ネット上で話題となり2023年7月5日に書籍化された、ぱん田ぱん太さんの漫画『欲しがるあの子を止められない とんでもないクレクレちゃんに絡まれた結果、 人生を深く考えた話』(KADOKAWA)。
登場人物のチコちゃんは、知り合いに図々しいお願いをしたり、自分はお金を出さずに友人の注文した食べ物を勝手に食べたりと“クレクレちゃん”な行動を繰り返します。
また、それだけではなく彼女の過去に焦点を当て、なぜそんなふうになってしまったのかを追っていきます。
本記事では書籍の一部を紹介。後半では著書のぱん田ぱん太さんに、この作品を描くきっかけや、執筆する上で意識していたポイントなどを聞きました。
※本記事は全10回のうちの1本目です

「そんな人いるの?」衝撃が作品に
――ぱん田さんが、チコちゃんの物語を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
ぱん田ぱん太さん(以下、ぱん田):私が友人に「こういう図々しい人がいる」と聞いて、「ええ!? そんな人が本当にいるんだ!」と、衝撃を受けたことがそのまま漫画になっています。
「人から聞いた話をこんなに細かく描けるわけがない」という読者の声がときどきあるのですが、もちろんすべてを事細かく知っているわけではないので、聞いた話をもとにある程度の肉付けはしています。
私としては、「こういう人がいるけど、実は可哀想な人なんだから許してあげましょうよ」と訴えたいというわけではなく、作品として面白い、珍しいものを作りたい気持ちが大きいです。
――特に描きたかったポイントはどんなところですか?
ぱん田:対人トラブルを描いた作品は、シンプルにいうと主人公に迷惑を掛ける変な人が現れて、最後に成敗されてスカッとする! みたいな展開が多いと思います。
読みやすいし楽しいんですけど、そればかりだと飽きられてしまうかもしれないので、変な人の背景まで踏み込んでいく話を描きたいと思って始めました。
チコちゃんの見た目に配慮

『欲しがるあの子を止められない とんでもないクレクレちゃんに絡まれた結果、 人生を深く考えた話』(KADOKAWA)
ぱん田:チコちゃんは悪役として登場するのですが、嫌な感じのデザインにならないように配慮しました。見た目でチコちゃんに対する憎しみをさらに煽ってしまうのはちょっと違うのかなと思ったんです。なるべく可愛らしいデザインにして、喋り方も乱暴にしないようにしています。
――ぱん田さんは、この物語の登場人物の中で誰に感情移入していたのでしょうか。
ぱん田:私はこの中だと、大谷さん(チコちゃんの夫の同僚の男性)です。チコちゃんの被害には遭いたくないけど、興味があるから横から口出ししてみたり(笑)。でもチコちゃんの行動に対して本気で怒ったりしないし、「まあ良いじゃん」と楽観的に構えている感じが私と近いかなと思います。
クレクレちゃんに出会った経験は?
――チコちゃんの物語は、登場人物のツラい過去が明かされていきます。どんなことを意識して描いていたのでしょうか。
ぱん田:私自身、物語の展開がツラ過ぎると読むのが嫌になっちゃうので、そうならないようにバランスを取っています。
登場人物が悩んでいる時は小ネタのギャグを入れてみたり、大谷さんのような救いがあると思わせてくれるキャラクターをちょこちょこ登場させて深刻になり過ぎないようにしていました。
――ぱん田さん自身は、チコちゃんのような「クレクレちゃん」に出会ったことはありますか?
ぱん田:私自身は人生で一度もないので、友達に話を聞いたときは驚きました。もし出会っていたら、私は性格的にバッサリと断れるタイプなので「私はあなたにとってお得になることはしませんよ、他を当たってください」と言ってしまうかもしれません。
<ぱん田ぱん太 取材・文/都田ミツコ>
(エディタ(Editor):dutyadmin)






