子供のベストやリュックにつけた紐を保護者とつなぎ、安全のために使用する「子供用ハーネス」。使用をめぐっては「子供を守るために必要」という意見がある一方で、「子供がペットみたいでかわいそう」という意見も出てたびたび物議をかもしています。
そんな中、漫画家の西野みや子さんが「こんな子供用ハーネスがあればいいのに」というアイデアをTwitterに投稿。投稿には約2万件のいいねと「商品化してほしい」という多くの声が届き、大きな反響を呼びました。
アイデアを商品化するべく、数社のメーカーにかけあう西野さんでしたが、前例がないことで断られてしまいます。
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私にクラウドファンディングができるのか?
――数社のメーカーさんから商品化を断られて、その後どうされたのですか?
西野みや子(以下、西野)「それから半年後くらいに、クラウドファンディングを運営しているCAMPFIRE(キャンプファイヤー)の担当者の方から連絡がきたんです。偶然私のツイートを見たそうで『クラウドファンディングで子供用ハーネスを商品化してはどうか』とお話をいただきました。
クラウドファンディングという言葉は知っていましたが、私には経験も知識もなかったのでとにかく不安でした。担当の方を質問攻めにして、周囲の人間にも相談しました。『私にクラウドファンディングができるのか?』ととにかく悩みましたね」
悩んでいた背中を押した「フォロワーさんたちの行動」
――クラウドファンディング自体も初めてだったんですね。
西野「はい。寝られないくらい悩んだのですが、SNSに届いた『このハーネスが必要だ』というママたちの声が私に勇気をくれました。この商品を必要としている人がいる。さらには、私の知らないところで商品化に向けて動いてくださるフォロワーさんもいました。独自に子供の商品を扱うメーカーさんに提案をしてくださった方もいたんです。
このアイデアを形にすることでハーネスに対する偏見がなくなれば、社会的にも意義があるんじゃないかと思いました。商品化に向けて、『応援しているよ』という声もたくさんいただいたことで、『とにかくやってみよう!』とクラウドファンディングに踏みきりました」
みなさんの「こんなハーネスが欲しい」をぎゅっとつめた
――最初はクラウドファンディングという言葉しか知らない状況だったところから、どのようにプロジェクトを進めていきましたか?

西野「クラウドファンディングについて自分なりに勉強して、わからないことは徹底的に担当者さんに聞きました。みなさんの『こんなハーネスが欲しい』という思いが商品にぎゅっとつまるように、SNSに寄せられた『こういう機能があったらいいな』という声には全部目を通しました。
そして、Twitterに投稿したアイデアとみなさんからの声を元にサンプルを作っていきました。CAMPFIREさんのお力も借り、ヘルメットの丸い形でリュックを作ってくださる会社さまも見つけて、アイデアを形にしていきました」
パッと見で「安全のため」とわかるものを
――商品化に向けて特にこだわったことはありますか?
西野「デザインにはかなりこだわりました。パッと見て『安全のためにハーネスを使っています』ということを伝えることが商品としてとても重要だったからです。
堂々とハーネスを使って、子供の安全を守ってほしい。ハーネスを使っていることで誰にも文句を言わせない。安全対策のためにハーネスを使っているということを説明なしで伝えるデザインにこだわりました。工事現場のヘルメットの形をしたリュックに、トラテープ柄の迷子紐をつけることで『安全対策』と伝わるデザインにしています」
子供が自分からつけたくなる工夫も
――たしかに、このデザインは見た瞬間に安全のためのものとわかりますね。

西野「商品化して、みなさまから『デザインの勝利だね』とおっしゃっていただけることがあります。実際に工事現場で使われているヘルメットは、幅広い年代に知られています。安全のために使用するアイテムなので、説明をしなくても多くの方に認知もしてもらえます。色もとても目立ちます。
一方で、子供が喜ばないとハーネスをつけてもらえませんし、つけてもらえなければどんなに安全性の高いハーネスでも意味がありません。ダンプカーなど工事現場にある“はたらく車”って子供にも人気ですよね。実際に工事現場で働く方が身につけているものなので、本物仕様で子供も喜んでくれます。子供が自分からつけてくれることも大事だと思ったんです」
反射材をつけることで安全性をより高めた
――デザイン以外にもこだわりがたくさんありますね。
西野「リュックの肩紐の部分に反射材をつけています。保育園などのお迎えの時間は夕方が多く、夕方は交通事故が多い時間帯です。小さなお子さんの身長だと運転手から見えにくく、事故のリスクも高まります。
肩紐に反射材をつけることで、夕方でも運転手から認識できるようにしました。反射材をつけることで安全性も高まりますし、安全ベストのような本格的な見た目にもなり子供にも喜んでもらえました」
子供の体にフィットしつつも、快適につけられるように
――構造でこだわったのは、どのような点ですか?

西野「せっかくハーネスをつけても、子供の体にフィットしないと正しく使えません。肩ベルトがずり落ちないようにチェストベルトもつけて、リュックが体から離れないようにしています。一方で体にフィットしすぎると夏場などの暑い日は背中が蒸れます。そこで、リュックの背中にあたる部分をメッシュ仕様にして内側には保冷剤も入れられるようにしました。『暑いからリュックを背負いたくない』というのも防げます」
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誰が見ても、安全のためにハーネスを着用していることがわかるデザインと、子供が喜ぶデザインが両立した『【子供の安全第一】ハーネスリュック』。子供が快適に使用できるように保冷剤を入れるポケットもつけるなど、細かいところにまで工夫が施されています。
西野さんや全国のママ・パパの思いがつまった『【子供の安全第一】ハーネスリュック』。クラウドファンディングにむけていよいよ動き出します。
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【西野みや子】
漫画家。3歳の息子を育てる母。元教員・元漫画背景アシスタント。自身のエッセイ漫画やレポ漫画、育児漫画をSNSやnoteで公開中。Twitter:@miyakokko61、Instagram:@miyakokko61
<取材・文/瀧戸詠未>
瀧戸詠未
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB
(エディタ(Editor):dutyadmin)

