
連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)も好評の神木隆之介さん(30)。
スクリーンでは、大名家の家督を、思いがけず継ぐことになった主人公を演じた映画『大名倒産』が公開中です。
本作で、時代劇初主演を務めた神木さんにインタビュー。30歳を迎えたばかりの神木さんに「どんな大人になりたいか」を聞くと、これからの「自分のテーマ」を見つけるきっかけになったという、本当に信頼している相手、山田涼介さんとのエピソードを教えてくれました。

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ポップで今っぽい、時代劇だと構えず観てほしい映画

――本作は浅田次郎さんの原作を脚色した時代劇です。25万両(約100億円)もの借金を抱えた藩の城主となった主人公・松平小四郎が、ピンチを前に奮闘しますが、全体を通じてポップな仕上がりです。
神木隆之介(以下、神木)「時代劇映画というと、どこか構えてしまう部分が僕個人としてもありました。言葉自体がわからなかったり、刀で人をすぐに斬ってしまったりといったイメージがあって。それがこんなにポップで今っぽいなんて、このギャップは、すごく新鮮味があると思います。
それにこの映画の中で、小四郎たちがぶつかっていく壁、借金の問題や(それを解決するための)節約法、小手(伸也)さんが演じてらっしゃる橋爪さんの中間管理職的な苦労なんかも、僕が会社員として働く友達から聞く話と変わらなかったりするんです。各キャラクターが背負っているもの、置かれている状況は、生きづらい現代の世の中との共通点がすごく多いなと。だから時代劇だと構えずに観てほしい作品だと思います」
小四郎は「この人のために頑張りたい」と思えるリーダー

――主人公の小四郎自体、これまでのリーダーとは違う魅力があります。
神木「前田(哲)監督には、『人に寄り添うことのできるリーダーであったらいいなと思います』とお伝えしました。リーダーというと、恐怖で支配したり、先陣を切って引っ張っていくイメージが大きいと思いますが、僕が演じて表現したかったのは、そうした力はなくても、自分自身がとにかく必死に頑張っていて、家臣たちとも向き合おうとしてくれている人。そうしたことの誠意が伝わることで、人の心が動く、『この人のために頑張りたい』と思えるリーダーなのかなと」
――さらに、小四郎はとても愛嬌のあるキャラクターです。表情がコロコロ変わる様も愛らしかったですが、神木さん自身、普段から表情がコロコロ変わるタイプですか?
神木「変わると思います。あんなには変わらないですけど、『顔に出る』『分かりやすい』とは言われます。隠してるつもりなんですけど(笑)」
――最近、一番表情筋を使った出来事を挙げると?
神木「『らんまん』の東大生チームの前原滉くんと前原瑞樹くんの3人でカラオケに行ったときですね。めちゃくちゃ楽しくて、めちゃくちゃ笑いました。彼らのおかげで、現場でもそうですし、いつも笑わせてもらっているので、笑う方で使う表情筋が痛いです(笑)」
自分に何かしてもらうより、人にしてあげるほうが好き
――『らんまん』の万太郎と、『大名倒産』の小四郎は、ベクトルは全く違いますけど、どちらも“人たらし”かと。それは、演じる神木さんご自身にも通じる魅力かなと感じます。ずっと芸能界の第一線で活躍されてきましたが、普段、多くの人とお仕事をされる上で、心がけていることがあれば教えてください。
神木「僕は、とにかく一緒にお仕事する人に、『楽しい』と思ってもらいたいんです。それこそ今の朝ドラで言えば、いろんなゲストの人たちが参加されます。最初からいるメンバーはオールアップしてしまって、また新たにチームが出来る。ひとつの作品だけど、全く違う作品をやっているかのように進んでいく。そんななかで、俳優部のリーダーとして、とにかく『この現場は楽しいな』と思ってもらいたいとの思いがすごくあります。それは、仕事を離れて、友達と一緒のときも同じですけどね。『こいつと一緒にいると笑うことが多いな』と思ってもらえると、僕は嬉しい」
――そうした気持ちは昔からですか?
神木「昔からです。小さな頃から。人が喜んでくれるのを見ると、めちゃくちゃ嬉しいんです。たとえば、自分の誕生日とかを祝ってもらえるのは嬉しいんだけど、なんだか申し訳なくなっちゃう。祝ってもらうより、自分が人に何かしてあげるほうが、好きだし楽しいです」
これまでに出会った先輩から“人たらし”を挙げるなら

――ちなみに長いキャリアのなかで、神木さんが“人たらし”だと感じた先輩をひとり挙げるなら?
神木「中井貴一さんです。なんてステキな人なんだろうと。現場でも誰も一人にさせない、気遣いの人です。本当にステキで、スマート。尊敬していますし、憧れの人です。もちろん緊張感の必要なときには、そうできる方ですが、それが負担にならないんです。大事なシーンで、『よし頑張ろう!』といい意味での緊張感をスムーズに作られる。そして、それが終わったら、またいつもの楽しい雰囲気にガラッと戻すことができる。すごいと思います」
――では神木さんが目指している「楽しい現場」というのも、そうした緊張感のある大事なシーンをやり遂げた達成感を含めての「楽しさ」でしょうか。
神木「そうですね。そういう意味でも楽しいと思ってほしい。基本的には笑いながら」
山田涼介から「お前だけは変わらないでいてほしい」と言われて

――中井さんは現在61歳ですが、神木さんは30歳になったところです。これから年齢を重ねていったとき、どんな大人になっていきたいですか?
神木「僕は変わらずにいたいです。中井さんのようにスマートに、というのもできないですし。このままで。実は何年か前に、山田涼介くんと会ってご飯を食べたときに『本当にお前は変わらないな。そこが俺らにとってすごく安心できる。周りがどれだけ変わろうが、お前だけは変わらないでいてほしい』と言われたことがあるんです。そこから、『僕は変わらなくていいんだ』というのが自分の中でのテーマになりました。
それまでは、なんとなくですが、『大人っぽくならなきゃ』とか、『どんな大人になっていけばいいんだろう』と、漠然と思うこともありました。でもそう言われたとき、めちゃくちゃ嬉しくて。本当に信頼している山ちゃんの言葉だし、『このままでいいんだ。大丈夫なんだ。うん、分かった、君がそう言うならそうするよ』と心に決めたひと言でした」
――ありがとうございます。これからも、変わらぬ強さで益々のばく進を期待しています。

<取材・文/望月ふみ カメラマン/YOSHIHITO KOBA(Sketch) スタイリング/カワサキ タカフミ ヘアメイク/MIZUHO(VITAMINS)>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
(エディタ(Editor):dutyadmin)














