『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。
ジャン・ポール・ゴルチエの半生を舞台化
先日、ジャン・ポール・ゴルチエの半生を舞台化した『ファッション・フリーク・ショー』を見てきました。
音楽はナイル・ロジャース率いるChicのLe Freakをテーマに、マドンナやデヴィッド・ボウイ等、70年代後半から90年代に流行ったナンバー、ダンスの振り付けは私の大好きなアンジュラン・プレルジョカージュと一緒に仕事をしたこともあるというマリオン・モタン、そして衣装はもちろんジャン・ポール・ゴルチエという、音楽もダンスも、そして衣装も私が20代のころ熱狂していたものの集合体。夢のようなショーです。
衝撃的だったゴルチエのスタイルに熱狂
私が文化服装学院へ通っていたころ、ヴィヴィアン・ウエストウッドが好きなグループ、日本のデザイナーが好きなグループ、そしてジャン・ポール・ゴルチエが好きなグループと、大体3つに分かれていました。
そんな中、私はロメオ・ジリが好きで、一人ぽつんとしていたのですが、ロメオ・ジリの次にはゴルチエが憧れで、いつか買いたいな、着たいなと思っていたものです。
当時のゴルチエは若く才能がありアバンギャルド。メンズにはスカートをはかせ、マドンナにはテイラードジャケットの下にコーンブラを着せます。年齢、人種、体型もいろいろのモデルがランウェイに登場する、今考えたらそれほど珍しくないスタイルも、当時は衝撃的であると考えられていました。
そんなゴルチエのスタイルにファッション学校の学生達は熱狂していたのです。
ただ、今ほどではありませんが、微妙にお値段が高く、ヴィヴィアン・ウエストウッド同様、実際にゴルチエを学校に着てくる学生はほとんどいませんでした。それは本当に憧れでした。
武道館のショーの裏側にゴルチエ先生登場
そんな憧れのゴルチエ先生に、学生時代、遭遇したことがあります。それは武道館で開催されたゴルチエも含むヨーロッパのブランドの合同ショーでのこと。
文化服装学院の学生は先生に指名されて、フィッターというモデルに服を着せる裏方として会場に派遣されます。私はフィッターリーダーとして武道館の舞台の袖で、引き連れてきたクラスメイトたちを仕切っていました。
服の着方がわからない、モデルがジャケットをなくした等々、みんなからのクレームを処理している最中、ゴルチエ先生がスタッフを従えて、大騒ぎしながら衣装がかかったハンガーラックが並ぶ舞台の袖にやってきました。突然のスターの登場に皆がしばしあっけにとられる中、ゴルチエ先生が私たちに向かって何か英語で発言しました。
大した内容ではありませんでした。ただ、私は違う意味で衝撃を受けました。服のデザインとパターン、テキスタイルが完璧なら、英語がめちゃくちゃでもファッション業界はいいのだ、と。
情熱の注ぎどころを間違えなければ大丈夫。選択を間違えなければ大丈夫。そのときゴルチエ先生はそう教えてくれたのでした。
おしゃれな老若男女が集うゴルチエの舞台
さて、ショーの当日です。自分の好きだった要素がぎゅっと詰め込まれたような舞台に見る前から大興奮していたにもかかわらず、諸事情により、飛び切りではなく、中途半端なおしゃれ具合で劇場に向かうことになりました。しかし会場に着いた瞬間、後悔しました。
そこには今までどこに隠れていたのかしらと思うような、おしゃれな老若男女が集っていたのです。
それぞれ他人とは全く違う格好で、ほかでは見られないおしゃれな人たちの、密度の濃い集まりというのは東京でもなかなかないもの。あまりに素敵だったので、みんながどんな格好をしているのか見学にロビーをうろうろしたほどです。
どんなに古くても優れたデザインのものは十分に着られる
そのおしゃれな男女の中には、あれはゴルチエのデザインねと一目見てわかるようなアイテムを身に着けている人たちもたくさんいました。
現在、ゴルチエの製品は古着しかありません。劇場に来ていた人たちの中には80年代、90年代といった、かなり古いゴルチエの服を着ていた人もいました。どんなに古くても、ゴルチエの服は今でも着られるし、全く古びていないのです。
デザインものは流行が廃れると着られなくなると勘違いしている方が多いのですが、流行に大きく影響されるのはむしろTシャツやジーンズといった定番のもの。それに比べて優れたデザインのものはずっと持っていても十分に着られるものが多いのです。
さてうちに唯一残っていたゴルチエデザインのものはこちらのバッグ。少々くたびれてはいますが、デザイン的には今でも全く問題なし。今でも時々使っています。

自分らしくあることこそが最強のおしゃれである
『ファッション・フリーク・ショー』のメインテーマは人と違うこと、自分らしくいることの美しさです。
その自分らしさを育てる養分は、見てきた舞台、聞いてきた音楽、読んだ本、受けた講義、そして着てきた服。そして、その自分らしさの探求に貢献できる人こそが優れたデザイナーであると言えるでしょう。
ほかの誰とも違う、自分らしくあることこそが最強のおしゃれであると、ゴルチエ先生はショーを通して私たちに再度教えてくれたのでした。
<文/小林直子>
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ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。
(エディタ(Editor):dutyadmin)


