寒いこの時期は、猫がストーブを占領することも多いもの。その姿はほほえましく映りますが、ちょっと目を離したスキに被毛が焦げてしまった…なんていうことも。
サバトラのミロくん(正式名ミロルナくん)の飼い主、eiru4さんは、ふだん脱衣場のドアを締め切り、小さな遠赤外線の電気ストーブを使用。しかし、この日は少しだけドアが開いていたようで、ミロくんが侵入。被毛が焦げてしまいました。
遠赤外線の電気ストーブで猫が焦げてしまった!
「慌てて焦げたところを確認し、水で濡らしたタオルで冷やしました。被毛をかき分けてみたら焦げたのは表面だけだったので、ホっとしました」(eiru4さん)
eiru4さんはその後、すぐに電気ストーブをセラミックヒーターに変更。念のため、現在も脱衣場のドアを締め切りながら使用しています。
こうしたストーブにまつわる事故はSNSでも数多く報告されていますが、一体なぜ猫は自分の体が熱くなっていることに気づかず、被毛が焦げるまでストーブの前にい続けてしまうのか…。
今回はそんな疑問を解決すべく、『猫の急病対応マニュアル』などの著書がある、株式会社 WOLVES Hand 取締役CTO・目黒アニマルメディカルセンター院長の佐藤貴紀さんに取材。やけど時の対処法や様々な暖房器具を使用する際の注意点などもうかがいました!
なぜ猫は体が熱くなっていることに気づかないの?
猫がストーブに近づきすぎて焦げてしまうのには、様々な理由があります。そのひとつが、被毛が密生していて、熱を感知しにくいから。
「決して皮膚が熱を感じないわけではありませんが、気づいた時には毛の中の温度が上昇しており、熱が逃げにくい構造でもあるため、皮膚の損傷を起こします」(佐藤貴紀院長 以下同じ)
特に冬場は寒さに対応するために上毛と下毛を併せ持つ「ダブルコート」になる猫が多いことから、毛の中により熱がたまりやすくなるのです。
そして、表皮が薄いことも理由のひとつ。
「猫の皮膚は表皮、真皮、皮下組織で構成されていますが、一番外側の皮膚は0.1mmとかなり薄いので損傷しやすいのです。また、皮下に液体を多く含んでいるため、毛の中の上昇した温度を脳が感知するのに時間がかかることも理由のひとつとして考えられます」
体が熱くなっていることに気づきにくいからこそ、時には被毛が焦げるだけではなく、やけどをしてしまうことも。そんな時は、熱傷の深さによって必要な処置が異なります。
いざという時に役立つ「やけどの症状と対処法」
やけどは熱傷の深さによって、4つのステージに分けることができます。
・Ⅰ度
最も軽いⅠ度は皮膚の表面のみが損傷した、やけどのこと。「皮膚が赤みを帯びている状態。この場合は、やけどに気づいた時点で流水で冷やすか、流水で濡らしたタオルで覆いましょう。冷却時間は10~30分ほど。受傷後、約2時間程度であればこの処置が適切です」
その後は必ず動物病院へ。適切に管理すれば1週間以内に治癒します。
・Ⅱ度
表皮や真皮の一部が損傷したⅡ度のやけどは、熱傷が部分的であればⅠ度と同じ処置で構いませんが、広範囲に及ぶ場合は濡れたタオルで覆い、早急に動物病院へ。
「基本的に痛みは伴いませんが、腫れたり水ぶくれができたりし、重症化していると皮膚がめくれます。広範囲の場合は全身性の炎症ですので、早期に治療が必要です」
・Ⅲ度
Ⅲ度だと熱傷が表皮や真皮、皮下組織にまで及ぶため、知覚が消失。
「疼痛(とうつう)が生じないと言われており、ここまで行くと気づかず、どんどんと悪化してしまいます」
この場合は濡らしたタオルで冷やしながら、すぐに動物病院へ。
「皮膚が乾燥しがちになるため、濡れたタオルをかけて保温しましょう。事前に電話をしておくと、対処も早くなります。熱傷が体表の20%以上に及ぶと全身性反応を引き起こすため、内科治療を行う必要も出てきます」
・Ⅳ度
そして、熱傷が筋や筋肉など、より深い部位にまで及んだⅣ度のやけどは、かなり危険な状態。
「一刻も早く動物病院へ。運ぶ際、水分などが摂れる場合は摂らせつつ、流水で濡らしたタオルで体を覆い、冷やしながら連れて行きましょう」
ストーブは深刻なやけどを引き起こしてしまう可能性がある暖房機器だということを理解し、万が一の時に役立つ知識も身につけていくことが大切。
「猫がいる家ではなるべくストーブを使用しないようにしたり、ストーブに近づけないような工夫をしたりしてほしいです」
ファンヒーターや電気カーペット、床暖房を使用する際の注意点

安全面を重視し、ストーブではなく、電気カーペットやファンヒーター、床暖房などで愛猫に暖をとってもらっている猫飼いさんも多いはず。しかし、その場合にも様々な配慮が必要です。
例えば、ファンヒーターを使用する時は、同じ位置に愛猫が居続けない工夫を。
「エアコンをつけ、ヒーターには近づかせないようにしたいところです」
エアコンは猫にとって一番安全な暖房器具ですが、熱中症にならないよう、しっかりと温度管理していきましょう。
電気カーペットや床暖房などは一見、安全そうに思えますが、猫が動かないと熱が逃げないため、やけどだけでなく、熱中症にも注意。
「猫は呼吸や体を舐めた時の気化熱で熱を外に逃がしますが、もともと熱が逃げにくい構造になっているので、熱中症になりやすい。熱中症を防ぐには、水分をしっかり摂取させることが重要。最低でも50ml×体重は摂ってもらいたいです」
静電気を減らすよう湿度を保ってあげて
また、電気カーペットを使用する際は、乾燥時に起きる静電気にも注意が必要。
「人と同様に、少しの痛みが発生する可能性があります。猫は痛みが苦手なので、そうした体験をすると静電気が起きた場所などを嫌いになってしまったり、ストレスで膀胱炎などになってしまったりする可能性があります」
静電気を減らすには、部屋の湿度を45-55%に保つことを意識していきましょう。
なお、ペット用のホットカーペットは安全性が高いものの、低音やけどの可能性があるため、猫が動ける環境スペースを作ってあげることが重要。
「44℃の暖房器具に3〜4時間程度触れると、低温やけどすることが分かっています。猫の体温は38度なので、それ以上であれば低温やけどの可能性はあります。猫が暑くなっていないかを、定期的にチェックしていきましょう」

適温な空間を飼い主さんが作ってあげて
身近にある暖房器具は、一長一短。それらをどう活かし、安全で快適な暮らしをさせてあげられるかは私たち飼い主の手にかかっています。
「猫はこたつで丸くなると言うように、寒すぎても活動性がなくなり、尿石症や膀胱炎などのリスクが生じてしまいます。ですから、適温な空間を飼い主さんがしっかりと作り、ストレスがないように過ごさせてあげてください」
愛猫に安全な冬越しをさせてあげるためにも今一度、使い方も含め、いつもの暖房器具を見直していきましょう。
【佐藤貴紀】麻布大学獣医学部卒業後、西荻動物病院、dogdaysミッドタウンクリニックにて副院長をつとめる。また、獣医生命科学大学内科学教室において循環器を主に学ぶ。2008年7月に「白金高輪動物病院」開業。2011年4月に「中央アニマルクリニック」開院。現在、株式会社WOLVES Hand 取締役CTO、目黒アニマルメディカルセンター院長を兼任。
専門は「循環器」。「日本獣医循環器学会認定医」の一人 。医療YouTube、イチナナ生配信「名医のいる相談室」で活躍中。著書に『小学館ジュニア文庫 動物たちのお医者さん』『猫の急病対応マニュアル』など。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
(エディタ(Editor):dutyadmin)



