まだ暑さが残る初秋。秋の夜長につい、子どもの頃に体験した不思議なできごとを思い出してしまうこともあるのではないでしょうか。
ただ、周りに信じてもらえないのではないかという不安から、ちょっと他人には言いづらいですよね。しかし、世の中には引きが強い人物がいるのも事実なようです。
酒飲みの父がシラフで帰宅。号泣の理由は…
山口ほのかさん(仮名・30歳)は、小学5年生の頃に父が、なかなか帰ってこなかったときのことをいまだに思い出すと言います。
「いつもなら仕事からまっすぐ帰ってくるか、遅くなるにしても母に連絡を入れる父が、その日に限って全然帰ってこないんです。父は付き合いのいいタイプなので、母はそこまで気にしておらず、先に寝ていました。ですが、私はなぜか気になって、布団に入っても眠れずにたんです」
もうすぐ日付が変わろうとしたときに、父が帰ってきます。
「あれは忘れもしません。家の門が開く音がすると、『とんでもないことをしてしまった……!』と呟きながら、父が玄関から入ってきたんです。しかも、いつも上機嫌で帰ってくる父が号泣していたんです。なにごとかと思って、すぐに駆け寄りました」
子ども心に、父が何かしでかしたのでは? と心配になったといいます。
「明らかに普段の父の様子と違ったので、『何があったの?』と、母と一緒に聞いてみました。父は運送業の仕事をしていたのですが、仕事で使う軽トラックで田んぼ脇の道路を走っていたところ、操作を誤って田んぼに突っ込んでしまったそうなんです。
いつも走っている道なので、そんなことは初めてでした。それだけでも、十分珍しいことなのですが、田んぼに突っ込んだときに前方の左車輪が水没してしまったんです。なんとか車を引き上げようと、バールのようなもので車輪を持ち上げていたところ、なにやら白いものがプカリと浮いてきたそうなんです……」
田んぼにトラックが沈没…浮かんできたものは!?

いつも車で通っている道で起きた運転ミス。しかし、さらなる衝撃的な出来事が起きます。
「父がよく見てみると、白いものが人骨であるとハッキリとわかったそうです。びっくりして、すぐに警察に連絡。その後、深夜まで事情聴取を受けていたため、帰宅が遅くなったのです。しかも警察から、当初は父が犯人ではないかと疑いの目をかけられたそうです」
父が事情聴取を受けたと聞き、家族はみな仰天。「とんでもないことをした!」という父の言葉は、罪を犯したわけではなく、事故と事情聴取でパニック状態になっていたようです。
「実はその後、テレビ局が家まで取材に来たり、いろいろと大ごとになったんです。調べた結果、死体は20年くらい前に行方不明なっていた女性だと発覚しました。まさか、そんなに前の遺体を発見したとは思いもよりませんでした。発見されてやっと安心して成仏できるなら、よかったのかなとも思いました」
引き寄せやすい父。これがエスカレートしたら…
ほのかさんは、父が起こした事故をこう分析しています。
「子どもながらに不思議だと思ったのは、脱輪した場所なんです。田んぼと言っても、牧場があるような広大な土地。偶然にしては、死体がある場所にピンポイントで車輪が落ちる確率を考えたら、すごく低確率ですよね。
本人はどう思っているか分からないですが、父親の周りでは不思議なことが起こりやすいんです。以前も、酔っぱらって、遺骨を拾ってきて、交番に届けて驚かれたり……。そんな体質なので、今回も『見つけて欲しい』というご遺体の思いが父を呼び寄せたのではないかと思いました」
まだまだ、ほのかさんの心配は尽きないそう。
「父はいくら引き寄せやすいとはいえ、交通事故という形で父の身にまで危険が及んだのはこのときが初めてでした。父もだいぶ歳をとったので、もし今同じようなことがあれば、当時のように無傷では済まないかもしれません。加齢と共に不思議な力も鈍っていることを祈りたいです……」
―シリーズ「怪談・ゾッとする話/不思議な話」―
<取材・文/阿佐ヶ谷蘭子 イラスト/カツオ>
(エディタ(Editor):dutyadmin)
