栞さん、沙苗さん、晴子さん。どこにでもいそうな3人のマダム達。「私もこうなりたい!」の声が続出した漫画、『マダムたちのルームシェア』(KADOKAWA)で繰り広げられるのは、一見ごく普通の日常です。
女友達で過ごす家の中はまるでパラダイス。クリスマスに出かけなくても、仕事でちょっと失敗しても、女友達がいれば大丈夫。おいしいごはんもお酒も、気心知れた女友達とならとびきりおいしい。食べて笑ってオシャレして、たまには少し遠出して、心の栄養を蓄える。読んでいるとこちらまで和やかな気分になって、栞さん、沙苗さん、晴子さんの3人が、隣に住んでいるような錯覚を覚えるのです。
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憧れのライフスタイル
友人や知人または一定の条件で一軒家やマンションをシェアする。いわゆるルームシェアがめずらしくない世の中。しかし聞くところによると、熟年層のルームシェアはまだ少ないのだとか。超高齢化社会となった昨今、本書には未来の憧れがぎっちり詰まっています。
もともとの友達同士が紆余曲折を経て同居。最初は沙苗さんの持ち家に離婚した栞さんが娘を連れて転がり込み、やがて夫を亡くした晴子さんが住む、という流れです。息子夫婦との同居に悩み、先に暮らしていた沙苗さんと栞さんのもとに飛び込む晴子さんが、心情的にもリアルでした。おそらく長い間専業主婦をしていた晴子さんが、息子と嫁との関係を考慮し、決断に至る姿には、沙苗さんと栞さんのみならず、読者の皆さんもグッとくるのではないでしょうか。
普通の毎日が特別な1日に
性格も三人三様。楽天家でおおらかな栞さん、知的でクールな沙苗さん、温和で穏やかな晴子さん。ひとりが提案し、ひとりが賛同し、ひとりが発展させる、小さな出来事でも3人よれば楽しさが何倍にも膨れあげるのです。
眠れない夜は3人で花札をし、雨の日は3人で純喫茶ごっこ。ていねいに淹れたコーヒーを堪能したり、手作りのホットケーキでおもてなしをしてみたり。人生の酸いも甘いも知り尽くしたマダムたちですが、心はいつまでも乙女。「もう歳だから」なんて言葉は、3人には通用しません。きれいな服もごちそうも、全部自分のためなのです。
私が特に好きなのが、マニキュアに躊躇する晴子さんに放った栞さんのひとこと。手のシミや荒れを気にしてマニキュアを拒む晴子さんですが、晴子さんの気持ちを見抜いた栞さんはこう言います。「晴子の手はとっても素敵だけど、本当は素敵とか素敵じゃないとか気にしなくていいと思うの。やりたかったらやりゃあいいのよ。じゃないと動けなくなっちゃうわ」。
私が元気なのは、あなたが元気だから

仕事で散々だった沙苗さんの行動も、共感を通りこして泣けてきます。疲労困憊の沙苗さんがスイーツを買って帰るのですが、それは自分が食べたいのではなく、スイーツをおいしそうに食べる栞さんと晴子さんが見たいから。ふたりの顔を見るだけで、自分が元気になるってわかるんですね。いろいろあってスイーツは食べられなくなるのですが、落ち込む沙苗さんに栞さんと晴子さんがとった行動は…。これまた笑いを通りこして泣けてくるのです。
歳を重ねることへネガティブなイメージを抱く人もいますし、不安に苛まれる人もいるでしょう。でも本書を読めば勇気と希望が持てるのです。アラフィフの私もあと少しでマダムな年齢、大切な女友達と育む生活を夢みて、今日を頑張ろうと思いました。
<文/森美樹>
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx
(エディタ(Editor):dutyadmin)







