感動を与える鉛筆画。猫のかわいさをリアルに表現した西方由美さん(@tarakuro510)の作品には、そんな言葉がよく似合います。
ふわふわの被毛や無邪気な表情など、猫好きさんを虜にする猫の愛くるしさが繊細なタッチで描れた猫の鉛筆画……。その裏には、亡き愛猫たちへの深い猫愛がありました。
命をもって猫の魅力を教えてくれた「愛猫たち」
「オーダーでは犬も描かせていただいていますが、自らモデルに選ぶのは猫だけです」
そう打ち明ける西方由美さんが猫の鉛筆画を描き始めたのは、18年間一緒に過ごした愛猫タラコちゃんが旅立った翌年のこと。
「今から3年ほど前のお盆に、絵でも描いてみようと思って手持ちの画材でタラコや、その子どもで当時一緒に暮らしていたクロをモデルにしました」
その頃にタラコちゃんをモデルにして描いた「ひだまり」という作品は、今の西方由美さんの原動力になっているよう。
「この作品は初めてしっかり背景を描いたものでした。まだフォロワーさんも少ない頃でしたが、SNSにアップしたらいろいろな方に反応していただけて、とても嬉しかった。その経験が今につながっています」
また、19歳のクロちゃんを描いた「19」という鉛筆画も大切な一作。今でも目にするたびに、クロちゃんと過ごした日々が頭によみがえります。
「クロは甘えん坊で、おしゃべり好きな女の子でした。よくタラコが寝ているところへ行ってはぴったりとくっついて眠っていました。おやつをあげる時に『タッチ』と言って私が手を挙げると、タッチしてくれて」
クロちゃんとのかけがえのない日々
犬のように賢いクロちゃんとの楽しい日常。そんな日々に暗雲が立ち込めたのは、2018年夏のこと。20歳になったクロちゃんは徐々に食欲が落ちていき、ついにはまったく飲まず食わずな状態に。
「高齢のため詳しい検査もできなくて、獣医さんもお手上げ状態でした」
吐き戻さないから、体が拒否しているわけじゃない。そう自分に言い聞かせながら、毎日クロちゃんに強制給餌を行い続けました。
すると、2週間後、奇跡が起きます。
「自分からドライフードを食べるようになってくれたんです。その姿を見たときは、言葉にできないほど嬉しかった。クロの生命力を信じ続けてきてよかったと思いました。辛い中、付き合ってくれたクロに感謝の気持ちでいっぱいでしたね」
それからクロちゃんは1年ほど生き、最後まで愛されながら永い眠りにつきました。
「タラコとクロにはその命をもって、本当にたくさんのことを教えてもらいました」
共に過ごした2匹にそんな思いを抱く西方由美さんは猫という“一生懸命生きることしか知らない存在”に敬意と感謝を持ちながら、鉛筆画で猫愛を表現し続けているのです。
“そこにいる”ように思える鉛筆画を
愛猫を描き続けているうちに、自分で撮った猫たちもモデルにするようになったという西方由美さん。
魅力的な鉛筆画の製作期間は、もちろん作品にもよりますが、A4やB4のものだと約1か月ほどで完成させられるのだとか。
「それより小さいものだと、2~3週間くらい。過去にB3サイズに挑戦した時は130時間ほどかかりました」
描く時はいつも、“そこにいる”ように表現することを意識。
「一番表現が難しいのは、ふわふわとした被毛。猫さんはほぼ毛なので毎回頑張っています」
デフォルメせず、ありのままの姿を描くという表現法。その裏には、亡き愛猫への強い想いも関係しているように思えます。
愛猫の老いも、楽しんで
大好きなあの子が、ここにいる――。そう感じられる作品の数々は、かけがえのない命を失った飼い主さんの心を癒すお手伝いもしているのかもしれません。
老いという変化も含め、猫を愛しぬいた西方由美さん。そんな経験をしてきたからこそ、その口から出る言葉は心に刺さります。
「近ごろは猫の長寿化が進んでいるので、粗相など大変な経験をすることもあるかと思います。でも、若い頃とは違う、まるで赤ちゃんのような愛らしい一面を見ることもできるのがシニア期。ぜひ、愛猫の老いも楽しみにしていただきたいです」
ペットの老いにはネガティブな視線が向けられやすく、飼い主さんも不安な気持ちになってしまうもの。しかし、一緒に老いていけること、老いを見届けられることはもしかしたら、この上ない幸せなのかもしれません。
猫と共に生き抜いていく――。繊細なタッチの鉛筆画は、その意味を私たちに問いかけてもいます。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
(エディタ(Editor):dutyadmin)


