生きるのに一番大切なのは何だろう。こう自分に問いかけたくなる『74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる』(すばる舎)。著者は牧師のミツコさん。現在74歳、公営住宅でひとり暮らし、収入は月7万円の年金です。こう書くと、失礼ながらあまり明るいイメージは抱けません。でも本書をめくると、こちらまで心があたたかくなるのです。「幸せの98%は大変なこと」と語るミツコさんの人生論、ちょっとのぞいてみませんか。
ミツコさんは牧師の家庭に生まれ、若くして牧師と結婚。以後47年間、夫とともに教会を運営してきました。4人の子育てを終え、病弱だった夫を見送った2016年、ひとり暮らしを開始。今は協力牧師として週2回教会へ通い、1~2ヶ月に1回、日曜礼拝の説教を担当しているそうです。他、シルバー人材センターに登録し、週に数日働いています。
こうして見るととてもアクティブですが、無理をしない姿勢と、あくせくしていない雰囲気が伝わってきて、読んでいて清々しくなるのです。それもそのはず、シルバー人材センターで働くのは「教会への献金のため」。自分の意思をまっとうしているのです。

老後のひとり暮らし、というと、不安しかない、という人もいますよね。ミツコさんの生活費の内訳を本書から紹介しますと、「住居費 約6000円、社会保険料等 約4000円、水道光熱費(平均) 約8000円、通信費 約1万円、食費・雑費その他 約4万円」となっています。いかがですか。あれ、意外になんとかなるのかも、とホッとした人もいるのではないでしょうか。
ミツコさんいわく「お金がないことを嫌だなと思うのではなく、その状態を楽しんでしまいます」。ミツコさんは「花は、ごくたまに1本しか買いません。その1本の花が買えたとき、ものすごくうれしい」と語ります。私達の周囲には物があふれ、時々、ありがたみを忘れてしまいます。たくさん買う楽しみもありますが、吟味に吟味を重ねてとっておきの物をひとつ買う、そんな尊さを味わうのもいいですよね。
ミツコさんという人
ミツコさんは牧師の家庭に生まれ、若くして牧師と結婚。以後47年間、夫とともに教会を運営してきました。4人の子育てを終え、病弱だった夫を見送った2016年、ひとり暮らしを開始。今は協力牧師として週2回教会へ通い、1~2ヶ月に1回、日曜礼拝の説教を担当しているそうです。他、シルバー人材センターに登録し、週に数日働いています。
こうして見るととてもアクティブですが、無理をしない姿勢と、あくせくしていない雰囲気が伝わってきて、読んでいて清々しくなるのです。それもそのはず、シルバー人材センターで働くのは「教会への献金のため」。自分の意思をまっとうしているのです。
月7万円でのやりくり

老後のひとり暮らし、というと、不安しかない、という人もいますよね。ミツコさんの生活費の内訳を本書から紹介しますと、「住居費 約6000円、社会保険料等 約4000円、水道光熱費(平均) 約8000円、通信費 約1万円、食費・雑費その他 約4万円」となっています。いかがですか。あれ、意外になんとかなるのかも、とホッとした人もいるのではないでしょうか。
ミツコさんいわく「お金がないことを嫌だなと思うのではなく、その状態を楽しんでしまいます」。ミツコさんは「花は、ごくたまに1本しか買いません。その1本の花が買えたとき、ものすごくうれしい」と語ります。私達の周囲には物があふれ、時々、ありがたみを忘れてしまいます。たくさん買う楽しみもありますが、吟味に吟味を重ねてとっておきの物をひとつ買う、そんな尊さを味わうのもいいですよね。
介護生活にならないために
ひとり暮らし、お金以上に心配なのが健康です。「今暮らしていけるだけのお金があれば、備えはいらない。この世は、天国へ向かっての旅の途中なのだから」というクリスチャンの考えのもと、ミツコさんも死はこわくないといいます。とはいえ「介護で迷惑をかけるのは避けたい」。おそらく皆が同意見ではないでしょうか。

そのために必要不可欠なのが健康管理ですが、ミツコさんが実践しているのは規則正しい食事と運動だけ。まとめると「3食、栄養バランスのいいものを30品目、30回噛んで食べる。早寝早起き、よく寝る」そして「起床後30分の運動」です。運動は、布団に寝たままでできるストレッチや筋トレなど。ここでも決して無理しない姿勢がうかがえます。
でも基本的なことがなかなかできない、続かない、という人もいますよね。はい、私もそうです。しかし、お金をかける代わりに心を尽くす、まず自分をもてなす、という考えにシフトすると、案外できるのではないかと本書を読んで思いました。
前を向いて1歩ずつ、悩まず生きるコツ
健康で生き生きと人生をまっとうするには、メンタルも大切。ここにもたくさんの金言がありました。まず「『人のため』ではなく『自分のため』で生きるのがラクに」。私達は誰かのために何かをすると、つい、見返りを期待してしまうのです。ところが、これは自分のため、と自分軸で行動すると、余分な感情は生まれません。そして自分にはできないと判断したら、やらない勇気も持ちたいです。自分を信じて進めば、自己嫌悪に陥ることはないでしょう。
最後にミツコさんが綴ったのが、「周囲を見渡せば、必要なものはすでに全部そろってる」。私には何もない、お金も恋も仕事もetc、こんな風に悩んでしまうのは、案外足元が見えていないからかもしれません。「暖かい家があり、健康な体があり、今日食べるご飯がある。お金も、今ある分で十分ありがたい」。
世の中には物と同様に情報もあふれています。私には何かがたりない、と焦る人は、無意識に他人と比較しているのかもしれません。あなたの人生はあなたのもの、他人は他人。「比べない!私は私」とミツコさんも自分に言い聞かせているそうです。
「幸せの98%は大変なこと」。冒頭の言葉どおり、ミツコさんも怒涛の日々を送ってきました。だからこそ、考え方、心向きひとつで幸せになれるのだと、本書は物語っているのです。
<文/森美樹>
森美樹
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx
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