長引くコロナ禍でストレスが溜まる毎日。SNSで見かけるかわいい動物たちに癒されている人も多いのでは? なかでも、愛嬌たっぷりの各地の看板猫のかわいさには悶絶! SNSでも話題になった寄席の名物看板猫ジロリをご紹介します。
25万いいね!のかわいすぎる“寄席の看板猫”ジロリ

ご紹介するのは、上野の浅草演芸ホールで毎日お客さんをお迎えしている“寄席の看板猫”こと、ジロリ(推定5歳)です。
いつも畳2畳ほどのチケット売り場の中でくつろいだり、売り場の窓際にまるで招き猫のようにちょこんと座っているジロリ。チケットを手渡す隙間からそっと手を添えたり、窓に空いた丸い枠から顔をのぞかせたり、その仕草を見た人々は、思わず笑顔になります。

落語家の5代目桂三木助さんが自身のTwitterで「浅草演芸ホールは運が良いとジロリさんが受付でチケットくれます」と呟いたところ、これまでに25万件近くもの「いいね!」がつくなど話題を集めました。そんなジロリの演芸ホールでの生活を、ジロリ担当のまさえさんに聞きました。
お師匠さんもジロリにメロメロ。でも、食っちゃ寝してるだけじゃない
元々は保護猫だったジロリが演芸ホールに引き取られたのは4年前。警戒心も相当強いかと思いきや、会って5分でスタッフの膝に飛び乗って速攻で仲間入り。今ではジロリ担当のまさえさんの隣で、チケット売り場の棚や段ボールの中で、マイペースにのんびりとくつろいでいます。
演芸ホールで活躍しているお師匠さん方の中にも“ジロリファン”は相当いるようです。

「例えば落語家の柳家小ゑん(こえん)師匠は、毎年お正月にかならず律儀に“のし”まで付けて『ジロリにお年玉』と大袋の主食をプレゼントしてくださいます。ほかにも林家ぺー先生や芸人さんから定期的に差し入れをいただいたり、お客さんもチケットを買うときに『お釣りはジロリちゃんのご飯代にして』と言ってくださる方もいるんです。ジロリは自分の食い扶持(ぶち)は自分でしっかり稼いでいるんですよ」
ジロリのお仕事は、ネズミ捕り
みんなに愛されているジロリですが、なにも売り場で食っちゃ寝をしているだけではありません。一日の営業が終わり、館内は一気に静まり返ります。そしてまさえさんが出勤する朝8時半まで、あるミッションを課せられたジロリは館内をくまなくパトロール開始。そのミッションはズバリ“ネズミ捕り”です……!
「浅草演芸ホールは歴史のある古い建物です。しかも周辺に飲食店も多いので、これまで幾度となくネズミの被害に悩まされてきました。ときにはお客さん側の客席を走り回ったり、芸人さんたちが芸を披露する高座を横切ったことも……。そこで先代の猫をはじめ、このホールに住む猫はネズミ退治という使命を課せられているんです」
普段は窓口で寝ていることも多いマイペースなジロリですが、静まりかえった館内の隅々まで巡回し、なんとこれまで12匹ものネズミを捕獲したそうです。
「ある朝わざわざチケット売り場の台に“ジロリの獲物”が置かれていて……。恐らく私のことをエサも取れないダメなヤツと思っていて『ほら、俺が獲ってきてやったから食えよ』と面倒を見てくれたのでしょう。朝からかなりの衝撃でしたが、ジロリはすごく誇らしげでした(笑)」
まるで講談?くんずほぐれず、大ネズミと一騎打ち
ネズミを捕まえる猫なんて最近とんと見かけませんが、ジロリは夜中になるとおっとりモードから俊敏なハンターモードに変身します。そんなハンタージロリはある日、“演芸ホールのボス”と壮絶な戦いを繰り広げることになるのです。

「館内にはボスと言われる、ちょっと大きいくらいの子猫サイズのネズミがいました。いつもなら朝私が出勤するとホールの入口まで迎えにきてくれるジロリですが、その日はまったく影も形もなくて。売り場の部屋に向かうと、ジロリが物凄い形相で部屋の一点を見つめていたんです」
いつもと違う朝。売り場の中にはギラギラと眼光するどくいきり立つジロリ。無残にも引き裂かれた無数の紙切れと猫の毛が舞い、それがまた相当の強敵であることを物語っている。ジロリの視線の先にある猫用トイレ。
そしてその陰でうごめく影。
なんとそこには体重6キロのジロリに引けを取らない、館のボスと言われてる大ネズミの姿があった……!
大捕物の結果はいかに…?
「もうお互いに凝視していて一歩も動けない状態です。私が出勤するまでにも相当戦い続けていたようで、部屋の荒れっぷりもすごくて。部屋中に張り詰めたような緊張感が漂う中、次の瞬間にジロリが暴走列車のごとくボスネズミに突進していきました」
一瞬のタックルに息をのむ暇もなく、ジロリは大ネズミを視界にとらえる。
迫るジロリ、ひるむボスネズミ。
しかし、ついに勝負が決したかと思った次の瞬間、なんとボスネズミはひらりと華麗に宙を舞ってジロリという巨体を飛び越えていく……!
まさえさんのお話は、まるでテンポもよくキレもいい講談を聞いているようです。とにもかくにも、大捕り物を繰り広げた浅草演芸ホールのジロリ。ボスを完全に仕留めることはできなかったそうですが、それ以来ボスの姿はぱったり見なくなったとか。男ジロリ、人知れずひっそりと戦いに明け暮れていたのかもしれません。
おっとりとした愛嬌のある癒しキャラ、そしてやるときはやる猫、ジロリ。そんな緩急メリハリのついたイケメンジロリは、比較的午前中ならば売り場で窓越しに会える確率が高いそうです。
●ジロリのTwitter @mistresskuro444
<文/青山ゆずこ>
青山ゆずこ
ライター兼漫画家。ニッチな世界やアングラな体当たり取材から、認知症の介護問題など幅広いジャンルで取材・執筆を行う。著書に、夫婦そろって認知症の祖父母との7年間に及ぶドタバタ在宅介護を描いた『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』(徳間書店)
(エディタ(Editor):dutyadmin)
