冬場を迎え、これまで以上に猛威を振るっている新型コロナウイルス。全国各地で感染者が急増しているのは心配ですが、同様に気がかりなのはコロナで職を失った人たちです。
厚生労働省の発表によると、コロナ関連での雇い止めや解雇は、11月13日時点で7万1121人(※見込み含む)。もっとも多いのは東京都の1万6918人で、大阪、愛知と人口密集地が続いています。
契約社員だから失業給付が出ると思わなかった
7月まで都内のアパレルショップに勤めていた福村彩花さん(仮名・23歳)もコロナによる急激な業績悪化により解雇されてしまいました。
その後は思うような業種・雇用形態の仕事は見つからず、なんとか採用された飲食店のアルバイトもコロナの感染拡大で忘年会の予約はほぼキャンセル。週末の夜も閑古鳥(かんこどり)が鳴いている状態で、今は人件費を抑えたい店側の事情で週1~2日しか働けません。
「採用された8月から11月の上旬までは週3~4日の出勤で、アパレルよりは少ないですがバイト代も月10万円は出ていたんです。けど、12月はこのままだと4万円に届くのがやっとだと思います」
ところが、彼女は大きな判断ミスをしていたことに、あとで気づいたといいます。契約社員でも、雇用保険に入っていたなら失業給付をもらうことができ、アパレルショップの解雇は受給資格を満たしていたのです(所定労働時間が週20時間以上などの条件で、会社は雇用保険に加入義務があるのです)。
そのことを知らずに、解雇された翌週から飲食店で働き始め、当時は週20時間以上勤務していたので、失業給付を受給できませんでした。失業給付は、「職が見つからない人」がもらえる制度だからです。
「私、そういう知識が全然なくて……。正社員じゃなかったから失業保険をもらえる資格なんて最初からないと思い込んでいました。たまたま知り合いに詳しい人がいて、『バイト代より多いお金をもらえていたかもしれないよ』と聞いたときは、解雇通告を受けたとき以上にショックでした」
彼氏に頼み込んで同棲を始めるも関係が悪化
契約社員やアルバイトなどの非正規雇用だと、失業給付の受給資格があっても本人がそれに気づいていないというケースはよく聞きます。
失業給付より少ないバイト代での生活を余儀なくされた彼女は、住んでいたアパートを解約。付き合って1年半になる2歳上の恋人に頼み込み、押しかける形で彼の家で同棲を始めます。
「最初はこころよく受け入れてくれましたが、彼が住んでいるのはワンルーム。向こうは私と違って毎月ちゃんとお給料をもらってるので折半というわけではないですが、家賃と光熱費の一部を負担すると話して、月4万円を支払うことにしたんです」
失業後の彼女にとってはかなりの負担でしたが、一方的に相手に負担させるようなことはしたくなかったとか。でも、一緒に暮らし始めて以降、彼氏は同棲前に見せなかったイライラした態度を取るようになり、2人の仲は険悪になっていきます。
「一応、住まわせてもらっている立場なので料理や洗濯、部屋の掃除もしていました。ただ、私も悪いのですが『また散らかして』とかポロっとくちばしったことが小言のように感じたらしく、急に不機嫌になったりすることが何度かあって。
2人で家にいても何時間もまったく会話しないこともあるし、同棲をやめたほうがいいかも…というだけじゃなく、交際そのものについても考えるようになりました」
今のままじゃ東京では暮らしていけない
彼女は飲食店のアルバイトを続けながら求職活動をしていますが、不採用ばかり。経験のある接客業も最近は求人数が極端に減っていて、ひとり暮らしが再開できるほど稼げる仕事に就けない状況にあせりを感じています。
「解雇されたことは母親に報告しましたが、すごく心配されて『いつでも帰ってきていいんだからね』と言ってくれています。ただ、私はどうしても東京で生活がしたくて地元の専門学校を卒業後、飛び出すように上京してきました。だから、本当はこんな中途半端な形で戻りたくはないけど、そんな悠長なことを言っていられる場合じゃないのは自分が一番わかっています。
まだハッキリと決めたわけではないですけど、近いうちに同棲も彼との関係もきちんと清算して地元に帰ることになるかもしれません」
故郷は東京以上に仕事のない田舎ですが、両親のツテで親戚が経営している会社で働けるそうで仕事の心配はないとのこと。それでも正社員としての採用になるので簡単に辞めることはできず、コロナが収束しても再び上京するのは難しいようです。
憧れの東京に残っても、いつ抜け出せるかわからない貧困生活、そして働き口はあるけど刺激がない田舎暮らし。現在の彩花さんの目の前に2つの選択肢があり、人生の大きな岐路に立っていると言えるでしょう。
青写真通りの人生にはいかなかったみたい
「彼も真面目に仕事はしていますが契約社員ですし、プロポーズされても素直に受け入れることは現実的に難しいです。まあ、そういう話は全然出ていませんし、今の関係を考えれば結婚を申し込まれることもないと思いますけど。
本当は東京で出会った人と結婚して、そのままこっちに住んでということを漠然と思い描いていたんです。地元は嫌いじゃないですがたまに帰省したり、なつかしむ程度で十分かなって。ただ、そんな青写真通りの人生にはいかなかったみたいです」
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●彩花さんの1か月の収支
収入
10万円(飲食店のバイト代。ただし、12月は半分以下)
支出
4万円(彼氏に払う負担分の家賃・光熱費)
3万円(食費)
6000円(通信費)
1万円(交際費)
1万4000円(雑費)
収支
±0円
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彼女は明言こそ避けましたが、内心では地元に帰る決断を下している様子。いつ戻るかは決めあぐねているようですが、12月以降のバイト代が激減することを考えると、その時期はそう遠くなさそうです。
「最初はしばらく我慢すればと思っていたけど、アパレル時代も貯金できるほど給料があったわけじゃないですし、今のままじゃ新たに家を借りても数か月で家賃を滞納することになっちゃうから……。
この前、アメリカでワクチンが開発されたってニュースがやってましたけど、私たちが接種できて以前のような生活に戻れるのはまだまだ先のこと。そこまで待っていられるほどのお金もないので」
東京などの都市部は、普段なら求人も多いので非正規雇用でも職はあります。ですが、コロナ禍で、彼女のように生活できなくなる人が急増しています。
特に若い女性の中には、「東京に住みたい」との強い憧れで上京していた人も多いと思います。彼女のように生活苦に陥り、地方の実家に帰る決断を迫られている人はきっと少なくないのではないでしょうか。
<文/トシタカマサ>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
一般男女のスカッと話やトンデモエピソードが大好物で、日夜収集に励んでいる。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
(エディタ(Editor):dutyadmin)


