恋バナ収集ユニット「桃山商事」の代表で、これまで1200人以上の恋愛相談に耳を傾け、そこから見える恋愛とジェンダーの問題についてコラムやラジオで発信してきた清田隆之さん。
最新の著書『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』で清田さんは10人の「一般男性」たちに取材しています。彼らが「ありのまま」を語る記録からは、世にも不思議な「一般男性」という存在の実像や内実が浮かび上がってきます。

そこで、同書から東京大学の学生・有村隼人さん(仮名)のインタビューを紹介。清田さんは有村さんにインタビューをすることで「否が応でも競争というものに囚われてしまう男性性の重要な部分が見え隠れしているような気がした」といいます。
(以下、インタビューを同書より抜粋。4回シリーズの#1)
難関中学に入ったら、まったく通用しなかった
両親と兄の4人家族で育ち、幼少期はごく普通の子という感じだったと思います。2つ上の兄が中学受験をした流れもあって僕も塾に通うことになったんですが、本格的に勉強し始めたら成績がめきめき伸びて、晴れて中高一貫の難関校に合格しました。元から運動が得意で、球技でも徒競走でも負け知らずのところに、勉強でもトップを極めてしまった。
合格したときはいわゆる“天狗”になっていたように思います。
ところがいざ入学してみると、自分より勉強ができる人がゴロゴロいて、成績は下位を低迷。おまけにホームルーム委員の仕事では忘れ物が多かったり、ファシリテーターとして会議をうまく回せなかったりと、自分の仕事のできなさに愕然としました。元から負けず嫌いなタイプだっただけにプライドはズタズタに傷つき、天狗の鼻が完全に折れた。これが第一の挫折です。
高校受験では、トップ校に入れず
でも、そんな敗北続きの自分が許せなかったし、認めたくもなかったので、あえてエスカレーター式に行ける高校には進まず、県内トップの公立高校を受験し直すことにしました。猛勉強し、低迷していた順位も少しずつ上昇していったのですが、結局その学校には届かず、トップ校の滑り止め的な位置づけの私立高校に入学することになりました。プライドはまたもやズタズタに……。これが二度目の挫折です。
入った高校はとにかく進学実績を作るために「勉強第一!」というところで、入学してすぐに担任の先生から「お前ら部活になんか入るなよ」と宣告されたほどでした。そんなことしてる時間があったら勉強しろって、なかなかすごいことを言いますよね(笑)。
「東大以外あり得ない!」ところが…
この環境ではプライドを挽回する手段が勉強しかなかったし、もちろんこのままでは終われない、どうせやるなら上を目指そうということで特別進学コースに入り、合宿などにも参加しながらひたすら頑張りました。そして成績も順調に伸び、トップ集団の次くらいには名前が出るようになった。この頃にはもう「東大以外あり得ない!」という気持ちでしたね。
そして迎えた高3のセンター試験。結果は……まさかの惨敗でした。東大に合格するためには900点満点中800点は欲しいところなんですが、結果は600点台中盤で、2次試験を受けるまでもなく不合格が確定的となった。
早慶を目標にする自分への絶望感
高校生になってからは5時に起きて12時に寝るという毎日で、その間ずっと勉強してきました。漫画もゲームも恋愛も、娯楽という娯楽をすべて止めて勉強に捧げてきたんです。なのにそのストイックな3年間がまったく通用しなかった。
とにかく絶望でしたね。それで東大はあきらめ、早稲田や慶應に目標を切り替えたんですが、早慶の問題集を解いているときの「何やってるんだろう俺は」って無力感がすごくつらくて……。同じくセンター試験で失敗したクラスメイトと空き教室で一緒に号泣したりもしました。これが第三の挫折です(つづく)。
<文/清田隆之(桃山商事)>
清田隆之
1980年、東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。近著に『さよなら、俺たち』『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』など
(エディタ(Editor):dutyadmin)

