<女性が一生、お金に困らないためのレッスン vol.24/経済評論家・佐藤治彦>
家賃を毎月払うのなら、いっそのことマンションを買ってしまって、ローンをコツコツ払う方がトク。いつかは自分の資産になるのだから、と頑張って毎月の住宅ローンを返している人は少なくありません。
ただ、その中でも経済に敏感な人はきっと今の世の中の変化が、自分の生活を大きく変えてしまうかもしれないと思っているはずです。

25年ほど前までは、住宅を借りるときに借りるローンは長期の固定金利が常識でした。いまなら「フラット35」などでローンを組んだのです。しかし、昭和の終わりから平成生まれの人にとっては、そうした常識はありませんでした。
特にこの10年あまり、住宅ローンは変動金利で借りるのが当たり前の時代になったのです。ほぼ9割の人が金利の低い変動金利でローンを組んでいます。
何しろ変動金利なら年0.3%ですが、35年ものの固定金利だと年1.88%もするのです。もちろんこれに団体信用保険などさまざまなコストが必要ではあるものの、利率だけでみると6倍も違うのです。
例えば、3000万円のローンを組んで、年0.3%の金利なら利息として返すのは年間で約9万円ですが、年1.88%なら56万4000円にもなる。それだけ元本返済に回す部分が減ってしまう計算になります。
そして、この10年以上はアベノミクスの異次元の金融緩和、つまり低金利政策のおかげで、変動金利が低いまま。住宅ローンを借りてもほとんど利息がつかない状態が10年以上続いたのです。そして、変動金利の利率が上がるなどという経験はほぼ誰もしていないはずです。
さらに、この数年は海外の富裕層などが日本の不動産を買う流れもあり、不動産価格は右肩上がりです。
「ああ、早いうちにマンションを買っておいてよかった」と思っている人は少なくありません。しかし、皆さんに忘れないでいただきたいのは、ローンを返してから、本当の意味でマイホームとなるということです。
私は、0.3%といった超低金利のおかげでローンを返せている人が少なくないことを考えると、それがこのまま続かないかもしれないと心配しているのです。
理由は、変動金利が来年以降は上がっていく可能性が濃厚になってきたからです。
それを理解するために、少し今の経済と金利の関係を考えていきたいと思います。
家賃を毎月払うのなら、いっそのことマンションを買ってしまって、ローンをコツコツ払う方がトク。いつかは自分の資産になるのだから、と頑張って毎月の住宅ローンを返している人は少なくありません。
ただ、その中でも経済に敏感な人はきっと今の世の中の変化が、自分の生活を大きく変えてしまうかもしれないと思っているはずです。

※イメージです(以下、同じ)
この10年、住宅ローンは変動金利で借りるのが当たり前に
25年ほど前までは、住宅を借りるときに借りるローンは長期の固定金利が常識でした。いまなら「フラット35」などでローンを組んだのです。しかし、昭和の終わりから平成生まれの人にとっては、そうした常識はありませんでした。
特にこの10年あまり、住宅ローンは変動金利で借りるのが当たり前の時代になったのです。ほぼ9割の人が金利の低い変動金利でローンを組んでいます。
何しろ変動金利なら年0.3%ですが、35年ものの固定金利だと年1.88%もするのです。もちろんこれに団体信用保険などさまざまなコストが必要ではあるものの、利率だけでみると6倍も違うのです。
例えば、3000万円のローンを組んで、年0.3%の金利なら利息として返すのは年間で約9万円ですが、年1.88%なら56万4000円にもなる。それだけ元本返済に回す部分が減ってしまう計算になります。
超低金利のおかげでローンを返せている現状が続かないかも
そして、この10年以上はアベノミクスの異次元の金融緩和、つまり低金利政策のおかげで、変動金利が低いまま。住宅ローンを借りてもほとんど利息がつかない状態が10年以上続いたのです。そして、変動金利の利率が上がるなどという経験はほぼ誰もしていないはずです。
さらに、この数年は海外の富裕層などが日本の不動産を買う流れもあり、不動産価格は右肩上がりです。
「ああ、早いうちにマンションを買っておいてよかった」と思っている人は少なくありません。しかし、皆さんに忘れないでいただきたいのは、ローンを返してから、本当の意味でマイホームとなるということです。
私は、0.3%といった超低金利のおかげでローンを返せている人が少なくないことを考えると、それがこのまま続かないかもしれないと心配しているのです。
理由は、変動金利が来年以降は上がっていく可能性が濃厚になってきたからです。
それを理解するために、少し今の経済と金利の関係を考えていきたいと思います。
値上がりだらけ。25年以上も上がらなかった世界がガラリと
この1年、私たちの生活は物価高に悩まされてきました。今や消費者物価は1年以上3%水準のインフレとなっています。さらに、食料品だけでみると9%も物価は上がっています。
それに対してお給料はほとんど上がってないのですから、生活が苦しくなるのは当たり前です。
25年以上もモノの価格が上がらない経済を、私たち日本人は経験してきました。上がらないどころか、むしろ値下がりすることが多かったのです。
それが、毎月のように値上がりのニュースを聞きます。それも、生活に直結する食料品、日用品の値上げが多い。1年ほど前までは150円程度で買えたマヨネーズは今やバーゲンでも250円以上、170円で買えた食用油は今や400円近いのです。まるで世界がガラリと変わってしまったようです。
円安が進みますます物価高に
物価が上がると、金融政策を司(つかさど)る中央銀行、日本なら日本銀行は、金利を上げ金融引き締めをして物価上昇を抑えます。事実、アメリカやヨーロッパ、世界の主要国はこの1年あまり金利を繰り返し上げてきました。インフレを抑えて物価を安定させるためです。
物価は上がっているのに、金融の引き締めをしていないのが日本です。しかし、他の主要国は金利を上げたので、日本との金利差がどんどん開きました。

例えば、日本の銀行に預けても利息はほとんどもらえないのに、アメリカやヨーロッパの銀行に預ければ、利息が年に5%もらえるとなったら、日本で貯蓄をするのではなく、欧米で高金利の預金をしようと思うため、日本円を売ってドルやユーロを買う流れが起きます。
こうして、どんどん円安が進んだのです。円安が進むと輸入品の価格が高くなり、ますます物価高になります。
2024年の春闘の賃上げを目安に日本の金融政策が変更の可能性アリ
アベノミクス以来、なかなかできなかったデフレ脱却はここにきてやっと実現したと言っていいのかもしれないのです。長年、政府や日本銀行が目指してきた物価上昇率の年2%以上のインフレ率なのです。
ですから、本来は日本もそろそろ金利を上げインフレを抑える金融政策に転換した方がいいのではないかと多くの識者が考えます。しかし、日銀は未だに動きません。
その理由として言われるのは、持続的な賃金上昇が認められない、今の物価上昇には伴っていないからとされます。
つまり、持続的な賃金上昇が認められれば、金融政策を変更する環境が整ったことになるはずなのです。それは、2024年の春闘の賃上げがどうなるかが大きな目安になると言われています。
住宅ローンの変動金利が上がっていくことも
日本銀行が設定している短期金利のマイナス金利という異例な状況が解除されていくと、短期の金利が上がり、それとともに、住宅ローンの変動金利も上がっていくことになります。
この1、2年の欧米であったように1年で5%前後の金利引き上げはないとしても、例えば、変動金利が0.3%から0.6%になったとすると、4000万円の住宅ローンを組んでいる人は、ざっくり言うと年に支払う利息が12万円から24万円にと毎月1万円増える。もう0.3%増えると、毎月2万円増えることになるわけです。
金利がどんなスピードで上がっていくのかは、誰にもわかりません。しかし、多くの変動金利ローンは半年ごとなどに金利の見直しをすることになっているはずです。
長期固定金利の住宅ローンに乗り換えるタイミングは?
金利上昇局面で変動金利を借りている人の対策として考えられることの一つは、長期固定金利の住宅ローンに借り換えることがあります。
長期の固定金利はすでに少しづつ金利上昇局面にありますが、まだまだ非常に低いレベルにあります。
忘れないでいただきたいのは、変動金利が上がる時には、長期の固定のローン金利も上昇していく可能性が高いと言うことです。ですから、乗り換えるのなら、できるだけ金利が低いうちがチャンスです。
長期の固定ローンはフラット35という35年ものが標準とされますが、フラット50という最長50年のローンを固定金利で組むこともできます。
もし高めの不動産価格で売れるのであれば…
借り換えの試算をしてみたけれど、どうしても払える自信がないという場合には、いま所有している不動産価格がいったいどのくらいの価値になっているかを調べてみることも大切だと思います。
幸い不動産価格はこの数年上昇しましたから、今なら売却してローンを返しおわれば、手元に驚くほど多くのお金が残る可能性もあります。
少し高めの価格で売りに出してみて、売れるのであれば、無理して高い金利になる住宅ローンを返すよりも、手頃な賃貸に引っ越ししてしまう方が生活が楽になるかもしれません。
マイホームを投げ売り価格で手放さざるを得なくなるかも
一番いけないのは、変動金利が高くなるのをそのまま放っておいて、ついには住宅ローンを払うことができなくなり、延滞が重なり、投げ売り価格でマイホームを手放さざるをえない状況に追い込まれることです。
その場合には、マイホームはなくなり、ローンだけが残るということも考えられます。事実、この1、2年の金利高騰でアメリカやヨーロッパではそのように住宅を手放しローンだけが残った人たちが多くいるのです。
金利動向は住宅ローンを返している人にとって、生活が一変する大事件です。金利が上がった時に慌てて困り果てないように、これから年末にかけて、マイホームと住宅ローンの返済のことをじっくり考えてもらいたいと思うのです。
<文/佐藤治彦>
経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行ではデリバティブを担当。その後、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。著書に『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』、『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』、『しあわせとお金の距離について』『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』など多数 twitter:@SatoHaruhiko
(エディタ(Editor):dutyadmin)