「人は、一生に一度、忘れられない恋をするとどこかで聞いたことがあります。たぶん、私にとっては10年前のケンとの不倫がそれだったんです。今は優しい夫のもとに戻り、それはそれでしあわせ。それでもあのときのめくるめく日々を忘れることはできないんです」
夫とは、子供は作らないセックスレスな関係
カリンさん(仮名)は、現在40歳。スタイリストとして成功し、仕事は忙しい。3歳年上の夫は某一流企業のエンジニア。25歳の時に、友達の結婚式の二次会で知り合った。当時からカリンさんは、なによりも仕事が大好き。恋愛や結婚よりも、一生を仕事に捧げたいと考えていた。そんなカリンさんをフンワリ受け止めてくれる彼(現在の夫)との関係が心地よく、「子供は作らない」と話し合ったうえ、27歳で結婚した。
「夫とは結婚してすぐくらいからセックスレス。だけど私、正直言うとセックスであまり感じたことがなかったですし、夫もその前までの彼氏のときも、そんなにセックスが好きではなかったんです。夫に誘われないことを寂しいと思ったことはなく、むしろ、冷静な日常生活をサクサクと進めていけるので効率的で快適だったのです」
そんな夫婦生活を送るカリンさんの前にあらわれたのが、7歳年下のウェブデザイナーのケン(仮名)だった。しょうゆ顔ですっきりした顔。少しクールで「少年隊の東を若くしたようなイケメン」だったという。
不倫相手で味わった“生まれてはじめての快感”
ケンとは、たまたま参加した異業種交流会で出会った。まずはその美貌にドキドキ。ちょうど、スタイリストとしての個人サイトを制作したかったカリンさんは、ケンに相談をしはじめ、ミーティングと称して会うようになった。
3回目に会ったときに、ついふたりとも飲みすぎてしまい、アフェアは起きた。
2軒目のバーを出てから自然と二人は手をつなぎ、タクシーでラブホテルに直行。その流れには「なんの違和感もなかった」。そしてその夜を境に、ふたりは、会えば毎回、ホテルにも行くようになった。

なぜか。理由はひとつ。彼が、生まれてはじめてセックスの快感を教えてくれたからだ。
「最初にホテルでベッドインしたあとには、ああ……私もこういう感覚を持てるんだって、なんだかうれしかったですね。気づくとツーッと涙が流れてきて、それをケンには見られないように、毛布で顔を隠しながらしみじみとしたのを、今でもよく覚えています」
しかしその日から、ふたりの“力関係”がなんとなく変化していった。
セックスに溺れるにつれて「完全に彼のペースに」
最初のうちは、これから仕事をがんばりたい男の子を見守るお姉さん的な気持ちもあった。彼に仕事で成功してほしくて面倒を見てあげている気分もあった。が、身体の関係がはじまり、彼女が彼に夢中になるにつれて、普段の電話やメールのやりとりも彼主導になっていった。

「今度いつ会う? 来週の火曜日は? なんて私がメールすると、基本的には“また連絡するね”って返事が来るようになったんです。約束してくれないからこっちはやきもきするでしょう? でも前日くらいまで、なんの約束もないんです。たとえばその間、私のサイト構築のことでメールでやりとりをしていても、デートの予定を尋ねると“予定たったら連絡するね”と待たされる……完全に彼のペースでした」
依頼していたウェブ制作は倍額すぐに支払うことに!?
「彼に依頼していたサイト制作は、もともとはトータル10万円を、制作し終えたら支払うという約束でした。なのにメールが来て“やっぱり20万円を前払いでお願いね”って。こっちは依頼内容を変えていないのに、どう考えてもおかしいですよね?
でも私は、彼を好きな気持ちが先行してしまい“わかった”って返事をして、その数日後には20万円を振り込んじゃったんです」
その後もしばらくは順調にサイト構築が進んだ。振り込んだ1週間後には会って飲んでセックスもした。いつもと変わらず、普通だった。でも、その数日後。彼から冷たいメールが来たのだ。
「その日は雑誌の撮影で、都内のスタジオでスタイリングをしていたんです。夕方に仕事を終えて、スタジオの隅で帰宅の準備。携帯メールの着信音が鳴るのでチェックすると、ケンから来ていました。“やっぱ、サイト制作は僕には無理。お金は使っちゃった、ごめんなさい”って。私、え、嘘でしょ? もう20万円払ってるよ? と思いましたよね。
急いで荷物をまとめてスタジオを出て、駅まで歩きながら携帯に電話したけど留守電だし。“なんで? どうしたの?”とメールしても返事はないし。うん……そうそう。当時はまだLINEじゃなくてメールでした。もうLINEの人がいたころだったのかなぁ……私たちはメールでしたね」
結局、彼と再び連絡がとれたのは、それから3日後だったという。
「僕、結婚するからもう会えないです」
「メールで“ごめん、もう無理だから。それに僕、結婚するからもう会えないです”って、それだけ」
メールを見ながら、カリンさんは自分の目を疑った。

結婚するからもう会えないってどういうこと?
私という相手がいるのに、なにそれ? 誰と結婚するの?
カリンさんの頭の中はごちゃごちゃだった。ケンが自分の知らない女性と結婚することに不満を覚えた。
「自分勝手かもしれないけれど、ケンとはずっと楽しくいられそうな気がしていた」のだと言う。
突然のさよならメール、返ってこない20万円と不倫関係
それに、自分のホームページ作成を依頼していて、すでに20万円を支払っている。今、目の前から消えられては困るのだ。せめて、サイトを作らないならお金を返してほしいと思った。
「どうして?」「ちゃんと説明してくれる?」そうメールをしても、なしのつぶて。電話をかけてもかけても、留守番電話……そして、ふと我にかえった。そうだ、私も既婚者だったんだと。夫がいた、いや“今もいるのだ”。(後編へ続く)
<文/安藤房子>
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安藤房子
作家。恋愛心理研究所所長。離婚を機に日本初の恋愛カウンセラーとして独立。メールカウンセラーの草分け。心と身体両面からのアプローチで婚活・恋活女子を応援。著書に『愛されて結婚する77のルール』など。Instagram:@ando.fusako.loveブログ:恋愛心理研究所 安藤房子の「ココロとカラダのレシピ」
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