2022年12~2023年2月、女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「結婚」ジャンルの人気記事です。(初公開日は1月26日 記事は取材時の状況)
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夫婦それぞれに、自分たちの関係をどう思っているのか聞いてみたら、どんな答えが返ってくるのだろう。以前、夫の浮気が発覚して離婚寸前にまで追いつめられたことのある夫婦に、実際に話を聞いてみた。

写真はイメージです(以下同じ)
夫の浮気現場を見てしまって
「10年以上前の話ですし、私も結婚を継続すると決めたのだから、夫の浮気の話は封印(ふういん)してきました。だけど正直言うと、夫の浮気現場を見てしまったショックはいまだに癒えていません。むしろ時間が経過すればするほど、心の傷が深くなっていくような気がしています」
ユミコさん(43歳)はそう言って目を伏せた。彼女が3歳年上のショウタさんと結婚したのは29歳のとき。婚姻届を出してすぐ妊娠していることがわかり、30歳で長女を、32歳で長男を産んだ。
“事件”が起こったのは長男が乳飲み子だったころだ。
「彼の親や親戚は会社経営者が多く、グループ企業になっています。父親が本社の社長で、彼は叔父さんが経営する会社で専務をしていた。彼は家に人を招くのが好きでした。明るくてあっけらかんとしていて、お坊ちゃんだから鷹揚で、そこが魅力でもありました」
長男が生まれて半年後の年末、仕事納めの夜、社内の有志が自宅にやってきた。すでに二次会もすんで帰宅した人も多かったので、うちに来たのは10名ほど。
「リビングで飲み直したりしゃべったりと、楽しそうでした」
そんなとき夫は必ずユミコさんも話の輪に入れてくれるのだが、その日は長男の体調があまりよくなかったため、彼女はリビングと子ども部屋を行ったり来たりしていた。
「夜も遅くなってみんな帰り始め、私も子どもの様子が気になるので子ども部屋にしばらくこもっていたんです。そのうち、うっかり子どもと一緒に寝落ちしてしまって」
夫は振り向き目を見開いた
ハッと目覚めたときは午前零時を回っていた。リビングへ行こうと歩いていると、女性の押し殺したような声が聞こえたという。そのまま歩を進めたとき、リビングのソファで抱き合っていると夫と女性の姿が目に飛び込んできた。
「彼女は明らかに私と目が合ったのに、目をそらした。夫は彼女を抱きかかえるようにして体を動かしていました。一瞬、そのまま子ども部屋に戻ろうとしましたが、どうして私が逃げなければいけないのかと踏みとどまった。正直、そこから身動きができなくなってもいたと思う」
彼女は夫の体勢を固定するかのように両手を背中に回していた。ユミコさんは立ったまま、その様子を見ていた。だが視線を感じたのだろう、夫は振り向き目を見開いた。その顔も彼女は忘れられずにいる。

泣いて土下座のあと逆ギレした夫
自宅であんなことをしておいて、見つかったらあれほど驚くというのはどういう心理なのか理解できないと彼女はため息をついた。
「女性は堂々と着替えて悠然(ゆうぜん)と家から出て行きました。夫は酔ったふりをしていたけど、それほど酔ってはいなかった。
ああいうときって本当にどうしたらいいかわからないんですよ。謝られても困るような気持ちだった。だから夫の目を避けて、私はキッチンで洗い物を始めました。夫はバスルームへ行って、そのまま寝室へ。その日、私は子ども部屋で寝ました。もちろん一睡もできなかったけど」
翌朝も彼女は自分から口を開かなかった。夫は夜になってから謝罪を続けた。酔ってうとうとしていたら彼女が上に乗っていたとか、自分からは何もしていないとか、言い訳にならない言い訳を繰り返し、そのうち泣いて土下座を始めた。
「してしまったことはしかたがないと私は言いました。夫は謝罪を受け入れてくれたと解釈したようです。『僕は一生、きみだけを愛してる』と。どの口がそんなこと言うのかと思いました。
『取り返しがつかないという意味だけど』と私が言うと、なぜか夫は逆ギレして『子どもは渡さないから』って。『家の中でよその女性と浮気するお父さんは、子どもの親としてどうなんだろう』と思わず言ってしまいました」
夫は「きみはオレのことが好きじゃないんだろ。だからそんな冷静でいられるんだ」と言った。だが彼女は冷静だったわけではない。ショックのあまり思考停止状態だったのだ。なぜなら彼女は心から夫を愛していたし敬意を抱いていたから。
傷はいつでも痛んでいる
「本社を継ぐのは、実は彼の弟なんです。弟のほうが優秀だからと義父は次男を後継者に指名した。夫は一応、専務という肩書きはあったけど、本当は経営者には向いてない。経営側ではなく、実践派として営業部の部長補佐くらいがちょうどいいと思う。でも夫は苦しみながらも『社員に愛される専務』を目指していた。そういう人だからこそ愛していたのに」
絶対的な信頼を裏切られた傷は大きかった。だが、夫が子どもをこの上なく愛しているのもわかっていたから、ユミコさんは大きな決断をすることはできなかった。
「私の中ですべて封印するしかなかった。夫とはギクシャクしましたが、子どもが幼稚園に入り、小学校に入り、さまざまな行事があってと時間が過ぎていくと、表面上はもとに戻ったような感じになりました。ただ、信頼感が戻ったわけではないので、自分に嘘をついているといつも思っていました」
今年、中学に入学した長女が、夏休み明けに同級生の親が離婚した、と告げた。お父さんが不倫してたんだって、と。お母さんはお父さんを許さないんだって。今や13歳の子も「不倫」という言葉を知っている。
「その瞬間、封印していた箱がバッと開くのを感じました。そう、お父さんが不倫していたら離婚してもいいの、いや、離婚したほうがいいのかもしれない。そこから見えない傷が口を開き始めた。私は夫をかつてのように信頼していない。結婚生活を続けているのは欺瞞なんだと考えています」
あれから10年、そしてあと10年たったら私だって……。彼女は今、そう考えているそうだ。
<文/亀山早苗>
亀山早苗
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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