岡山市内を走る路面電車「おかでん」(岡山電気軌道)には、楽しい電車が何種類も走っている。ここでは、チャギントン電車以外の魅力的な電車についてレポートしてみたい。
近未来的な低床式電車MOMO
「おかでん」にも新型で近未来的なフォルムの低床式電車が複数活躍中である。第1編成は2002年に運行を開始し、岡山にちなみ「MOMO」という愛称がある。若干仕様が異なる第2編成は2011年から走り始め、愛称は「MOMO2」だ。
車両メーカーが基本的なデザインを設計しているものの、車両の細部や車内のデザインについては水戸岡鋭治氏が担当した。短距離を走る路面電車らしからぬ優れたデザインと居住性の良さは大変魅力的で、何回でも乗りたくなる電車だ。また、個性的な「チャギントン電車」は、実は低床式電車の第3編成なのである。
路面電車とは思えないMOMOの車内

まずは、おかでんに乗ってみるため、岡山駅前電停に向かう。そして、たまたまやってきたMOMO2に乗り込んだ。低床式なのでステップはなくスムーズに乗降できる。キャスター付き旅行鞄や車椅子やベビーカーでも何の苦も無く車内へ入れるのがよい。

驚くことに車内にはテーブル付きクロスシートが並んでいる。4人ぎっしり座るとちょっと窮屈だが、岡山駅前から終点の東山・チャギントンミュージアム駅(時刻表などでは、単に東山と記されている)まで乗車しても15~18分なので許容範囲だろうか。

幸い、日曜日の午前中だったせいか相席にはならなかった。テーブルの窓寄りには囲いのあるお皿のようなものが一段高いところに配置してある。ドリンクなどを置いても転倒しないような仕掛けであろうか? そういえば、秋から年末年始、春にかけての金曜の夜、イベントとしてワイン電車がMOMOを使って運行されている。
ボックス席の他には3人掛けのロングシートや、ちょっと不思議なスペースがある。子どもが腰かけたり、ちょっとした荷物を置いたりできるのかもしれない。電車は2車体連接構造で、前半分の車内は白を基調としたカラーリング、後ろ半分の車内は黒を基調としていて対比が鮮やかだ。
東山本線の車窓から
岡山駅前を発車すると、東へ延びる広い「桃太郎大通り」の真ん中を気持ちよく進む。緑豊かな西川緑道公園を渡り、柳川の交差点では清輝橋線が右に分かれていく。次の城下は、後楽園や岡山城への最寄り電停なので、観光客らしい人が何人も降りる。電停の南側にはシンフォニーホールがある。

ここで直角に右折し、城下筋という通りを南下する。映画館や日本銀行を過ぎると県庁通り電停だ。ここまでが100円区間ということもあり、かなりの人が降りて行った。東へ歩けば県庁、西に歩けばデパートをはじめショッピング街があるのだ。車内はすっかり閑散としてしまった。

西大寺町に停まると、今度は左へ大きく曲がる。しばらく進むと、旭川を越える。中州があるので、橋を3回も渡る。広々とした眺めで、東山本線の車窓のハイライトであろう。クロスシートに座れてよかったと思う。

橋を渡ったところで小橋、中納言という2つの電停に相次いで停車する。道が狭いせいか、電停には安全地帯がない。ドアを降りるといきなり車道に出るのでクルマに要注意である。大いにスリリングな電停なので、慣れないとドキドキして降りるのをためらってしまいそうだ。
なお、中納言電停前には、岡山名物きびだんごの老舗・廣榮堂本店がある。

門田屋敷という不思議な地名の電停を過ぎると次が終点の東山である。狭い停留場ホームは柱や柵、それに屋根が赤く塗られチャギントンミュージアムの最寄り駅らしい雰囲気になっている。数名の親子連れはみんなミュージアム訪問客のようだ。

電停のすぐ手前には路面電車の撮影にお誂え向きの歩道橋があったので、しばらく路面電車を撮影したのち、ミュージアムを訪れた。電車は左前方にある車庫に入るか、あるいは電停のすぐ先で、岡山駅前行きのホームに転線して折り返していく。
清輝橋線のミニトリップ

岡山駅前に戻ってから、今度は清輝橋線の電車に乗車した。目下、コロナ禍の影響で特別ダイヤが組まれていて、土休日の昼間は15分毎である。ちょうど清輝橋行きの電車が停まっていたので、車種の選り好みをせずに乗車した。
オーソドックスな路面電車で、ステップを上って車内へ入るとロングシートだった。それほど混んでおらず、電車は淡々と進んでいく。柳川の交差点で清輝橋線の岡山駅前行きとすれ違う。何とMOMOだった。次の清輝橋線は、これになるのだろうか?

郵便局前に停車。清輝橋線もここまでが100円区間だ。東山本線の県庁通り電停が近いということは繁華街の最寄り駅の近くなのであろう。大勢下車して、車内は、筆者ともう1人、いかにも鉄道ファンという感じの男性だけになった。
広々とした柳川筋という通りを南下、10分も経たないうちに終点・清輝橋に到着した。複線の線路が単線になった状態で片面にホームがある簡素な終着駅だった。といっても市街地の真ん中にあるので、ちょっと中途半端な終わり方だ。

乗ってきた電車を見送って待つこと10分余り、予想通りMOMOが到着した。帰路は、クロスシートでゆったりとした旅気分を味わいつつ岡山駅前に戻った。
おかでんの延伸計画
岡山電軌に関しては、清輝橋線の大雲寺前電停から東に向かい、2023年にも開館する岡山芸術創造劇場前を通り、東山線の西大寺町とつないで単線ながら環状線を造る計画および、現在の岡山駅前電停から100mほど延伸してJR岡山駅前広場に乗り入れる計画がある。利便性の向上は大歓迎である。
おかでんの普通の電車には、個性的なラッピング車両が何両も存在している。
KURO

現役最古参の車両をリニューアル。烏城(うじょう)と呼ばれる岡山城にちなみ「カラスの濡れ羽色」の黒いボディだ。デザイン担当は水戸岡鋭治氏。目下、竹久夢二生誕130年記念号として運転中だ。
東武日光軌道線復元号(3000形)

廃止となった東武鉄道の路面電車。東武から各地に譲渡された車両で現存しているのは岡山に残る2両のみ。東武時代の塗装をまとい、懐かしい姿で市内を走っている(取材当日は、東山車庫の奥深くで休んでいたため撮影できず)。
たま電車

和歌山電鐵で人気のたま駅長とたま電車。和歌山電鐵は岡山電気鉄道の子会社という縁で、和歌山のPRを兼ねて「たま」のラッピング電車を走らせている。これも水戸岡氏がデザインしている。
おかでんは、清輝橋線(柳川~清輝橋)が1.6km(ただし、すべての電車は東山本線の岡山駅前発着であり、起点から終点までの走行距離は2.1km)とミニサイズで日本最小規模の路面電車といわれている。
にもかかわらず、チャギントン電車やMOMOなど意欲的な車両投入や路線延伸計画もあり活発な動きを見せている。乗るもよし、撮影するもよし、楽しい「おかでん」には明るい将来が約束されているようだ。
執筆者:野田 隆(鉄道ガイド)