料理のチカラを、信じよう。
こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、スーパーマーケットやコンビニグルメ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。
みなさま、毎日の育児おつかれさまです。子どもと料理をすることは大事だと聞くけれど、習い事でそんな時間はない、教える立場はしんどいというママやパパは少なくないでしょう。でももし、学校や塾の勉強以上の効果があるとしたら、どうでしょうか?
私のこれまでの食育コラムでもお話ししていますが、東大出身の私が断言できるのは、幼少期からの塾通いやガリ勉は、高学歴を作るための必要条件ではありません。また、受験勉強に勝ったとしても、人生が幸せになるわけでもありません。
【前回の記事】⇒東大卒ママが実感。子どもと一緒に料理をしたら、「算数の成績」が向上した“3つのワケ”
前置きはこのくらいにして、今回は、食育や親子料理を通して、“真の国語力”を高める方法について、我が家のエピソード(小学2年生の男児)をご紹介しながら、今日からすぐにできそうな工夫のコツ・ツボをお伝えしていきたいと思います。
弱視の診断、そして左利き。読み書きを拒否するように
まず我が子について軽く紹介をさせてください。健康な体で産まれてきた息子でしたが、3歳前の健康診断で、「弱視の可能性が高い」という診断を受けました。
近くのものがちゃんと見えていない可能性があること、早めに治療をしないと脳の発達にも影響が出てくるというという警告のような説明でした。
まったく想定していなかった知らせに、私も夫も動揺を隠せませんでしたが、息子は3歳前にしてメガネ生活をスタートすることに。そして“異物”であるメガネをかけることに対する恐怖心によるものなのか、しばらく映像や絵本などを見ることを拒否する時期がありました。
加えて息子は生まれつきの左利き。何をするのも左手左足をメインに使うのですが、保育園での書道や幼児教育の時間は、否定の連続。
「右にしましょう、今なら直せます」という矯正アドバイスは本人にとって“人格否定”のような感覚だったそうです。その結果、ひらがななどの文字を正しく書くことに苦手意識が定着。読むのも書くのも大嫌いな幼児になりつつありました。
改善策を冷静に考えてみた
私は落ち込み、悩みに悩みました。まさか自分の子どもが、3歳にしてこんなことになるなんて……。
そして散々悩み切ったある日、吹っ切れたのか改善策を冷静に考えようという気になってきたのです。そして、いくつかのコンセプトを心に決めて、親子で料理を実践してみることにしました。
その結果、時間はかかりましたが読み書きが大好きで、国語に得意意識を持つまでに成長を遂げています。特別な幼児教室に通ったわけではありません。
そこでここからは、息子と一緒にどのようなことを意識しながら取り組んだのか、料理・食育の視点で4つのエピソードをご紹介していきたいと思います。前編は、息子が国語(日本語)に積極的に向き合うようになった“はじめの一歩”的な対策を2つお届けします。
①まずは左利きであることを自信につなげた
息子の苦労を知らない人からは、「左利きってかっこいいわね!」や「左利きは天才肌!」ということをさんざん言われましたが、実情はそんなにかっこいいものではありません。
文字を書くのはもちろんのこと、子どもの練習箸やハサミも右利きを基本に作られているので、何をやるのも困難の連続。
しかしながらこの状況にクヨクヨしてもはじまりませんから、私は息子が左利きであることに劣等感を抱かせないよう、徹底して“左利きの器用さん”を目指すことにしました。
ゴマすり、海苔刻み、ニンジンすりおろし、野菜型抜き、おせち料理の盛りつけ……。子どもの能力は素晴らしいもので、みるみる上達、大人顔負けのレベルまでになり、少しずつ料理のお手伝いが好きになっていきました。食は勉強やスポーツ以上に身近なので、毎日実践できます。
そして気がついたら、「左利きの自分は器用だぞ」という自信を持てるようになりました。
この頃、私と息子が二人で獲得したことは、「練習すれば絶対にうまくなる」という姿勢だったように思います。私は意識的に、息子は無意識的になのかもしれません。
②料理や食をテーマにした絵本を一緒に読み、実践した
息子の視力は、近いものにピントが合いにくいという状況でした。つまり、絵本の文字を捉えるために人よりも力が要るという感覚だったのでしょう。
目の矯正には時間と努力が必要だったため、焦らずに文字嫌いを克服していこうと考えました。そして私が選んだのは、食や料理に関連する絵本でした。
息子の大好きな食べ物やキャラクターが出てくる本を探して、まずは私が勝手に一人で読み始めました。
すると息子が、「ママ、読んで!」と言うようになり、次第に「一緒に読もう!」「同じように作ってみたい!」と変わっていったのです。時間はかかりましたが、息子を観察していると明らかに進歩を感じ、継続することに確信が持てるようになりました。
振り返ってみると、ただ読み聞かせをしなかったのが良かったのかもしれません。実際に料理につなげたことで、文字の世界がおいしい食事に変わる喜びを体験できたことが有意義でした。また、一般的に良いとされている読み聞かせは時として押し付けにもなりますから、注意が必要です。
今では読書が大好きな子どもに
小学生になったある日、学校で作った「自由かるた(好きな文字で好きなことを1枚書くルール)」を持って帰ってきました。
そこには、「ほんを よむのが たのしいな」と書かれていました。私も夫も涙が出るほどうれしくて、あの時の喜びは一生忘れないものになっています。
4年の歳月を経て、息子は左利きに対するコンプレックスや苦労を感じなくなり、文字を読むことも好きになりました。
しかし、これだけでは国語ができるようになったとは言えません。後編では、真の国語力を身につけるためにどのようなことを意識して取り組んだかをご紹介したいと思います。
<文/食文化研究家 スギアカツキ>
スギアカツキ
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。ビューティーガール連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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