コロナ禍で生活が変わったことによる移住=コロナ移住を考える人が、いま増えています。実際にコロナ移住を決めた人は、何を重視してどのように新たな生活拠点を選んだのでしょうか?
仕事のテレワーク継続を機に栃木県への移住を決めた体験談を紹介した前回記事に続き、今回はコロナ禍での近隣トラブルから移住を決めた方の体験談を取材。さらに『SUUMO』編集長の池本洋一さんに、住み替え検討のポイントも尋ねてみました。
在宅時間が増えて、予想外のトラブルが発生
都内のマンションに住む会社経営者の斉藤雄吾さん(仮名・40代)は、妻と小学生の子供2人の4人暮らし。移住を考え始めたきっかけは、新型コロナ流行にともない小学校が休校になった時期に、下の階の住人から苦情を受けるようになったことだといいます。

「学校が休みのうえ外にも気軽に遊びに行けないとなると、子どもたちはどうしても部屋で騒ぐことが増えてしまいます。まだ小学生なので走り回ることもあるし、ケンカをして大きな物音をたててしまうことも……。すると、下の階の人が『ピンポーン』と直接注意しにやってくるんです。
おそらく、下の階の人もテレワークなどで家にいる時間が増えたんでしょうね。そのうち、子どもが物音をたてるたびに『ピンポーン』とくるようになり、妻がもうノイローゼ状態になってしまって。子どもが少しでも物音をたてると妻が『やめてー!』と叫ぶような感じになってしまいました」
ただでさえマンションの騒音問題はトラブルのもとですが、在宅時間が増えたことでさらに深刻化してしまったのです。
都心へのアクセスも良い袖ヶ浦市に目を付けた
「企業のテレワーク化はいつまで続くかわかりませんし、学校もいつまた休校などになるかわかりません。だったら、家族の心の平穏のため騒音を気にせずに住める家に引っ越そうと、家探しを始めました。そこで目を付けたのが、千葉県・房総半島の袖ヶ浦市。房総と聞くと都心から遠いイメージがありますが、東京湾アクアラインを使えば車で品川まで45分で着いてしまうんです」
確かに、高速バスの所要時間を見てみても、袖ケ浦バスターミナルから品川までは45~52分。新宿までは55分で、羽田までなら22~29分しかかかりません。利便性の高さはなかなかです。
土地を探したポイントは?
「肝心の土地は『市街化調整区域』を探しました。市街化調整区域は本来なら住居を建ててはいけない地域なのですが、例外となる要件がいくつかあり、それをうまく使えば単価が安い土地を手に入れることができるんです。そもそも騒音などを気にするのが嫌で都内を脱出するのに、家が密集している市街地に引っ越すメリットはありませんからね」
そして斉藤さんが見つけたのが、市街地と調整区域の線引き前に建てられていた古屋付の土地。線引きによって市街化調整区域のほうに分類された土地ですが、古屋は線引き前からあったため、その古屋を解体→新築するのはOKなのだとか。
「周りに畑や木々しかない1,043平米(315.56坪)の土地で、価格は約2500万円。袖ケ浦は開発が進んで地価が上がっていて、駅周辺は坪単価15万円ほどするのですが、そこは坪単価8万円ほど。周りに民家がないので、騒音の心配はまったくありません。それでいて車で5分もいけばスーパーや飲食店があるし、木更津のアウトレットモールも車ですぐ。さっそく購入し、いま新居を設計中で、来年には引っ越す予定です」
「広さ&部屋数」「遮音性&断熱性」にニーズが
テレワークや休校などで在宅時間が増えると、平日の朝晩と休日に過ごすだけでは気づかなかった“住まいの問題点”が見てくるもの。コロナ禍で騒音問題に直面した斉藤さんのように、そこから「住まいに対して重要視すること」が変わり、移住を考え始める人も少なくないようです。

リクルート住まいカンパニー『SUUMO』が、緊急事態宣言発令以降の全国の住宅購入・建築検討者を対象に行った調査結果*を見てみても、新型コロナウイルス感染拡大によって“住宅に求める条件”には明らかに変化が。「仕事専用スペースがほしい」「部屋数がほしい」と“広さ”へのニーズが高まっているほか、「遮音性」「冷暖房効果」「通風」「日当たり」といった“快適性”へのニーズも高まっているのです。(*対象:全国の20~69歳男女2,599人、調査期間:2020年5月17日~5月27日)
『SUUMO』編集長の池本洋一さんいわく、「賃貸マンション、とくに築年数が古いものは遮音性や冷暖房効果に問題がある場合が多く、在宅時間が増え快適性を重要視するようになるとちょっとキツい。そうした理由もあってか、ここ数ヶ月は新築戸建ての人気が非常に高まっています」とのこと。
実際、消費税増税前の駆け込みと同じインパクトで新築戸建ての契約数は増えているそうで、建売一戸建ての大手2社においては6~7月の単月契約数が創業以来のギネスを記録したとか。その人気ぶりがうかがえます。
コロナ禍においても、大都市圏の地価は下がっていない
ただ、新築戸建ては決して安い買い物ではありません。“買い時”はいつなのでしょうか?
「このコロナ禍においても、全世界的に大都市圏の地価は下がっていません。しばらく待ったところで下がる見通しは立たないでしょう。でも、これまで不動産状況は右肩上がりで、1年でも早く購入したほうがおトクでしたが、さすがにこれまでよりは伸びなくなるはず。焦って決める必要がなくなり、そのぶん選択肢が増えると思います」(池本さん、以下同)
住宅ローンを考えると、今すぐ動いたほうがおトク
ただ、住宅ローンを考えると話は別。現在、消費税10%の引き上げ対策として、住宅ローン減税の控除期間が10→13年間へと延長されていますが、その期限が迫っているからです。
「この控除期間の拡充措置が適用されるには、消費税10%で家を購入し、令和2年12月31日までに居住することが条件になっています。もう間近ですが、消費税増税相当額が還元されることになるので、逃すのは惜しい金額になりますよね」

注文住宅を新築する場合は9月末、分譲住宅を購入する場合は11月末までに契約を行えば、新型コロナウイルスの影響で入居が間に合わない場合に限って入居期限は令和3年12月31日までと緩和されますが、それでも悠長にはしていられません。
現在の住まいに大きな不満があり、確実に近いうちに住み替えること決めている場合は、すぐに具体的に動き始めてはいかがでしょうか。
<取材・文/持丸千乃 コメント/池本 洋一>
池本 洋一
株式会社リクルート住まいカンパニーの不動産・住宅情報サイト『SUUMO』編集長。住まいの専門家としてテレビ・新聞・雑誌などのメディア出演、講演、執筆を行う。また、内閣官房、国土交通省、経済産業省等の委員会の専門委員も歴任。
(エディタ(Editor):dutyadmin)




