コロナ禍に突入してからというもの、非対面非接触の「無人レジ」「無人ホテル」「無人コンビニ」など、「無人○○」は続々と増えています。そんな中、2021年12月に池袋で無人の古着屋「SELFURUGI(セルフルギ)」がオープン。ついにアパレルにも無人のお店が出てきたのか! と思いつつ、ふと「試着中の防犯はどうなのだろう?」「万引きとか大丈夫?」といった素朴な疑問が……。
そこで実際にお店へ行き、安全対策を始めとしたお店の作りや、そもそもお店が誕生するきっかけなどを、代表の南雲宏樹さんとマーケティング統括の熊谷一誠さんに聞いてきました!
通りがかりにコンビニ感覚で立ち寄れる
池袋と目白の間で、最寄り駅は雑司ヶ谷。明治通り沿いの黄色い看板のお店が、無人の古着屋「SELFURUGI」です。驚くことに、365日24時間オープンしているのだとか。
大通りに沿ってはいるものの、この辺りは閑静な住宅街。近くには日本女子大学や学習院大学といった由緒ある学校が建ち、どことなく上品で知的な雰囲気が漂う街です。
「古着屋」と聞くと、東京なら高円寺や下北沢など個性が立った街にたたずむ印象ですが、「SELFURUGI」自体がとってもシンプルな雰囲気。この閑静な街にとてもなじんでいます。
「もともと、とがったイメージの古着屋を目指していないんです。家族連れや年配の方でも老若男女幅広く楽しんでもらえるお店をイメージしています。夜中も開いているので、通りがかりにちょっと立ち寄っていただくなど、コンビニ感覚でお買い物を楽しんでいただきたいです」(南雲さん)
大人向けのきれいめ服も2000円~3000円
そろえている古着も、「ZARA」や「23区」などお手軽なものから大人ブランドまで、誰もが耳にしたことがある“きれいめ系”の服がほとんど。しかも価格帯は2000円~3000円が多めで、ヘビロテできそうな服がとってもリーズナブルに手に入ります。
「仕入れにはこだわっていて、国内の地方自治体と提携している廃品会社で1キロ単位という小ロットで仕入れています。1枚1枚状態を目でチェックして、売れるレベルのきれいなものだけを厳選。週に2回は仕入れに行って、定期的に商品の入れ替えをしています」(南雲さん)
アパレル業界では異例の「廃棄ゼロ」を目指す
商品の状態だけでなく、特に「SELFURUGI」がこだわるのが、服の廃棄。
「アパレル業界は環境負荷でいうと、1位2位を争うほどCO2の排出量が多い産業。服の大量廃棄は大きな問題です。私たちは廃棄予定の古着をまとめて販売することで環境に貢献し、私たち自身も廃棄ゼロを目指して店舗運営をしています。
だからこそ、自分たちの目でしっかりチェックして選んだ商品だけを仕入れて、必要な人にお届けできるようにしています」(南雲さん)
古着の仕入れの方法には、海外から質を問わずに安く大量に仕入れるやり方もあるそう。しかし、その半分はほぼ売り物にならず、廃棄になってしまうのだとか。結局廃棄のコストやクリーニング代が発生し、商品を安く売ることが難しくなることもあるそう。
その分、「SELFURUGI」はクリーニング済みの売れる物だけを仕入れているので、結果的に商品を安く提供することができるのです。
ちなみに、もし今後在庫となってしまった衣服は、「認定NPOブリッジ エーシア ジャパン」が運営する古着リサイクルプログラム「フルクル」を通して寄付するのだとか。衣服の廃棄ゼロを徹底的に目指しているのですね。
無人なのになぜか温かい。“人感”を感じさせる店舗づくり
さて、「SELFURUGI」の最大の特徴はやはり「無人である」ということ。そもそもなぜ無人なのでしょうか。
「無人運営にした理由は大きく2つあります。1つはやはりコロナ禍という世の中の状況があります。非接触非対応で安心してお客様にお買い物をしていただきたいと考えて、無人にしました。
あともう1つは、スタッフのリソース不足でした。今も少人数で運営していて、副業として関わっているスタッフもいます。できる限り工数をかけないような運営方法ということで、無人販売になったんです」
とはいえ、店舗に来ると、なぜか無人という感じがしないのが不思議なところ。もちろん店員さんはいないのですが、軽快な音楽と白と黄色を基調とした明るい店内、そして店の奥にある「コミュニケーションボード」が“人感”を醸し出してくれています。
「コミュニケーションボードでお客様の声を伺って、その名の通りコミュニケーションを取るために設置しました。書いていただいたご意見には、一つ一つお返事を書かせていただいています。こんな感じで、無人だけど“人感”を出せるような仕掛けをこれからも増やしていきたいと思っています」(熊谷さん)
なるほど、人がいないのになんだかホッとするのは、こういった細かい工夫や気配りがあるからなのですね。
365日24時間営業、気になる防犯対策は?
ただ、無人運営でどうしても気になるのが「防犯」の観点。「SELFURUGI」は365日24時間開いています。昼間はともかく、夜は少し怖いような……。それに万引きも心配です。
「店内に4か所防犯カメラを設置しています。日中は上のバックヤードでスタッフが確認をしています。レジの横の画面にもカメラの様子が映るようになっていて、お客様もその場で見られるようになっています。ただ、試着室は今の段階でまだ改善の余地がある状態で、今後は店舗のドアに鈴をつけて、入店者が来たときに気づけるようにしたり、試着室に鍵を設置したりなど、これから強化していく予定です」(南雲さん)
大通りに面した立地やガラス張りの外装に加えて、この界隈は治安が良いこともあり、今のところは困った事態にはなっていないとのこと。2か月目の2月現在、万引きもゼロ。もし試着が心配なときは、友人や家族などを連れて複数で入店するとより安心かもしれません。
全身トータル6000円、アラフォー女性向け春コーデ
現在、店舗内の商品のラインナップはメンズがやや多め。ですが、土地柄ファミリーや女性客も多いことから、どんどんレディースやキッズの商品も増やしているのだとか。
そこで、せっかくなので熊谷さんにアラフォー女性向けの古着コーデをお願いしてみました。
「題して『春の大人ワントーンコーデ』。取り入れやすいアースカラーでまとめつつ、明るいイエローグリーンのリュック(Longchamp・1000円)を差し色にしています。一部にチェックのプリーツが入ったユニークな『Mystrada』のデザインスカート(2000円)に『23区』のパーカ(3000円)を合わせて、カジュアル過ぎないイメージにしています。パーカは少し長めでポケットがないタイプ。きれいめなスカートにも合わせやすく、長く着まわせる1枚です」(熊谷さん)
こちらのコーデアイテムの平均額は2000円。信じられない価格です……! お手持ちの軽やかな春ブーツや明るい色のスニーカーを合わせると、よりコーデの幅が広がりそうですね。
古着を選ぶことで「環境に良いことをした」と思えたら
新しい販売方法や環境に意識を向けるなど、新時代のショップを感じさせる「SELFURUGI」ですが、今後は、ネットストアの充実と、大型ショッピングモールのショップインショップでの出店、またフランチャイズ展開も検討しているそう。
「店名の『SELFURUGI』は、自分自身という意味の『Self』と『古着』を合わせた造語ですが、自分のペースで商品を選び、自分らしさを表現できる古着と出会っていただきたいという想いから名付けました。お店を広げていきながら、ぜひたくさんのお客様に、自分にとって『良い服』と出会っていただきたいと思っています。
また、廃棄される服を少しでも減らして、みんなで環境を良くしていくという意識を店舗として浸透させていきたいですね」
なんという意識の高さ……! と筆者は驚いたものの、お二人は「今SDGsとかいろいろと言われていますが、私たちはきれいごとでやるつもりはないです」と、至って自然に話してくださいました。
積極的に古着を選ぶことで「私も環境に良いことをした」と思えたら、服を買うこと自体にまた別の付加価値がついて、消費者にも喜びを感じられるかもしれませんね。開店1カ月で早くも黒字化を達成したという「SELFURUGI」、これから店舗が増えていくのか、楽しみです。
【SELFURUGI(セルフルギ)】
池袋から徒歩約10分の場所にある、店員がいない「無人」の古着店。カジュアルブランドからハイブランドまで、レディース、メンズ、キッズと世代や性別を問わず、幅広いラインナップが揃う。
<取材・写真&文/関由佳>
(エディタ(Editor):dutyadmin)





