だれもが逃れることのできない人間関係の悩み。知らないうちにモヤモヤが積み重なり、「なんかしんどいな」が想像以上に続いてしまったとき、それは自分の心が助けを求めているサインかもしれません。
『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科医に行ってみた!』では、知らせざる精神科診療のなぞについて紹介しています。
自身も過去に精神的に落ち込んで、“精神科”の文字が頭をよぎったことがあるという、ライター兼マンガ家の青山ゆずこさんに、「精神科を受診した方がいい“限界のサイン”」について、本書からの抜粋のマンガと、精神科医・益田裕介先生のインタビューとともにお届けします。

「私なんかが精神科に行っていいの?」と思ってしまったことも
青山ゆずこ(以下、青山):私自身も過去に精神的に落ち込んで、“精神科”の文字が頭をよぎったことがありました。でも、行けませんでした。
その理由は「まったく想像のできない世界」ということに加えて、「私なんかが精神科に行っていいの?」と思ってしまったことも大きな原因です。
「この程度の悩みで行ってもいいのかな」「追い返されないかな」「もう少し耐えられるかも……!」という思いが、永遠に脳内でループされているようなイメージです。
この「自分の限界のサイン」、自分では意外と見落としがちだったり、ガマンをしたり、気づかないふりをしてしまいがちですよね。
益田裕介先生(以下、益田):ぼくの体感的な統計になりますが、精神疾患に対して理解のある人は、職場や友人、家族の中では3割くらい。
まったく理解のない人も同じ3割くらいで、残りの4割が無関心という印象を受けます。
うつ病については、実はまだ分かっていない部分も多いです。ひと言で言うと、「3~6カ月の落ち込みを繰り返す、脳の病気」であるということ。回復には時間がかかりますし、3分の1の人は薬が効きません。
うつになった原因がはっきりしている場合は、僕らは“適応障害”と診断しますが、治りが悪かったり、何度も繰り返す場合は、“うつ病”という病名になることが多いのです。
「休職せずに辞めます」はもったいない。傷病手当金とは?
青山:状況や症状によりますが、休職をしても、早く治して職場に戻らないと、と焦ってしまったり、自分の席がなくなると思うと、休んでいることが逆効果になってしまうこともありそうですね。
益田:たとえば休職期間は、1か月では短すぎますね。仕事の引継ぎや復職の準備で、最初と最後の計3週間くらいは休めません。
社会保険の場合は「傷病手当金」という制度があるので、休職期間でも給料の6割をもらうことができます。
よくいらっしゃるのが、退職するつもりなので休職せずに辞めます、という人。……まずは休職して、傷病手当金をもらいながら検討してみてはどうでしょうか。
自分が自分のしんどさに気づいて行動することが大事
益田:『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科医に行ってみた!』の中では、簡単な「限界のサインの見分け方」を項目で表していますが、人によって症状にムラがあったり、日によって違いが出ることもあるはずです。
だからこそ、必要以上に耐えたりせずに、自分が自分のしんどさに気づいて動いてあげることがとても大事になります。
青山:私も、過去に職場の人間関係や激務でメンタルが打ちのめされ、部屋のすみにスマホを投げ捨て、ほぼ一日中部屋のカベを見つめて過ごす」という生活をおよそ1か月近く過ごしたこともありました。
「パフェ食べてカラオケ行っときゃストレスなんて減るでしょ!」「やけ酒じゃー!」と世間一般でよくいわれる息抜きをして、ストレスを減らした“つもり”でいたのです。でも、実際は減っていなかった。
『自分をちょっと査定にだしてみようかな』の気軽さで受診を
青山:しんどさってゆっくり時間をかけて、確実に心と体を蝕んできます。たとえば、ある日突然空気がなくなったらパニックになるけれど、徐々に酸素濃度が減らされていく感覚に近いかも知れません。
益田先生も仰っていた、「クリニックに行く感覚は、『自分をちょっと査定にだしてみようかな』それくらいの気軽さでもいいんですよ」という言葉は、当時の自分にも聞かせてあげたかったなあ。
<文/青山ゆずこ 撮影/山川修一>
【益田裕介】
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数45万人を超える。患者同士がオンライン上で会話や相談ができるオンライン自助会を主催・運営するほか、精神科領域のYouTuberを集めた勉強会なども行っている。著書に『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)、『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)など
【青山ゆずこ】
フリーライター、マンガ家、原作者。おもに週刊誌や月刊誌で活動。「マジメなことは面白く、面白いものはマジメに」がモットー。2011年からおよそ7年間“夫婦そろって認知症”となった祖父母との同居を通してヤング・若者ケアラーに。著書に『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』(徳間書店)など。突如庭に産み落とされた、へその緒がついた猫のお世話に奮闘した漫画『へその緒がついた赤ちゃん猫を拾った!だけど医師の「厳しい言葉」で目の前が真っ暗に(前編)』『「赤ちゃん猫のお世話で、1ヶ月休みます」仕事相手に伝えたら…“意外すぎる反応”に驚いた(後編)』
X(旧Twitter):@yuzubird
青山ゆずこ
漫画家・ライター。雑誌の記者として活動しつつ、認知症に向き合う祖父母と25歳から同居。約7年間の在宅介護を綴ったノンフィクション漫画『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』(徳間書店)を上梓。介護経験を踏まえ、ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちをテーマに取材を進めている。Twitter:@yuzubird
(エディタ(Editor):dutyadmin)













