仕事の書類、DMやカタログ、国や自治体からのお知らせなど、ふと気がつくと、家の中に山のようにたまっている「紙」。世の中はペーパーレス化が進みつつあるはずなのに、なぜ私たちの家からは紙が消えないのでしょう?
独自のメソッドでこれまで約1000人もの人の片づけを成功に導いてきた片づけアドバイザーの石阪京子さんは、「布団一枚を捨てるよりも、実は、紙一枚を捨てるほうが難しい」と語ります。
「『万が一、必要になったらこわいから捨てずにおこう』と溜め込んだ紙や書類が、ダイニングテーブルの上や本棚、押入れの奥など、あらゆるところに山積みになっているお宅を何百軒も見てきました。中には、箸やスプーンと同じ引き出しから、大事な保険証券が出てきたお宅もありました」と石阪さん。
本記事では、人生が「紙片づけ」のテクニックについて、石阪京子さんの著書『人生が変わる 紙片づけ!』(ダイヤモンド社刊)より抜粋してご紹介します。
家の中にあふれる「紙」のせいでモヤモヤ・イライラ
毎日ポストの中には様々な紙が入ってきます。手紙、カタログ、請求書、税金の書類、契約書、近所のお店のチラシ……。
子どもがいれば、毎日、お知らせやプリント、テストなどを持って帰ってきます。お店に行けば、レシートはもちろん、ショップカード、クーポンや広告をもらい、モノを買えば、どっさりと取扱説明書やチラシがついてきます。

モノのように、自分で選んで買ったわけでもないのに、勝手にどんどん入ってきて、しかも、見た目は同じ紙だから、取っておくべきなのか捨てていいのかわからない。
封筒に「重要」と書いてあったら、「後で読もう」と、とりあえず取っておく。そのうちにダイニングテーブルは紙の山になり、肝心な時に出てこない。あるいは、気づいた時には支払い期限が切れている……。
家の中にあふれる「紙」のせいで、なんだかいつも追い立てられているように感じたり、うまく暮らしが回っていない気がしてモヤモヤ・イライラしたり。そんな方は、実はとても多いのではないかと思います。
「チラシお断り」のステッカーで入口から断つ
日々の紙片づけをラクにするポイントのひとつに、「そもそも、不要な紙が入ってこないようにする」ということがあります。
不要な紙の侵入経路は主に3つ。
①郵便受け
②街で渡される
③自分でもらってくる
①の郵便受けに入ってくるDMやカタログは、企業に連絡をすれば配送を止めてもらえます。わざわざ手続きするのは面倒に感じますが、1回やれば、今後処分する手間が省けるので、ちょっと頑張ってやったほうがラク。
また、そのほうがエコです。ひとり一人が「こういう紙は要りません」と企業に伝えていけば、資源が守られていくことにつながります。
宛名がない、不特定多数の家に届くチラシに対しては、「チラシお断り」のステッカーを貼るのがおすすめです。ある生徒さんは、コロナを機に、「昔から要らないと思っていたけど、ウイルスまで運ばれそうで本当にイヤ」と思いを強め、ステッカーを貼ってみたところ、まったく入らなくなったそう。「宛名がない、自分宛てではない紙を処理する手間が省けて、すごくラクになりました!」と喜んでおられました。ステッカーは、安いものだとアマゾンで300円台で購入できます。
ネットで見られる情報ならネットで見る
②は、道端で配っているポケットティッシュ付きの不動産のビラや、ポイントカード、クーポンなど。私は、情報は自分で取りに行くと決めているので、ビラを受け取ることはありません。滅多に行かないお店はポイントカードを作りませんし、クーポンも、期限内に来られなさそうならその場で捨てます。なぜなら、使わない紙を持ち帰って管理するのが面倒だから。侵入を阻むことで、管理のコストを下げているのです。

③は、スーパーに置いてあるカタログや、美容院や雑貨屋さんに置かれている、近隣の展示会情報などですね。ネットで見られる情報ならネットで見ることにする。その場で写真を撮れるなら、欲しい情報だけを撮影するなどして、紙の侵入を防ぎましょう。
捨てにくい個人情報は生ゴミごちゃまぜ作戦で解決
紙に載っている個人情報の部分は、特殊なスタンプを押して消したり、シュレッダーにかけたりしてから捨てる方も多いようです。でも、「けっこう面倒で大変です」「夜中にシュレッダーをかけるとうるさいから、そのせいで大量の書類が家から出せません」などのお悩みも寄せられます。
私自身は、不要なDMは封も開けずに燃えるゴミとして捨てています。宛名の部分を破くこともしません。ただ、それができるのは、大阪の場合、ぱららーんららららららーんと軽快な音楽とともに、ゴミ収集車がやってくるんですね。私はぱららんが来る15分ぐらい前に出すことが多いです。そうすれば、誰かに見られる暇もなく回収されて、ぐしゃぐしゃに粉砕されるのがわかっているからです。
でも、これは地域の特性があるので、例えば都会のタワーマンションなどにお住まいで、24時間ゴミを出せる環境の場合は、誰かに見られそうで不安かもしれないですね。
そういう場合は、びりびりに手で破いて、生ゴミと混ぜて捨ててみてはいかがでしょうか。さらにこれを紙袋に入れてガムテープでぐるぐる巻きにすれば、盗み見されるリスクは下がります。
なんのためにその紙を破るのか、を考えてみる
そもそも、家庭で処分対象となる紙に、大した情報は載っていないように思います。仕事にまつわる紙は、必ずシュレッダーにかけないといけないものが決められていますよね。うちも、仕事関係の書類は、お金を出して溶解処理をしています。
でも、一般家庭はそうではありません。例えば、洋服屋さんのDMを捨てて、誰かに見られたとしても「石阪さん、ここの店で服を買っているんだ」と思われるだけなので、実害はありません。

シュレッダー行きの紙が溜まって困っている場合は、まず、「なんのために、その紙を破るのか」を考えてみるとよいですね。そして、手段を選ぶ。手で破れば事足りるのか、シュレッダーにかける必要があるのか。
個人情報を守ることはもちろん大切です。でも、そのせいで紙が片づかず、困っておられるなら、早く片づけるためにできることを優先してみてください。
<文/石阪京子>
石阪京子
片づけアドバイザー。宅地建物取引士。JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。独自メソッドによる片づけアドバイスで、これまで約1000人もの人が片づけに成功。現在は、収納監修、片づけレッスンほか、全国各地でのトークイベントやオンラインセミナーを開催。著書に『一回やれば、一生散らからない「3日片づけ」プログラム これが最後の片づけ!』、『人生が変わる 紙片づけ!』(ともにダイヤモンド社)など。
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