「職場やグループになかなか溶け込めない」「コミュニケーションに疲れてしまう」「人と話すのが怖い」
こんな悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。とくに、あまり親しくない人や、苦手な相手と二人きりになってしまったときなどに感じるストレスや気まずさは相当のものです。
「どうすれば克服できる?」という疑問に答えてくれるのが、ニッポン放送の人気アナウンサー・吉田尚記さん。
ルールさえ覚えれば、誰でも会話上手になれる
アナウンサー、ラジオパーソナリティ、さまざまなイベントの司会進行など、広く活躍している吉田さんですが、実はもともとは人見知りで、他人とコミュニケーションを取ることが苦手な、いわゆる「コミュ障」だったのだそう。
入社したばかりの頃は失敗の連続で、ゲストからも「からみにくいアナウンサー」といわれてしまうほどだったといいます。
「他人との他愛のない雑談などのコミュニケーションは、誰でもできて当たり前のものだと思われがちですが、誰かとスムーズにコミュニケーションをとって人間関係をつくっていくのは、すごく難しいことです。
例えばうまく泳いだり、字をきれいに書いたりするのと同じように、コミュニケーションだって、練習しなければうまくなりません。ですから、うまくできない自分を必要以上に責めたり、落ちこんだりする必要はないんです」(吉田さん)
吉田さんは、約20年かけて試行錯誤を重ねる中で、「コミュニケーションのルールさえ覚えれば、誰でも会話上手になれる」という結論に辿り着きました。
ここでは、コミュ障だった吉田さんがどのように「会話への苦手意識」を克服してきたのか、そして吉田さんが編み出した会話のテクニックの中のいくつかを吉田さんの話題の著書『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)をもとに聞きます(以下、吉田さんの寄稿)。
「つまらない」と思われる恐怖との戦い
人と話すのが苦手、可能なら会話から逃げたい、つまらない人間だと思われるのがこわい。
そんな風に思っていた私ですが、たまたまアナウンサーになってしまったことで、コミュニケーションの技術をいやおうなく身につけなければいけませんでした。
仕事ですから、嫌でもコミュニケーション「しなければならない」という状況に追い込まれ、毎日バッターボックスに入ってバットを振り続けたのです。フォームがダサいとか、空振りしたら恥ずかしいとか、デッドボールが怖いなんていっていられませんでした。それが嫌なら、この仕事をやめるしかなかったのです。
コミュ障にとって、コミュニケーションは「面倒くさい」ものです。
「勇気を出して今度こそ相手に話しかけよう!」と思っても、「いつ、どんな言葉で話しかけようかな?話がうまく合うだろうか?」などと考えているうちにだんだん、「うまくいかなかったらどうしよう、つまらない奴って思われたくないな…」というマイナスの思考回路に陥ってしまい、「面倒くさい、今日はやめておこう」となってしまうのです。
うまくいかないリスクやつまらないと思われる怖さが、ネガティブな感情を生んで行動を押さえつけてしまいます。つまらないと思われることは、アナウンサーとしての仕事の喪失に直結するわけで、入社したばかりの頃の私の最大の恐怖でした。
「日本一絡みにくいアナウンサー」とゲストに言われた

入社直後の新人挨拶で何か面白いことを言わなければ…というプレッシャーと焦りから『1、2、3、ダァーッ!!』と絶叫してその場にいた全員からドン引きされたのが始まりで、恐怖が空回りしたことによる失敗談は山のようにあります。
番組ゲストとの会話をスムーズに進めるために、相手のことを徹底的に調べて臨(のぞ)んだものの、『知っていることをただ確認するだけ』になってしまい、『それは会話じゃなくて尋問(じんもん)だ』と怒られたり、事前に予行演習をしておけば上手くいくんじゃないかと思い、話が弾むような質問と回答をまとめた会話のシミュレーションシートを作ってみたんですが、相手が想定外の回答をした途端、頭が真っ白になって失礼なことを聞いてしまい、後から大目玉をくらうなど、やること為(な)すことが裏目に出てしまっていました。
ゲストの方から「日本一絡みにくいアナウンサー」といわれてしまったこともあります。
コミュニケーション上達のヒントは「ルール」と「武器」
ただ、あるときから、人からつまらないと思われようと「もうそれはそれでいいや」という感覚になったんです。たくさんの失敗を経て、そう思えるようになったということもありますが、一番大きいのは、「会話にはルールがある」ということに気がついたからです。
そして、そのルールを覚え、「会話に使える自分なりの武器」を少しずつ獲得していったことで、人と話すことが怖い、面倒くさいという気持ちを乗り越えることができました。
例えば、コミュニケーションには必ず制限時間があります。
職場のエレベーターで、顔見知りだけどあまり話したことのない人と一緒になってしまい、沈黙が気まずかった…という苦い経験は私にもありますが、その時間はせいぜい30秒くらいのものです。あるいは、共通の話題がなさそうな上司との外出であっても、電車に乗っている間の30分、タクシーでの15分など、必ず時間が決まっています。
終わりのない会話はない、その制限時間内をなんとかやり繰りすればいいんだ、というルールの発見は私の気持ちをかなりラクにしてくれました。
誰とでも苦もなくコミュニケーションをとれる人たちは、特別な「勇者」というわけではありません。彼らは、会話のルールを把握し、そこで使える武器を持ち合わせているだけなのです。丸腰で戦えといわれたら恐怖しかありませんが、「すぐに使えるいい武器があるよ」といわれたら、ちょっとがんばって会話してみようかなという気持ちになれるのではないでしょうか。
試しに、よくご相談いただくお悩みと解決のヒントとなる「会話の武器」をいくつかご紹介します。
「えっ!?」や「あっ!」の相づちは最強
・お悩み1:相手の話にうまくリアクションできず、会話が続かない
・会話の武器1:最強の相づち「えっ!?」「あっ!」を駆使する
会話が苦手という方にまず試していただきたいのは、相づちを工夫することです。
相づちは、会話をしてくれている相手への「報酬(ほうしゅう)」です。
中でも一番使いやすいのが、驚きを示す「えっ!?」や「あっ!」です。相手の話への関心を示せて、その先も促(うなが)せるのですから最強です。
自分に置き換えて考えてみても、話している相手の反応が薄いと「この人は自分に興味がないんだな」と感じて悲しい気持ちになりますよね。
逆に「えっ!?」と良い反応をしながら話を聞いてもらえたら、うれしくなってもっと話したいと思えるはず。
【具体例】
相手「この服、500円だったんですよ」
×自分「へー、安いですね」
相手「この服、500円だったんですよ」
〇自分「えっ!?安くないですか?」
「緊張してます」など感情をそのまま言葉にする
・お悩み2:話が途切れたときの沈黙や間が怖い
・会話の武器2:頭に浮かんだ感情をそのまま言葉にしてみよう
初めて会った相手との会話では、一瞬でも空白ができると気まずくなったりしますよね。
そんなときはむしろ「いきなりだと戸惑いますよね」「緊張しませんか?」など、心に浮かんだ感情をそのまま描写して言葉にすると会話が先に進みます。相手もあなたと同じような気持ちだったりするものです。
【具体例】
×自分「……(微笑)」
〇自分「……すみません、初対面だとどうしても緊張しちゃうタイプなんです。〇〇さんはどうですか?」
「〇〇できます」とアピール
・お悩み3:自己紹介が苦手。どんなことを話せば溶け込める?
・会話の武器3:「共同体への貢献」をアピールすることがポイント
職場や趣味のサークルなど、何かの「共同体」にスムーズに所属するには、貢献できること、得意なことをアピールするとよいでしょう。自分に何ができるかを先に宣言しておくと、相手もそれをわかったうえで会話のボールをパスしやすくなります。
ただし、過去の実績を語ると自慢やマウントのように聞こえてしまうこともあるので、「〇〇できます」というように、これから共同体に貢献できる能力として伝えましょう。
【具体例】
×自分「初めまして。〇〇と申します。よろしくお願いいたします」
〇自分「初めまして。〇〇と申します。最近アジア料理にはまっていて、特にタイ料理やベトナム料理なら、おいしいお店をご紹介できます。よろしくお願いいたします」
×自分「初めまして。〇〇と申します。私の趣味は筋トレで、実はボディビルの大会でも入賞したことがあります」
〇自分「初めまして。〇〇と申します。私の趣味は筋トレです。重いものを運ぶのは大得意なので、何かあればいつでも声をかけてください」
繊細な人ほど、コミュニケーションが上手くなれる
コミュニケーションがツラいと感じる人は、コミュニケーションに価値を感じているから、ともいえると思うんです。
大事に感じているからこそ、失敗が怖い、傷つくのが苦痛なんですよね。本当にコミュニケーションなんてどうでもいい、価値がないと思っているのであれば、失敗することも傷つくことも怖くないはずです。でも、そんなことないですよね。
相手に対して細やかな気遣いができる繊細な人ほど、コミュニケーションが上手くなれる伸びしろがあると思います。
会話は、ほんの少しの工夫と日々の練習で、誰でも上達することができます。お話したような武器を使って、ぜひそのための一歩を踏み出していただきたいと思います。
【著者プロフィール】
吉田尚記(よしだ・ひさのり)
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。
ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。またマンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人となるなど、アナウンサーの枠にとらわれず活動を続けている。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞。著書に『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)、『あなたの不安を解消する方法がここに書いてあります。』(河出書房新社)など。
Twitterアカウント @yoshidahisanori
<文/ビューティーガール編集部>
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