「物心ついた頃から、ずっと猫が好きでした。だから愛猫がないがしろにされているのが許せませんでした」
そんな猫愛を口にする青木ゆうこさん(仮名・31)は、愛猫に対する夫・駿さん(仮名)の態度に苛立ち、離婚を選びました。
夫の不倫未遂を機にペット可物件へ引っ越し
ゆうこさんと駿さんは5年前に結婚。新居はペット不可アパートでしたが、実家でずっと猫と暮らしていたゆうこさんは猫がいない生活に耐えられなくなり、猫との生活を夢見るようになりました。
ペット可のアパートに引っ越したいと相談したとき、駿さんは最初、強く反対。これまでに動物と暮らしたことがない駿さんは「何十年経って、どうしても欲しくなったら迎えればいい」と言いました。でも、ゆうこさんは納得できず……。自身が子どもを産めない身体であったこともあり、無償の愛情を注げる存在が欲しいという思いも日に日に強くなっていきました。そんなときに発覚したのが、駿さんの不倫未遂。
「マッチングアプリで他の女の子と連絡を取っていました。彼女はいるけど、結婚してないよと言いながら、女の子にいやらしい写真を送ってもらってたんです……」
離婚も考えましたが、まだ新婚だったこともあり、話し合い、乗り越えることに。
「本当ごめん。なんでも言うことを聞くから……」と言いながら泣く駿さんを見て、ゆうこさんの頭にある案が浮かびました。
「夫が折れてくれるのは今しかないと思ったので、ペット可アパートへの引っ越しを条件にこの一件を許すことにしました」
夫にけなされる愛猫に自分を重ねてしまって…
数か月後、2人はいままで住んでいたアパートより見た目も内装も少し古いペット可アパートへ引っ越し、動物保護団体から1匹の子猫を譲り受けました。駿さんは最初、あまり関心を持っていませんでしたが、ゲーム中などに膝に来て眠る子猫と触れ合ううちに、積極的にかわいがるようになっていきました。
「2人が触れ合っているところを見るのが好きでした。好きな人が好きな生き物と楽しそうに笑っている。これ以上の幸せはなかった」
ところが、猫が成長し、できることが増えてくると、駿さんの態度に変化が。自分の思い通りにならないと、バカにするような言葉を猫にかけるようになったのです。
「バカだねえとか、嫌いだよとか、そういう悲しい言葉を愛猫に向かって言っていました。本人は冗談のつもりだったのか、笑いながら言っていましたが、大好きな人からそんな言葉を言われたら……と、愛猫の気持ちを想像してしまい、胸が痛かった」
そう感じたのは、ゆうこさん自身も日常の中で駿さんからぞんざいな言葉をかけられていたから。
「夫は笑いながら冗談のつもりで人をけなす。役に立たないね、とか、常識がないよね、とか言われて、私も傷ついていました」
見下される自分と愛猫……。いつしかゆうこさんは叱られる愛猫に自分を重ねていたのです。
夫よりも愛猫を選んだ日

そんなある日、じゃれていた猫が手を強めに引っ掻き、駿さんが出血。すると、駿さんは猫の頭を軽く叩きました。そして、その日以降、イタズラをされたり、自分にとって気に入らないことがあったりすると頭を叩くようになったのです。
「そしたら、愛猫にも変化があって。私が頭の上に手をかざしても警戒するようになってしまいました。その姿を見て、別れようと思ったんです。私は、夫よりも猫を取りました」
離婚を切り出すと、駿さんは驚愕。
「たかが猫への態度だけで……と言われました。だから、私にもぞんざいな言葉を言うところも含め、耐えられないと訴えました」
離婚成立。しかし彼から“ありえない要求”が
その後、家庭内別居のような状態が2か月ほど続き、駿さんが折れる形で離婚が成立。財産分与の際、駿さんはなんと「猫に芸を教えれば、SNSで有名になれるかもしれないから俺が育てる」と言ってきました。ゆうこさんは、それだけは阻止せねばと思い、自分が引き取りたいと強く訴えました。
「見返りがありそうだから一緒に暮らすというのは、私は違うと思う。メリットなんてなくても、たとえ負担が増えたとしても、ただ一緒にいたいからいる。それでいいと思うんです」
バツイチとなったゆうこさんはその後、新たな猫を迎え、現在は2ニャンのお世話に励む日々。
「毎日甘やかしていますが、手を上にかざすと愛猫はまだ警戒してしまう。心の傷を癒すことの難しさを痛感していますが、諦めたくありません」
自分という存在を軽視されてきたゆうこさんと1匹の猫。2人は悲しみを癒し合いながら、前に進んでいます。
<取材・文/古川諭香>
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
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