2022年9月23日に武雄温泉駅~長崎駅間の開業が決まった西九州新幹線「かもめ」。準備は着々と進み、3月19日には大村車両基地にて車両が公開された。取材してきたので、詳細をレポートしよう。
西九州新幹線の概要
西九州新幹線は、1973年に整備計画が決定された九州新幹線西九州ルート(福岡市~長崎市)のうち、2022年9月23日に開業する武雄温泉駅(佐賀県武雄市)~長崎駅(長崎県長崎市)の路線名称である。全長は66km、およそ30分で走破する予定だ。
列車名は「かもめ」。現在、博多~長崎を結んでいる特急「かもめ」を引き継ぐ。武雄温泉駅では在来線と同じホームでの対面乗換となり、「リレーかもめ」(仮称)との乗り継ぎで博多駅~長崎駅の所要時間は約1時間20分、現行の特急「かもめ」よりも30分ほどの短縮となるであろう。
大村車両基地完成記念式典

西九州新幹線「かもめ」は、東海道・山陽新幹線で使用中のN700Sを基本にアレンジを加えて新造した車両で6両編成4本(24両)が配置される。その寝ぐらとなるのが大村車両基地で、西九州新幹線の新大村駅から北に少し向かったところに設置された。
このたび、基地ができ上がり、3月19日に大村車両基地完成記念式典が挙行された。式典には農林水産大臣、国会議員10名ほど(代理を含めて)、長崎県知事、長崎市長、大村市長をはじめ沿線自治体の首長など行政関係者が多数列席した。地域の関心の深さ、期待の強さがうかがわれる。

とりわけ、大村市長は「市内には長崎空港、長崎自動車道がすでにあり、このたびは西九州新幹線が通り、新大村駅のみならず車両基地まで設置され、高速交通網の要の市として発展していくことを期待する」と話していたのが印象的だった。
新大村駅から長崎空港までは空港連絡バスが運転されると思われる。これまで長崎駅前から45分ほどかかっていた所要時間がどのようになるのか気になるところだ。
大村車両基地の概要と内部の様子

大村車両基地は、総面積およそ10万平方km、東京ドームの2倍以上の広さだ。南北に1kmほどの長さで、幅は最大で170mくらい。敷地内には、事務所の他、主要な建物として仕業・交番・全般検査庫(仕交検庫)および台車振替・臨時修繕・車輪転削庫(台振庫)がある。

車両は、2日に1度行う仕業検査、走行距離3万kmまたは30日以内に行う交番検査があり、これらは仕交検庫でなされる。60万kmまたは18カ月以内に行う台車検査では、台車を車体からはずすため台振庫にて行う。
さらに、120万kmまたは36カ月以内には全般検査があり、各種検査のほか、車体塗装を行い、新車さながらの状態となる。


N700Sは、日立製作所の笠戸事業所から海路で運び込まれた6両1編成のみが仕交検庫に留置中だった。今後、残りの3編成が同じように海上輸送で運び込まれる予定である。
「かもめ」編成を検庫内で間近に見ることができたが、毛筆で書かれた「かもめ」のロゴは印象的だ。車体側面の行先表示は長崎行きとなっていて、今にも走り出しそうな雰囲気である。
N700S「かもめ」の車内

車内は、3号車と4号車が公開された。「かもめ」は、1号車から3号車までの3両が指定席で、通路を挟んで2人掛けのシートが並ぶ。号車により、シートの柄が異なる。
今回取材できた3号車は唐草。ちなみに1号車は菊大柄、2号車は獅子柄となる。3号車に関しては、落ち着いて洒落た雰囲気の車内が好ましい。車椅子スペースも従来の車両に比べてたっぷりとってあるので、ゆったりと過ごせるのではないだろうか。


4号車から6号車までは自由席車で、通路を挟んで3人掛けと2人掛けのシートが並ぶ、新幹線車両ではお馴染みの配置だ。黄色のシートがずらりと並ぶと明るく軽快な感じがする。
また、車端部には大型のスーツケースなどを収納できる荷物置場があるので旅行者には喜ばれるであろう。車椅子利用が可能な大型の多目的トイレがあるのは新型車両ならではのことだ。

水戸岡鋭治氏がデザインしたので、貫通扉脇の壁面には洒落た抽象画が飾られたり、トイレ脇の壁面にもカラフルなデザインがワンポイントで配置されたりと、ゆとりの車内空間となっているのはさすがだ。実用的なN700Sもデザインの仕方によっては別の車両のように変身する。
30分という短い乗車時間ではあるが、楽しい体験が待っているようだ。9月23日が待ち遠しい。
取材協力=JR九州、鉄道・運輸機構
執筆者:野田 隆(鉄道ガイド)