【○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.25】
「猫伝染性腹膜炎(FIP)」は致死率が高く、治療が困難な病気。近ごろはクラウドファンディングにチャレンジし、日本未認可の新薬であるMutian(ムティアン)の投薬を行う飼い主さんが増えてきていますが、高額なので、すべての子が命を紡ぐことは難しいのです。
そんなFIPにかかり、生後7か月でこの世を去ったのが、かおち(@degu74xkim)さん宅の愛猫もずくくん。一緒に過ごせた期間は、わずか2か月。しかし、かおちさんの中でもずくくんはかけがえのない愛猫です。
ぬいぐるみのような巻き毛の猫に一目惚れ
もずくくんと出会ったのは、2019年12月のこと。
「同棲を機にペット飼育可の物件に引っ越したので、先住デグーのねぎと仲良くできそうな、穏やかな性格だといわれているスコティッシュフォールドを迎えたいと思いました」
希望をペットショップの店員さんに伝えると「スコではないんですが…」と連れてこられたのが、セルカークレックスのもずくくん。ぬいぐるみみたいな巻き毛の猫にかおちさんは一目惚れ。1週間後、もずくくんは家族の一員になりました。
「もずくはよく、無音で鳴いていました。ごはんやおやつのとき、朝起きたときなど、いつも“エアにゃーん(鳴き声を出さないで、鳴く仕草)”。膝の上が大好きな大人しい子でした」
去勢手術を機にFIPであることが発覚
年明け、かかりつけの動物病院で健康チェックをしてもらい、異常がないことを確かめたかおちさんは去勢手術を予約。しかし、手術当日、病院にもずくくんを預け、2時間ほどすると電話がかかってきました。
「血液検査の結果が悪く、エコーで調べたら腹水が溜まっていて。手術ができる状態ではないと言われました」

溜まった腹水を調べると、FIPであることが発覚。
「とにかく信じられなかった。その頃はまだ元気で見た目の変化もなかったので、実感が湧きませんでした。でも、いつまで一緒にいられるのだろうと、涙がとまりませんでした」
葛藤を抱えながら、緩和療法を選択

FIPには「ウエットタイプ(急性型で腹水・胸水などが溜まる)」と「ドライタイプ(慢性型で神経症状や肉芽腫が起こる)」がありますが、もずくくんはウエットタイプ。やがて、腹水が溜まったお腹は引きずるくらいの大きさに。かおちさんは治療の選択を迫られることになりました。
「もずくはFIP以外に、輸血し続けないと治らないほど酷い貧血だったので、日本で未認可の薬はどういう影響をもたらすか分からないと言われました。また、薬で仮に症状が治まったとしても、人間と違って猫の輸血はなかなか見つからないこともあり、緩和療法を選ぶことにしました」

助けたい命を助けられない、もどかしさ。そんな葛藤を抱えながらも、かおちさんはもずくちゃんを支え続けました。
「ご飯を食べないと栄養失調になり、すぐに身体が弱ってしまうのですが、腹水の影響で食が細くなっていって……。だから、いろんなメーカーのドライフードやウェットフードを試し、少しでも食べられるご飯を探しました」
闘病から1か月で虹の橋へ

闘病から1か月ほど経った2月13日、もずくちゃんはかおちさんのそばで、静かに息を引き取りました。
「前日から呼吸が荒くて。楽な体制を維持しながらお気に入りのソファーの上で寝ていたのですが、それから数時間後、朝起きたら隣で亡くなっていました。悲しい気持ちはもちろんありましたが、1か月間、辛い闘病をしたもずくに対し、ようやく楽になれたねという思いもありました」

深い悲しみを感じていたのは同居していたテグーのねぎちゃんも同じだったよう。2匹はほどよい距離感を保ちながら生活していましたが、火葬業者が亡骸を引き取りにきたとき、ねぎちゃんはいつもとは違う鳴き方をしていたそう。
「もしかしたら、ねぎも一緒に暮らしていた家族がいなくなってしまった悲しみを声にしていたのかもしれません」
うちの子になってくれて、ありがとう

息子みたいな存在でもあり、病気と闘い抜いた、強くて偉大な家族――。失った愛猫をそう称えるかおちさんは天国に向け、こんなメッセージを贈ります。
「もずくは風邪をひいて、お店でのデビューが遅い子でした。私たちと会わなければ、ペットショップで最期を迎えていたかもしれない。そう考えると、短い間でしたが、うちの子として暮らしてくれて良かったと思います。うちの子になってくれてありがとうと言いたい」
また、かおちさんはもずくくんの死を通して、動物病院での定期検診の大切さを痛感したそう。
「病名を宣告されたときは目に見える症状がなかったので1か月間、生きることができたのかもしれません。お腹が膨らんでから亡くなるまでは、2週間くらいでした。なので、症状が現れてから病院に行くと、病気と向き合う時間(余命)がすごく短くなる場合もあると思いました。FIPはどの猫にも起こりうる可能性がある病気ですし、他の病気を早期発見するためにも定期検診は大事です」
新しくやってきた、ほたてくん
そんなかおちさんは現在、もずくくんとよく似た柄のほたてくんと新たな絆を紡いでいます。
「この子を迎えるにあたり、家中の消毒を済ませました。FIPのウイルスが付着している可能性のある、もずくのケージ・トイレ・おもちゃなどを処分しなければならないことがとても辛かった。ほたては、もずくと性格が違い、手のかかる子ですが、毎日楽しく幸せに過ごしています」
失った命と、目の前で生きる命。その両方を愛しながら、今を生きるかおちさん。彼女の体験を知ると、愛猫との向き合い方や守り方を改めて考えてみたくなります。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
(エディタ(Editor):dutyadmin)


