月経やPMS(月経前症候群)、季節の移り変わりによる体調の変化などの悩みを抱えながらも、周りの人に相談できない女性は多くいます。
そんな心や体の“ゆらぎ”のセルフケアやコミュニティを提供するサブスクリプションサービス「LaboMe」(ラボミー)が2023年8月1日にスタートしました。
LaboMeは、味の素の新規事業創出プログラム「A-STARTERS」で採用第1号となったサービス。プロジェクトリーダーの橋麻依子さんは、10年以上PMSに悩んだ自身の経験から発案、社内起業に至りました。
今回はサービス内容や、そこに込めた思いについて橋さんに聞きました。
自分に合うものを試しながら、心と体に向き合う
――LaboMe(ラボミー)はどんなサービスなのですか?
橋麻依子さん(以下、橋):会員限定のコミュニティで人とつながりながらセルフケア情報の交換をしたり、毎月届くセルフケアプロダクトを試していただくことができます。さらに専門家の監修に基づいた最新の情報が得られます。
――毎月、どんなアイテムが届くのでしょうか。
橋:毎月違う6つの切り口「食~EatWell、休息~MeTime~、美容~BeautyMe~、運動~BodyFlow~、温める~Warm~、つながり~ForUs~」で、味の素の研究員やLaboMeが厳選した食品やボディケア用品などのセルフケアプロダクトが毎月届きます。
10月は「美容~BeautyMe~」をテーマに、ソフトピーリング泡パックの『Boost Facial Wash』や、身体の冷えや肌荒れなどに寄り添うバスパウダー『MONTHLY FRIEND』をお届けしました。
――その他にはどんなサービスがあるのですか?
橋:LaboMeの専用アプリで会員だけが参加できるコミュニティで情報交換ができます。専門家やプロダクト開発者、味の素の研究員と直接つながり、セルフケアや日頃の悩みなどについて質問できます。また、医師や専門家が監修した会員限定記事を読むことができるので、科学的根拠に基づいた最新のセルフケア情報を得ることができます。
オフラインのサービスとしては、毎月のテーマに基づいた会員が参加できる体験イベントを開催しています。専門家やコミュニティの仲間と一緒に、最新のセルフケアを学び体感することができます。
“ゆらぎ”の解決より大切なこと

――橋さんがLaboMeを発案したきっかけは?
橋:学生時代から10年以上PMSに悩んでいて「どうして自分はダメなんだろう」と思い込んでいたんです。当時の自分に対して「そんなことないよ」と言ってあげたいという思いから始まりました。
一番最初に考えたのは、パーソナライズによって「心身の不調の解決」を目指すサービスでした。でも3年以上の開発期間の中で多くの方の話を聞くうちに「症状を1つ1つ潰してゼロを目指すようなアプローチは苦しいんじゃないか」と感じるようになりました。
私は社会人になってから「心や身体に揺らぎがあることは悪いことなんだ」という価値観に苦しんでいました。それを事業として肯定したくなかったんです。
一方で、PMSについて人と話したりいろいろなセルフケアを探索するうちに、PMSが無くなった訳ではないのに、以前よりも余裕を持って構えられている自分に気づくようになりました。
「ゆらぎが無いこと」を目指すより、「ゆらぎとうまく付き合っていく」ほうが気持ちがラクになるのではないかと思います。私の経験をそのままサービスとして提供したくてLaboMeが生まれました。
「セルフケアを開拓したい」と利用する人も
――LaboMeを利用しているのはどんな人達なのですか?
橋:心身の浮き沈みについて悩みが深い方や、自分に合ったセルフケアを開拓するためにいろいろなものを試してみたい方が多いです。「仕事をもっと頑張りたい、自分をさらに高めていきたい」という思いで利用される方もいます。
――味の素が、女性のセルフケアのためのサービスを提供するのはなぜですか?
橋:味の素はアミノ酸の研究を100年以上続けている会社なんです。私たちは「アミノサイエンス」と呼んでいるのですが、アミノ酸は食事、睡眠、運動、美容などいろいろなことに利用できます。生活習慣を整えるような研究が蓄積されているので、これまでの知見を提供できると思っています。
人とつながりながら、自分に合うセルフケアを探してほしい

――なぜ、毎月違うテーマでセルフケアプロダクトを提案しているのですか?
橋:女性の悩みはさまざまで、PMSの症状だけでも200種類以上あるといわれています。私自身、いろんなセルフケアを試しては「自分に合わない」と感じて止めることを繰り返してきました。
心身の“ゆらぎ”に対するアプローチ方法は、食や美容に限らず、運動や休息、身体を温めることなど、切り口がたくさんあります。相談できる仲間がいる環境でプロダクトを試すことを長く続けていただくためにサービスを作っています。
――試供品ではなく通常の容量の商品が試せるのが嬉しいですね。
橋:本当に自分に合うのかは1回使っただけでは分からないので、しっかりと試していただける量でお届けするようにしていますね。
――コミュニティはどんな使い方ができるのですか?
橋:私自身、自分一人で悩んでいると苦しかったんです。学生時代は特に、友達に悩んでいることを打ち明けることができなくて、「皆は大丈夫そうなのに、私だけ毎月こんなに波が大きいのはどうしてなんだろう」と思い詰めていました。海外留学した時は環境の変化でゆらぎが大きくなって一層つらかったです。
そんな経験から、悩みを抱えている方達が情報交換できるコミュニティを提供したいと思いました。「同じように悩んでいる人っているんだな」と思えたり、「私はこれをやってみたらよかったよ」と情報交換をする中で、気づきが得られるかもしれません。
正しい情報、中立的な情報を見分ける難しさ
――イベントではどんなことが体験できるのですか?
橋:コミュニティの方達が実際に出会ってつながりを作ることができます。また専門家やプロダクト開発者など、セルフケアについて正しい知識を持っている方々から直接情報を得て学ぶことができます。
今年9月は、「話すことから始めよう」をテーマに、デリケートゾーンのケアについてイベントを開催しました。デリケートゾーンソープの開発者や他のフェムケア用品に関わる企業の方達から、なぜデリケートゾーンのケアが必要なのか、またどんなフェムケアがいいのかなどのお話をしてもらいました。
そのあと参加者に4、5人のグループになって対話してもらったところ、「友達には話せなかった」と言う方が多かったのですが、「イベントの場があることで話しやすかった」という声を多くいただきました。
――女性の心や身体の悩みに関する情報が増えてきたことで、正しい情報を見分けるのが難しいと思います。
橋:私も以前は「PMS 症状」で検索しては、情報が大量に出てきて「何を信じていいか分からない」という状態でした。情報を見分けるためには、どんなバックグラウンドの人による情報なのか、何を根拠にしているのかが重要だと思います。
LaboMeの記事やコラムでは、医師や専門家のエビデンスを取り、中立的な立場で発信できるようLaboMeのスタッフが議論を交わしながら作っています。ユーザーから「LaboMeの情報なら大丈夫かな」と信頼していただけるものにしていきたいと思っています。
――LaboMeをどんなふうに活用してもらいたいですか?
橋:自分自身の経験から、セルフケアの引き出しを増やすことが大切だと感じています。LaboMeをきっかけに、悩みについて話せる人と出会ったり、いろいろなプロダクトを試してもらいながら、ゆらぎと共にしなやかに生きられるサポートができると嬉しいです。
<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
(エディタ(Editor):dutyadmin)



