結婚は人生における選択肢のひとつだ。しなければいけないものでもない。そして、たとえ選択、決定して取り入れたところで、「これは違う」「失敗だった」と思ったら、解消してスタートに戻ればいいのだ。最終的にその結婚や離婚が、失敗か成功かについても本人が決めることだし、はたからとやかく言うことでもない。
恋愛や結婚に、万人にあてはまる成功法則があるわけではない。ただ、「この結婚、失敗だった」と思っている女性たちの話には、きっと参考になるポイントがたくさんあるはずだ。

写真はイメージです(以下同じ)
相手選びの失敗~出会って2ヶ月でスピード婚
交際期間が短いからといって、必ずしもうまくいかないとは限らない。結婚してからゆっくり互いを知り合うことが楽しかったと言うカップルもいる。ただ、よく知らないままに結婚という日常生活に突入して、互いを知るより先に破綻してしまうふたりもいる。
「境遇が似ていたんですよ。それで互いの吸引力がすさまじかったんだと思う」
そう言うのは、ヤスコさん(33歳)だ。29歳のとき、3歳年下のヒロアキさんと知り合って2ヶ月で婚姻届を出した。
「周りはびっくりしていました。私もびっくり。だけど30歳までに結婚したいと思っていたので、この機会を逃してはいけないと思ったんです」
そもそもの出会いは、会社員のヤスコさんが外回りをしているとき急な雨に見舞われ、飛び込んだカフェでだった。店内を歩き始めたとき、ヒールが滑(すべ)って転倒、それを助けてくれたのがヒロアキさんだった。
「彼は私を抱き留めようとして結局、一緒に転倒してしまって。ふたりで笑いながら起き上がろうとしたんですが、私は起きられなかった。そうしたら彼がそのまま近くの病院に連れていってくれたんです。彼も仕事中だったのに」
みるみるうちに足首が腫れ上がった。骨折を心配したが診断の結果は捻挫(ねんざ)。ヤスコさんは彼の連絡先を聞き、その日はお礼を言っただけでそのまま会社に戻った。彼は会社まで送ってくれたという。
「とにかく痛かったから何も考えられなかったんですが、その日、帰宅してから考えたら、あの人はなんて親切だったんだろうと。ろくにお礼も言わずに申し訳ないことをしたと思って、名刺に書いてくれた彼の携帯番号に電話をしたんです。彼は『たいしたことはしてないですよ』と爽やかに言ってくれて」
暗い部分がわかりあえたので運命の人だと思い込んだ
その日から連絡をとりあうようになった。そして2週間ほどたち、足もかなりよくなったので、お礼に食事でもとヤスコさんから誘った。
「彼は『その言葉を待ってました』って。楽しいんですよ、彼との会話が。そして初デートしてお互いのことを話したら共通点があったんです」
互いに離婚家庭で、母ひとり子ひとりの環境で育っていた。実の父親の顔さえ覚えていない点も一致していた。
「そういう心の中の暗い部分、ふだんは出さない面がわかりあえたので、急にお互いに運命の人だと思い込んでしまったんだと思う」
初めてのデートで彼の自宅アパートに泊まった。翌日は彼が彼女の部屋へ。それが繰り返されて1ヶ月半後には婚姻届を出していた。
食事を作ったら「え、いいよ、ラーメン食べるから」
「すぐに部屋を探して引っ越して。忙しかったですね。ちょうどそのころ私の仕事は繁忙期が始まったところで、ただでさえ残業続き。それでもなんとかがんばりました」
疲れ果てて深夜に帰宅すると、彼はすでに寝ている。テーブルの上には食べ終わったカップラーメンのゴミが置いてある。
「彼が料理できるかどうかも知らなかったわ、そういえばと思った日がありました。でもそのときはそれ以上、考えられなかった。明日も仕事をするために早く寝たい。それだけ。週末もどちらか1日は必ず仕事でしたし、休みの日はとにかく眠っていました。
彼にももちろん、私の繁忙期については話してあったけど、今思えば、どのくらいわかっていたのか……。超繁忙期が一段落したところで、ようやく彼が帰宅したとき、夕飯を作っておくことができたんです」
彼がそれを見て「おいしそう」と言ってくれるものだと彼女は信じていた。ところが彼の口から出たひと言は、「え、いいよ、ラーメン食べるから」だった。
「彼は子どものころから母親に夕飯を作ってもらえなかったので、インスタントラーメンや菓子パンばかり食べていたそうです。だから今でもそういうものでじゅうぶんなんだそう。家庭料理が気持ち悪かったみたい。
うちも母が働きづめで夕飯はめったになかったけど、私は小学校中学年くらいから自分で作ってました。同じひとり親家庭でも、何かが違っていたんですね」

半年でなぜ結婚したのか思い出せなくなった
心に巣くうマイナス部分で惹かれあったものの、いざ生活をともにしてみるといろいろな違いがあった。そしてその違いをお互いに納得できるほどの人間関係がそもそも築けていなかった。
「仕事の合間を縫ってデートして、相手との距離を縮めていって結婚したほうがよかった。つくづくそう思いました。彼は自分の分の洗濯はするけど私のはしてくれない。私が少し時間ができたので、週末、一緒に買い物に行っても彼が買うのはレトルトや冷凍食品ばかり。
『一緒にパスタでも作ろうよ』と言ったら、パスタ茹でてレトルトソースかけたほうがおいしいよって。外食はいいんですって。プロの仕事だから。
たまに近くの居酒屋に行ったりしましたけど、そうなると私たち、会話がないんですよね。彼はゲームが大好きだけど私はほとんどしない。私は映画館で映画を観るのが好きだから誘っても、『ごめん、めんどうだからひとりで行ってきて』と」
一緒にいる意味がわからなかった。そもそもどうしてあんなに盛り上がって結婚したのかも思い出せなくなっていた。たった半年で。
「婚姻届を出して半年たったとき、『私たち、このまま結婚している意味がある?』と聞いたら、彼は『そうだね』って。それですぐに離婚しました。友だちにはウケましたね。スピード結婚にスピード離婚。何も考えてなかったみたいで恥ずかしいです(笑)」

次は出会ったら、ゆっくり知り合っていきたい
ただ、あの怒濤のような1年弱を、ヤスコさんは後悔していない。自分の中で情熱がほとばしって結婚に至ったのも事実だし、彼との関係を築けなかったのも事実だが、そういう経験をしたことで、これからまた人生をやり直すことができると感じたという。
「何かに突き動かされるような情熱が自分の中にあると確認できたのがうれしかった。でもその激情に巻き込まれて冷静さがなくなってしまった。次は出会ったら、ゆっくり知り合っていこうと思っています」
勢いや情熱にかられて婚姻届を書いてしまう人は少なくない。もちろん、それも悪くはないが、すぐに離婚というリスクを考えれば、事前に一歩踏みとどまって時間をかけてみてもいいのかもしれない。
―シリーズ「結婚の失敗学~相手選びの失敗」―
<文/亀山早苗>
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亀山早苗
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数
(エディタ(Editor):dutyadmin)