(エディタ(Editor):dutyadmin)