東京の真ん中を東西に貫く地下鉄、都営新宿線。新宿駅では京王新線と直通し、多くの電車は笹塚駅から千葉県の本八幡駅までを走る。また、新宿駅と住吉駅の間では13駅中10駅で他線との乗り換えができる便利な路線でもある。
1. 1372mmという特殊軌間を採用している新宿線
都営新宿線の軌間(線路幅)は、JR在来線の1067mmでも新幹線と同じ1435mmでもなく、1372mmという特殊な軌間を採用している。新宿駅でつながっている京王線と直通運転するために線路幅を合わせたからだ。

京王線は元々は路面電車であり、都電(当時は東京市電)と直通運転ができるように路面電車と同じ線路幅を採用したいきさつがある。したがって、現在1372mmを採用している他の鉄道路線は、東急世田谷線、都電荒川線、函館市電といずれも路面電車ばかりだ。
歴史を辿ればスコットランドの鉄道が1372mmだったが、現在は1435mmに改軌していて、現存するのは日本の路線のみである。
2. 都営なのに千葉県にも駅がある

都営新宿線は篠崎駅(江戸川区)を出ると江戸川の下をトンネルでくぐって千葉県に入り本八幡駅が終点だ。都営地下鉄の駅の中で唯一東京都以外にある駅である。なぜか?

もともと都営新宿線は1972年に都市交通審議会が運輸大臣(当時)に提出した答申で計画された10号線の一部で、千葉ニュータウンへのアクセス路線のひとつとして構想された。そのうち、本八幡までは東京都交通局が、その先は千葉県が県営鉄道として建設することになった。
東京都は割り当てられた区間の建設を終えたのだが、その後の景気の落ち込みや需要予測、高騰した建設費などから2013年に千葉県営鉄道の路線計画を取りやめることになったのである。
3. 急行運転を行っている地下鉄

千葉ニュータウン、さらには成田空港へのアクセスの構想もあったので、当然特急や急行など速達列車の運転が予定されていた。それに合わせて、列車の追い抜きができるように、あらかじめ岩本町駅、大島駅、瑞江駅には待避施設を造っておいたのである。
これを有効活用するためと、都心と千葉を結ぶルートが複数あり、他のルートとの競争を優位に進めるために設定されたのが都営新宿線の急行運転なのだ。
停車駅は、新宿駅を出ると、市ヶ谷駅、神保町駅、馬喰横山駅、森下駅、大島駅、船堀駅、終点の本八幡駅である。各駅停車では、新宿~本八幡を40分かけて走破するところ、急行の所要時間は29分だ。途中、岩本町駅、瑞江駅で各駅停車を追い抜く。
かつては、京王相模原線の橋本駅と本八幡駅を直通していたこともあったが、現行のダイヤでは笹塚~本八幡の運転が基本で、京王相模原線に直通する急行は僅かな本数のみである。平日の急行は、本八幡10時00分発から16時00分発まで20分毎の運転だが、土休日は運転時間帯が拡大している。
4. 京王線との直通運転

都営新宿線の起終点である新宿駅で折り返す列車は昼間は4本に1本しかなく、残りの列車は、新宿駅から京王新線に乗り入れて笹塚で折り返すものと橋本まで直通するものが主流だ。新宿~笹塚間を都営線の一部と誤解している利用者がいるが、れっきとした京王線の区間なので都営フリーパスなどは利用できない。
京王線への直通は、橋本駅や京王多摩センター駅のように相模原線直通が主体だが、土休日の朝に高尾山口行きの急行が1本ある。本八幡7時00分発、高尾山口着8時26分で、沿線から行楽で出かける人には重宝しそうだ。
5. 京王線からの乗り入れ車両
都営新宿線を走っている電車は、東京都交通局の新宿線専用の10-300形のほか、京王電鉄から乗り入れてくる9000系、5000系(2代目)がある。

5000系は、京王ライナーにも使われるロングシート・クロスシート転換可能なデュアルシートであるが、都営線内はロングシートで走っている。土休日の高尾山口行きあたりはクロスシートで走ってほしいものだが、無理なのだろうか?
6. 他線との乗換駅

都心を東西に走る都営新宿線は、新宿駅から住吉駅までの13駅中10駅が他線との乗換駅だ。この中で他線と駅名が異なるものが3つある。
小川町駅は丸ノ内線と千代田線との乗換駅だが、丸ノ内線は淡路町駅、千代田線は新御茶ノ水駅と全く異なる駅名だ。次の岩本町駅は日比谷線、JR線ともに秋葉原駅だ。乗換駅といっても一旦地上に出て歩かなければならないのが、やや面倒である。
馬喰横山駅は、同じ都営線なのに浅草線の駅は東日本橋駅でやや離れているため一旦改札口を出ての乗り換えだ。JR総武線(快速線)の駅は馬喰町駅と似てはいるものの同じ駅名ではない。
7. 「バカの壁」といわれた九段下駅ホーム

隣り合っているのに経営主体が異なるために直接行き来できなかった都営新宿線と東京メトロ半蔵門線の九段下駅。とくに都営新宿線の5番線(新宿方面行き)と半蔵門線の4番線(押上方面行き)は同じホームなのに階段を上下し5分近くかけて乗り換えを行っていた。
ホームの真ん中に壁があって遮っていたためで、これを当時の猪瀬都知事は「バカの壁」と呼んでいた。知事の決断でこれを撤去したため、九段下駅の4&5番線はお互いの乗り換えが数m歩くだけと極めて簡単になった。都営線と東京メトロと違いがあっても中間改札ひとつない。やれば何でもできるのだ。
8. 川の上にある東大島駅

東大島(ひがしおおじま)駅は旧中川の上にある橋上駅だ。出入口のうち西側(大島口)は江東区、東側(小松川口)は江戸川区になり、ホーム上に江東区と江戸川区の区界がある。もっとも、駅の住所は、駅長室が江東区側にあるので江東区大島となっている。

9. 地上を走る区間

本八幡行きの電車は、東大島駅の手前で地上に出る。東大島駅は地上にある駅だ。しかも発車すると電車は地下に潜らないで、そのまま荒川と中川を渡る。500mほどの長さだが、強風対策として壁ができている。したがって、車内から川を眺めづらくなっていて、これだったらいっそ地下を走ってくれてもよかったのにと思ってしまう。
10. 1往復でモトが取れるワンデーパス

春、夏、秋の期間限定、しかも土休日限定で発売される「都営地下鉄ワンデーパス」は、発売日に限り大人500円で都営地下鉄全線乗り放題だ。都営新宿線の森下から本八幡までが最寄り駅であるならば、新宿まで1往復するだけでモトが取れる。新宿~森下は片道280円(IC272円)だからだ。
森下の1つ新宿寄りにある浜町駅からだと、新宿~浜町が220円(IC220円)なので、単純に1往復するだけであれば損になる。都営地下鉄の運賃は東京メトロに比べると割高なので、こうした情報を知っておくといいかもしれない。
以上、都営新宿線に関するトリビアを10項目取り上げてみた。乗車するときの参考になれば幸いである。
執筆者:野田 隆(鉄道ガイド)