はたから見ればたいして気にならない部分も、本人にとってはコンプレックスだったりすることはよくあります。
長谷川ゆかりさん(仮名・30歳)はモデルのような華奢な体型です。しかし、この体型がコンプレックスだったといいます。
クライアントに根回しして、晴れて独立
ゆかりさんは、フリーランスのライターをしています。守備範囲は男性向け雑誌から、実用書、アラサー女性向けのニュースサイトまで幅広い分野。
「今は、大手出版社や、広告代理店からの依頼が多いから大丈夫なのですが、少し前までは、ギャラの未払いや、聞いていた単価を下げられるなどトラブルが多かったんです」
ゆかりさんは、もともとは編集プロダクションで働いていました。
「そこは、社長と私と、もう一人のスタッフしかいない個人事務所でした。今思えば、その頃から、ギャラの未払いに近いことはあったんですよね。私の給与を上げると言って、ずっと据え置きだったんです。しかも、雇用保険も未加入のまま……。私は仕事のノウハウや人脈を作るまでの我慢だと思って、少しずつクライアントに『退社してフリーになるのでよろしくお願いします』と根回しをして退社しました」
ところが、順風満帆とはいかなかったようです。
ギャラを勝手に半額にされていた…
「独立してからは、ライターとしていろいろと書きました。漫画の原作などもやったのですが、編プロ時代だと二次利用の料金を支払ってもらえたのに、フリーランスになったら、一切払ってもらえなかったんです。
全部、口約束で進めたのがいけかったのですが、言われていたギャラを半額にされたことがあったんです。依頼がゲーム本だったので『ゲームは得意ではない』と伝えると『大丈夫、ネットにある画像と文章を使って書けばいいから』と言われて、断れず渋々受けて書きました。そしたら、入金が聞いていた金額の半額……。慌てて問い合わせてみると『あなたの記事、そのままじゃ全然使えなくて、かなり直したんでその分を引いておいた』と逆ギレされました」
本来ならば、納品したものに対しては、正当な対価が支払われるべきですが、ゆかりさんは「自分が悪い」と諦めてしまったそうです。
「実はその後も、ギャラ関係のトラブルが続いたんです。ウエブの仕事だったのですが、PVが目標達成したらインセンティブがもらえるという話で、バズるような記事を取材して書いたんです。実際にPVも良かったのに、何度問い合わせても『先方の連絡待ち』と言われて、結局振り込まれなかったんです。酷いですよね…」
ギャラが支払われないのは「鍛えてないから」!?
そんなとき、雑誌やウエブでライターとしても活動している先輩の編集者に会う機会があり、相談してみたといいます。
「記事の打ち合わせで会ったのですが、『未払いが多いんです』と言ったら、『鍛えていないからだ。鍛えていないから舐められるんですよ』と、虚弱体質で弱そうなところを指摘されたんです。
最初は『そんな馬鹿な』と思いましたが、確かに思い当たるんですよね……。電車でも降りてくる人がわざとぶつかってきたり、狙われやすいんです」
筋トレの効果は…?

そこで、ゆかりさんは一念発起し、毎日腹筋30回、スクワット50回を開始しました。やっているうちに次第にハマっていき、自宅には、筋トレに使うハーフストレッチポールや、筋膜をほぐすフォームローラーなど健康グッズが増えていったそう。
「元が筋肉の付きやすい体質のせいなのか、腹筋が付いてきたんです。健康診断で、女医さんに『すごい腹筋ですね』と褒められました。体を鍛えるうちに自信がつき、肉体的にだけではなく精神的にも強くなっていく感覚がありました。
そして、あるときクライアントに『どうしてこの金額なんですか?』と聞くことができたんです。鍛えてない見た目で舐められていたのかはわからないですけど、身体を鍛えるのはちょっとした自信にはなりましたね」
自信を持とうと意識してマインドセットするより、体を鍛えるほうが取り組みやすく、効果を実感しやすいのかもしれませんね。とはいえ、そもそもはギャラ契約があいまいすぎる業界慣習が問題なのですがーー。
―私のコンプレックス―
<取材・文/阿佐ヶ谷蘭子 イラスト/とあるアラ子>
(エディタ(Editor):dutyadmin)
