「睡眠で脳を休めるのは大切」「脳は24時間休まない」 正しいのはどっち?【脳科学者が解

時刻(time):2023-10-07 20:42源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
Q. 睡眠中も脳はずっと休まず、働き続けていますよね? ぐっすり眠れた夜は、はっと気がついたら朝だった!ということもあるでしょう。寝ている間は何も見えず、聞こえず、感じないので、睡眠中、脳はほとんど働いていないと思われるかもしれません。 一方で、脳が休んだら呼吸も止まってしまうから、どんなに無意識でも脳は休むことはないと思われている人もいる

Q. 睡眠中も脳はずっと休まず、働き続けていますよね?

ぐっすり眠れた夜は、はっと気がついたら朝だった!ということもあるでしょう。寝ている間は何も見えず、聞こえず、感じないので、睡眠中、脳はほとんど働いていないと思われるかもしれません。

一方で、脳が休んだら呼吸も止まってしまうから、どんなに無意識でも脳は休むことはないと思われている人もいるでしょう。実際に、私たちの睡眠中に脳は休んでいるのか、活動しているのか、わかりやすく解説します。

Q. 「脳は、私たちが眠っている時もずっと働き続けていますよね? 知人にそう話したところ『睡眠は脳を休ませるためにも大事なのだから、眠っているときは当然脳も休んでいる』と言われました。実際には、脳は休まないのでしょうか? 休むのでしょうか?」

A. 睡眠中も決して休まない部分と、完全に休む部分があります

「脳」を一つのまとまりとして考えてはいけません。この主張のすれ違いは、それぞれが脳の別の部分のことを話しているために起こっているのだと思います。

睡眠は、体と心を休めるために必要不可欠なものですが、もちろん脳のすべてが機能を停止しているわけではありません。

一方で脳全体が活動を続けているわけでもありません。脳の領域によって、睡眠中も絶え間なく働き続けているところ、時々休んだり活発に働いたりを繰り返しているところ、一晩中完全に休んでいるところなどさまざまなのです。

睡眠と脳の関係を理解するためにも役立つ知識になると思いますので、脳のそれぞれの場所が睡眠中にどうしているのかを解説しましょう。

私たち人間の脳のしくみをおおまかに理解するには、「脳幹」「大脳辺縁系」「大脳新皮質」「前頭前野」の4つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。順に説明します。

「脳幹(のうかん)」は、24時間365日決して眠らない

脳幹は、脳の中心にある部分で、呼吸や心臓の動きなど生命維持に欠かせない体の働きをコントロールしています。

つまり脳幹は「生きるための脳」であり、睡眠中も絶え間なく活動しています。もし脳幹が活動を停止してしまったら、睡眠中に死んでしまいます。命を支えるために、脳幹は24時間、365日休むことなく働き続けています。脳幹は「決して眠らない脳」です。

「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」は、睡眠中は時々休む

脳幹の上には、大脳辺縁系があります。外敵から自分の身を守るために必要な本能、感情、記憶などに関係しており、「たくましく生きるための脳」として働いています。睡眠中は、時々休んだり活発に働いたりを繰り返しています。

私たちが一晩眠っている間には、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の状態が交互に訪れますが、大脳辺縁系は、ノンレム睡眠時には休み、レム睡眠時になると活発に働きます。

レム睡眠中には、とくに記憶の中枢である「海馬(かいば)」や感情・価値判断を担う脳「扁桃体(へんとうたい)」という部分がさかんに活動して、日中に体験した出来事などを「夢」として振り返りながら、大事なことをしっかり記憶するように情報処理を行っています。大脳辺縁系は、「レム睡眠時に働く脳」です。

「大脳新皮質(だいのうしんひしつ)」は、夢を見るレム睡眠中に活動することも

たくさんのシワがあり、果物の皮のように大脳の外表を覆っている部分が「大脳新皮質」です。

私たち人間はこの大脳新皮質が大きく発達したため、高度な能力をもつことができたと考えられています。大脳新皮質は「うまく生きるための脳」です。

私たちは、ぐっすり眠っているときは、何も見えないし感じませんね。しかし、夢を見ているときには、視覚的なイメージやいろいろな感覚をおぼえることがあります。つまり、大脳新皮質は、上述した大脳辺縁系の活動に合わせて、レム睡眠中に活動していることがあります。

「前頭前野(ぜんとうぜんや)」は、一晩中ずっと活動を停止して休む

前項の大脳新皮質のうち、頭の前の方に位置する部分は「前頭葉(ぜんとうよう)」と呼ばれますが、その中でも特に前の方は「前頭前野(ぜんとうぜんや)」と呼ばれ、理性や思考、注意・判断力などに関係しており、「賢く生きるための脳」です。

会社組織にたとえるならば、前頭前野は「取締役」のようなものです。脳全体の活動を見張り、バランスよく脳が機能するように常にコントロールしています。

脳の中でも、上述した脳幹などは、自分に与えられたルーチンの仕事を黙々とこなすだけなので、疲れにくく、休む必要がありません(休まなくて済むように仕事を分担しているともいえます)。

しかし、前頭前野は、状況が変わるごとに、あらゆることに対して臨機応変に対応することを求められるため、負担が大きく、疲れやすいです。

私たちが「頭が疲れた」と感じているときは、正確にいえば「前頭前野が疲れた」ということであり、前頭前野は休まないとダウンしてしまいます。そのため、前頭前野は、一晩の睡眠中、ずっと活動を停止して休んでいます。

朝すっきり目覚めて、脳全体がバランスよく働けるようになるためには、一晩の睡眠中に、取締役である前頭前野をしっかり休ませ回復してもらうことが大切というわけです。

脳はその領域ごとに役割が異なります。休めるかどうか、そして休み方も、領域によってそれぞれなのです。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。


執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)
(エディタ(Editor):dutyadmin)
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