【○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.21】
奇跡のにゃんこ。そう呼ばれ、多くの人から愛されているのは、ゆこさん(@h_jzg)の愛猫あるくくん。甘えん坊で人間好きなあるくくんは複雑な血管の異常と肝疾患を抱えながらも、たくましく生きています。
絶叫するガリガリの子猫を保護
ゆこさんとあるくくんが出会ったのは、約4年前のこと。
「娘が友達との帰宅中、絶叫に近い鳴き声を発している生後1か月半ほどの子猫に遭遇しました」
検査で発覚した、とても珍しい症例
子猫は肋骨が被毛の上から分かるほどガリガリ。腫れた顎には血の塊が見られ、足の肉球は皮が剥けていました。娘さんから助けを求められたゆこさんはミルクを持って駆けつけ、子猫を保護。
「風邪で鼻が詰まってミルクすら飲めなかったので、ひとまず連れて帰りました。安心したのか、その後2日ほど寝続けていました。」
治療のため、動物病院へ連れて行くとカルテを作るために名前が必要に。考えた末、自分の足でしっかり歩けるようにとの願いを込め「あるく」と命名しました。

発作後にされた余命宣告
それから2か月半後の朝、あるくくんは突然発作を起こし、先住猫ノッチちゃん(当時21歳/享年22)に対して攻撃的に。
他にも、振戦(ふるえ)や過食をし続けたり、よだれを垂らして鳴きわめいたりしていたため、すぐに動物病院へ。しかし、血液検査すらしてもらえず、「今は何もすることがない」と告げられたそう。
帰宅してもあるくくんの状態は良くならず……。ベッドでよだれを垂らしながら大人しく座る姿を見たゆこさんは「後悔したくない」と思い、高速で1時間ほどかかる夜間救急へ向かいました。

そこで分かったのは、肝臓の数値が高いこと。一泊入院し、点滴で数値を下げることになりました。
「翌日、最初に行った病院で詳しく診てもらうようにと言われたので、検査結果を伝えに行きました」
複雑な思いを抱えながらも、その病院でCTを撮ると、肝臓に腫瘍らしきものがあることや消化管から伸びている門脈からシャント(横道)ができて静脈に繋がってしまう「門脈シャント」が複数あることが判明。
医師からは「門脈シャントはこちらで手術できるが、この子には肝性脳症のせいで知的障害もある。1歳まで生きられないだろう」と言われました。
セカンドオピニオン、サードオピニオンを受診
ショックを受けたゆこさんは、友人から腫瘍診断医1級を持つ獣医師がいる病院を教えてもらい、セカンドオピニオンを受けることに。
「そこで、腫瘍は悪性ではなさそうだから複数あるシャントをちゃんとした医師に診てもらうよう勧められ、病院を紹介していただきました」
すると、サードオピニオンとなった紹介先の病院で信頼できる肝臓専門医に出会え、開腹検査をすることに。
「もしできるようなら検査時に手術も行うといってくださったので、1歳になるのを待ちました。肝臓に負担をかけないよう、去勢手術やワクチン接種はできませんでした」

費用が高額だったため、ゆこさんはクラウドファンディングで支援を募ることに。多くの支援が集まり、周囲の人の温かさに触れ、孤独な闘病生活を頑張ることができました。
開腹手術で判明した愛猫の病状
長い道のりを経て受けた開腹検査。そこで判明したのは、あるくくんの病気がとても珍しいものであるということ。
「多数の門脈シャントだけでなく、大動脈へのシャントができてしまう肝動脈門脈ろうという病気でもありました。極めてまれな複合型症例であったため、奇跡的に血液の流れのバランスがとれ、生きられていたのだそうです」

また、腫瘍だと思われていたものは肝臓の表面にできていたキノコのような物体であることが分かったそう。
「執刀医も初めて診るものだったらしく、詳しい先生に検査していただいたら、肝臓自体が生き残るために新しい肝臓を作っていたそうで……。今も増え続けていると思われます。1歳まで生きられているのが不思議。亡くなったときは研究のために肝臓の提供をお願いしたいとも言われました」
定期検診の大切さを呼びかける
それから3年経った今、あるくくんは血中アンモニアを抑えるシロップや発作を抑える薬を飲み、開腹検査を行ってもらった病院へ定期的に通いながら、自分の足でしっかりと生きています。

「動脈へのシャントにより門脈の血流が逆流し、肝臓で解毒できなかった血が体内を巡っているので肝性脳症を起こさないよう、お薬でコントロールしています」
気圧の関係で軽い発作が起きるため、天候の変化が激しい時期や台風の多い時期は特に注意が必要。
「発作時は猛ダッシュで走り、壁に激突してしまうこともあるので、薬が効くまでは大判タオルや毛布などでくるみ、抱え込みます。この方法は、同病の子と暮らしている方から教えていたただきました」
自身の経験を通し、ゆこさんは定期健診の大切さを訴えるとともに、興奮状態、よだれ、過食、目が赤みなどの異変を感じたときはすぐ動物病院で診てもらうよう勧めています。
「門脈シャントは月齢数に関係なく発症する病気。あるくのように投薬で普通に過ごせる子、手術ができる子、手術をしても再びシャントができてしまう子などさまざまなので、多方面の獣医師に同じ質問をしながら治療法を決めるのもよいと思います。同じ病気で悩んでいる方の力になれるよう、私もあるくの様子や費用面などを発信し続けていきたいです」

そう語るゆこさんは人生をかけて、愛猫と共に生きていこうと覚悟しています。
私と愛猫の出会いは必然だったのかもしれない
「保護したときは去勢手術を終えてから譲渡しようと考えていました。でも、病気が判明したので我が家で最期まで面倒を見ようと決意しました。実は私自身も完治しない病気を抱えているので、あるくとは重なるところがありました。こうして出会ったことは、必然だったのもしれません」
辛いことも多い毎日をなるだけ楽しく過ごし、いい“猫生”だったと思ってもらいたい。そんな祈りを抱きながらゆこさんはひとつひとつの治療を「本当に必要か」「私のエゴではないか」と考え、獣医師に相談しながらあるくくんの身体を守り続けています。

「朝晩の投薬があるので旅行には行けなくなりましたが、あるくと過ごす日々は楽しすぎる。私の人生の中にこういう時間があってよかった。人間の1日は犬猫にとって5日間分くらいに値すると聞いたことがあるので、より大切に過ごしたい」
1日の尊さを噛みしめるゆこさんは最後に、こんな本音も語ってくれました。
「病気で苦しんでいる子の飼い主さんのことは、どうか温かい目で見守り、応援して欲しい。詐欺まがいな勧誘やSNS上での集団攻撃なども目にすることがあるので、そう思います。さまざまな考えがあるとは思いますが、優しさを持って支え合える世の中になって欲しいです」

「1歳までしか生きられない」と言われたあるくくんは、今年4歳に。優しいまなざしに見守られながら、今日も猫らしい日常を謳歌しています。
<文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
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