―連載「沼の話を聞いてみた」ヴィーガン女性の沼<中編>―
「世の最先端をいくハリウッドセレブが肉を食べていないということは、それが正しい」。そう考え、完全菜食主義であるヴィーガン生活へ突入したいるみるくさん。
【前編を読む】⇒「焼肉なんて野蛮!」ダイエットをきっかけに過激な“菜食生活”にハマった女性の主張とは
「当時はマドンナとかグウィネス・パルトローとかのセレブたちがインタビューでこんな感じのことを語ってました。美のヒケツ? もう何年もヴィーガンなのよ。みたいな。そういう記事を読んでは、自分の食に対する信念は正しい! と考えがますます補強されていきました」
医師からの忠告に反発!
前編で紹介したとおり、いるみるくさんはダイエットで極端なカロリー制限をしたことで摂食障害寸前となり、健康を取り戻そうと粗食をはじめ、そこからマクロビ、ゆるベジタリアン、有機野菜、そしてヴィーガンへとたどり着いた。
幸い食べ吐きの衝動は収まり、ダイエットもそれなりに成功。ところがたまに風邪などで体調を崩し病院に行くと、その食生活をやんわり忠告された。
極端な食生活は人間関係にも影響
「以前より体重が落ちてるので、ダイエットしたの? とか医者に聞かれるわけですよ。そしてヴィーガン生活を伝えると『肉は食べたほうがいい』『あなたの食生活は普通なことじゃない』『女性だからこの先子どもがほしいと思ったときに、つらい思いをするかもしれない』『あなたはもう大人だから僕があれこれ言う立場ではないけれど』と。そのときは、わかってないなあ~みんな、みたいに感じました。年寄りだからとか、まだわかってないの? とか。そんなふうに思ってましたね」
2000年代初頭はいまと比べると、ヴィーガンは知る人ぞ知るというレベルのライフスタイルだった。同居していた母親は家庭菜園で無農薬野菜を作ったり、菜食生活に付き合ってくれたりと前向きに協力をしてくれたが、友だちからは奇妙な目で見られていた。
「人間関係が壊れるまではいかなかったけど、お互いちょっと距離ができてしまいましたね。外食は誘われても、自分から断っちゃう。食べるものがなくて申し訳ない、みたいな気持ちもありますしね。焼肉なんか誘われた日には、そんな、牛殺して焼くとか何!? みたいな(笑)」
マクドナルドとケンタッキーの違い

「マクドナルド? あんなパッケージにして出したら生き物の命を奪っている罪悪感も何もないじゃない! 肉の形くらい残せよ。悪魔の産業……そんなふうに思っていた。ちなみにケンタッキーは骨がしっかりあって、意外とワイルドで動物の形が残っているから私的にはOK。ファストフードチェーンだけど、鳥の慰霊祭※もやっている。それを知って『うん、よくやってる』『あいつら覚悟決めてんな!』なんて。ちょっとヤンキーみたいなノリで(笑)」
※1974年からKFCの日本法人では「チキン感謝祭」という行事が開催されている。関東は東伏見稲荷神社、関西は住吉大社で行われ、鶏と取引先への感謝を込め、玉串奉奠(ほうてん)が行われているという。
友だちに「教え諭す」スタイル
食生活だけでなく、生活全般も変化していく。電車に1時間乗って、ヴィーガンコスメひとつを買いに行く。送料1000円をかけて自然派石けんを取り寄せる。不便であるほど「みんなはまだ目覚めてないから、目覚めている自分がひとりで戦うしかない」「私が社会を変えていく」という感覚が高まっていった。
「友だちには、どこそこの商品を使うべき! みたいに物の購入を勧めたりはしないけど、わかっていないから諭す、というスタンスで接していました。牛を育てるにはこれだけのコストがかかるうえメタンガスも出るから環境破壊につながる。知能が高い生き物を食べてはいけない。本来個体数がそこまで多くないはずの大きな動物を人間の都合で増やすのは生態系の破壊だ。そんなことを話した記憶があります。いまもそれは、本当にそうかもしれないと思っていますが。でもそんなことを言ってれば、普通の人付き合いはむずかしくなりますよね」
話を聞いていると、いるみるくさんは非常にまじめな人なのだとわかる。セレブのオシャレさに憧れてヴィーガンになったという入り口はミーハーであるものの、ヴィーガンを通じて食肉のありかたを真剣に考えるようになったというのだから。
いっそ自分で狩るべきなのか
「そのうち、パックされてスーパーに並んでいる肉にも怒りと疑問が沸いてきます。処理されて食材となった段階から関わるのはずるい。自分で狩って殺すことから関わり、責任を取るのなら食べてもOKなのではないかと。初期の目的だった美と健康を通り越して、動物とどう関わるかみたいなことを話していましたね」

「肉を食べるなら、撃ち損ねて苦しんで死ぬ鹿とか見たうえでないといけない! とまで考えていました。自分でとことん関わるか、まったく関わらないか……間がなかった。調べたら意外と、ヴィーガン出身のマタギっているのかもしれませんね」
ヴィーガン生活はつづかなかった
最近の女性向け情報などを見ていると「週末ヴィーガン」や「ゆるベジタリアン」など、力を抜いて無理なくつづける提案が多々見られるが、いるみるくさんさんは真逆だ。とことん突き詰めたくなる性質なのだろう。
それなのになぜ、ヴィーガンを辞める選択をしたのか。それは友人との同居生活を始めたことがきっかけだった。
(後編につづく)
<取材・文/山田ノジル>
山田ノジル
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
(エディタ(Editor):dutyadmin)
