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幼児教室でインフルエンザ発生。“激怒するお受験ママ”VS“ワクチン否定の自然派ママ”が

時刻(time):2023-07-12 16:52源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
―連載「 沼の話を聞いてみた 」― 就学前の子どもを対象とした「早期教育」。歩(あゆみ・仮名)さんは、いまから20年ほど前、ママ友からの誘いで「授業を通して、非認知能力を育てる」ことを目的とした知育教室に、当時幼稚園児だった息子を通わせていた。 そこで繰り広げられていたのは、教育にのめりこむ、母親たちの沼だった――。 ※写真はイメージです(以

―連載「沼の話を聞いてみた」―

就学前の子どもを対象とした「早期教育」。歩(あゆみ・仮名)さんは、いまから20年ほど前、ママ友からの誘いで「授業を通して、非認知能力を育てる」ことを目的とした知育教室に、当時幼稚園児だった息子を通わせていた。

そこで繰り広げられていたのは、教育にのめりこむ、母親たちの沼だった――。

知育教室沼202307②

※写真はイメージです(以下同)

教室には教育意識の高い母親たちが集まり、最終的には子どもらを東大へ進ませることを目標としていたという。

土日になると授業をみっちり詰め込むだけでなく、「頭をよくする」ことを目的に、音楽や読み聞かせ、体操、なかにはスピリチュアルなものを取り入れていた母親もいたという。

「音楽などの情操教育に役立ちそうなものも、すべてが”頭をよくするため”というのはすでにお話しましたが、栄養面も例外ではありません。子ども向けの栄養ドリンクを飲ませているのも、よく見かけましたよ」






まるで促進栽培される野菜のよう


「ウチも少し大きくなってから買ってみたことがありますが、基本、親の言うことを聞く子ではなかったので、ひと口も飲んでくれませんでした(笑)」
知育教室沼202307②
「子どもの頭がよくなる食事」なんてものはいまでもまったくめずらしくなく、昔から定番の、親をターゲットにした健康ビジネスなのだろう。

詰め込みとも思える早期教育に、普通の食事にプラスαされる栄養剤。子育てを農作物に喩えては失礼だとは思いつつ、促成栽培の光景を思い浮かべてしまう。






教室が怪しいビジネスの入口に


よりよい環境を与えてあげたいと思う親心からであり、一般的には「子どもに手をかけている」として賞賛されることなのだろうけど。

「授業を長時間入れていると、当然待ち時間が長くなる。そのあいだに、母親同士で教育情報を交換するんですよね。みなさん本当に熱心で、まるで早期教育の百科事典みたいに何でも知っている。

しかしそこの光景が、まさに沼。怪しいものに対するアクセスがやたらと多く、しかもお母さんたちが信じやすいからです。

『一般には知られていないけど実は』『ここだけの特別な情報』というノリに、みんなが飛びついていました。狭いコミュニティ内で紹介されるので、そこで紹介されたものに行くと、必ずといっていいほど教室関係者に出くわす。みんなでぐるぐると、同じ沼のなかを徘徊しているような感覚でした。

とにかくみなさんエネルギッシュ。目が死んでる子どもらがたくさんいる一方で、活動的なお母さんたち。何か子どものエネルギーを吸ってるんじゃないかという勢いでした」













知る人ぞ知る、というキラーフレーズ


知育教室沼202307②
子どもの教育に関わるものだけでなく、美容健康関係の「知る人ぞ知る」サロンなども、よく紹介されたという。

ハリウッドでなんちゃら賞をもらったという美容サロン。体に触れず、不調を消すという整体師。歩さんはそうした関係から高額な美顔器を買ったものの、逆に肌荒れがひどくなりすぐクーリングオフした。

仲よくしていたママ友は、ホームパーティに誘われて出向いたところマルチ商法の最大手アムウェイの勧誘会だったという経験もしたという。

さらに「ここだけの情報」というなかには、「ワクチンは危険」というものもあった。






受験直前にインフルエンザが流行


知育教室沼202307②
「その教室では小学校受験に臨む家庭も多いので、多くの家庭は任意接種のワクチンもすべて打つくらいの勢いでしたが、それでも一部、自然派の反ワクチンママがいるんですよね。トラブルになった発端は、定期接種のワクチンも一切打たせないというお母さんでした。

タイミング悪く受験直前にその家の子がインフルエンザにかかり、しかも授業に参加してしまったので周りに広がったんです。ウチの下の子も、感染しました。

するとそのせいで受験できなかったと激怒するお母さんたちと、普段から免疫を強化していないからだ! と主張する自然派ママとで大げんか。いまはもう笑って話せますが、当時は本当に大変でした」








知育教室沼202307②
20年前で、こうである。昨今は新型コロナワクチンの存在もあることからさらに情報が入り乱れ、この手の教育沼は、さらなるカオスになっていそうだ。

また、早期教育の低年齢化やSNSの発達によるコミュニティの作りやすさ、つながりやすさ。こうした「沼現象」は確実に悪化していると思われる。






子どもが大きくなってからの付き合いは?


しかし歩さんの場合は、子どもがすでに成人している。当時の沼=コミュニティはとっくに解散しているだろう……と思いきや、「まだ付き合いはつづいている」という。

「同じ痛みや切実さを感じていた人かつ、そのなかで同じ温度感を持ち、違和感を話し合えた人とは関係も長くつづくんですよね。ああ……でも、いまだにおかしなものにハマっている人はたくさんいます」






やはり怪しいものにハマる人も


知育教室沼202307②
「最近ですと、自己啓発セミナーに傾倒している人がいましたね。

昔は同じ沼にいた仲間が、いまはそれぞれが違う世界にいる。彼女たちのSNSを見ていると、ちょっとパラレルワールドを見ているかのような気分です」

母親たちとの付き合いがつづいたことで、子どもらの「その後」も知ることができた。早期教育は果たして本当に効果があったのだろうか?

<取材・文/山田ノジル>
山田ノジル
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru




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