一気に夏らしくなり、噴き出す汗、汗、汗……。最近では40度を超える日も珍しくありませんが、夏といえばやはり汗対策に気を遣う方も多いのではないでしょうか。
しかし過剰に気にしてしまった結果、逆効果どころかとんでもない“異臭騒動”にまで発展したケースもあるのです。
登校するだけで、“ヌルッ”と滑るほどの汗が
「夏場はもう常にシャワーを浴びているのかっていうくらい、全身びしょ濡れ状態。大げさに言っているんじゃなくて、すぐ服の色が変わるくらい汗ばむんです」
そう言いながらせわしなくハンドタオルで顔や首を拭く木島里奈さん(仮名・26歳)の悩みは“汗っかき”ということ。とくに太っているというわけではないが、人よりもかなり汗をかいてしまうという体質のため、子供の頃から夏が物凄く嫌いだったそうです。

「夏は本当に地獄で、登校しただけで露出している肌の部分を触ると“ヌルッ”と指が軽く滑るくらい汗をかいているんです。服の部分もすぐにしっとりと湿っていて。
そのせいで夏場とはとくに人に触られることに敏感になってしまって、友達に軽く肩をタッチされたり背中を触られるだけでも『ヒィィィ!』と過剰に避けちゃう。それに汗をかくと自分がすごく臭くなる気がして、エレベーターなどの個室にも入れません」
「服の脱水忘れた……?」と友人に言われてショック
学生時代の“体操着の貸し借り”にも相当トラウマがあるとか。
「ぼ~っとしていて言われるがまま、私が着た後の友達に貸したことがあるのですが……服を持った途端『……脱水忘れた?』と真顔で言われたのが本当にトラウマで。冗談ではなく本当に汗でずしっと重いんですよ。
それ以来服なんか人に貸せないし、平気で貸しあっている友達を見ると、『なんなん、あんたら体から水分一切出ない妖精なの?』と自分とは別世界の人間にしか思えませんでした」

ほかにも、汗染みを気にして「夏は黒か白のとにかく汗が目立たない色の服しか着られなかった」という木島さん。また、汗と匂いのせいで、夏場はとくに「人付き合いが悪い奴」「気分屋で人嫌い」など誤解されることが多かったそうです。
なんとか改善しようと独学で汗対策に熱心に取り組みますが、いつもそれが裏目に出てしまい、事態はより深刻化します……。
ニオイ対策のはずが、香りを重ねすぎて悪臭に
木島さんは学生時代から社会人になりたての頃まで、夏はずっとスプレータイプや直塗りタイプの制汗剤を、ワキや胸の下、Vラインや首元などにこれでもか! というほど塗りたくっていました。

「でもすぐにムワッと匂いが出てきたり汗が噴き出るので、次はベビーパウダーを塗って一時的にサラサラにしたり。でも、汗→制汗剤→ベビーパウダー→汗の繰り返しで、さらに匂いがきつくなるというか……。昆布と鉄を酢に漬けてからそのまま炎天下に放置したような、なんともいえない“すえた”匂いになるんです」
夏場に昆布と鉄を酢に漬けたことがないので、想像しにくいような、なぜかちょっと想像できるような。さらにこの状態に香水までブレンドされることもあるとか。もはや匂いの大渋滞です。
「犬小屋で酔いつぶれた香水きっついおばはん」
「匂いを消すには何かの匂いでごまかすしかない!」と、足し算の消臭しか思いつかなかった当時の木島さん。とにかく手当たり次第に香水をかけていたのだそう。

「大学時生代に実家に帰ったときなんか、母に『あんた! 香水きっついおばはんが、浴びるように酒を飲んで犬小屋で酔いつぶれて寝てしまったような匂いがするけど、どうしたん!?』と真顔で言われました。ちょっと笑えましたが、結構ショックでしたね」
木島さんの実家は関西だそうですが、母のツッコみが妙に的確……。
でも独学の対策をすればするほど、どうしてもそれが裏目に出てしまいます。
替えのTシャツや下着を持ち歩き、余計に汗だく……!
「匂いを重ねても逆効果だということが分かったので、今度はとにかく替えの服や下着を大量に持ち歩くようになりました。多分敏感になりすぎて当時は少しでも汗ばんでしまうと、人と面と向かって話もできませんでした。
そこで大きめのリュックに替えの下着やTシャツを3枚ずつ詰め込んで、お徳用の大きなフェイシャルシートとタオルも持ち歩いていました。パッと見、軽く登山か旅行に行くくらいの荷物です」

友達とのカラオケや女子会でも一人だけ大荷物で、しかも汗だくだったとか。
「荷物が重いから余計に汗をかく→汗をかくからまた荷物が増えるという悪循環でした。今度は友達の間で『あの子はいつでも家出できるように荷物を持ち歩いている』とか、『実は訳ありな、複雑な家庭環境の子』とか勝手に噂されるようになって。違う違う! って言っても、みんなちょっと神妙な顔で見てくるんですよ。ついには親友から、『なんかあったら相談に乗るから』『一人でどっか行かんといて』ってめちゃくちゃ心配されて……。なんかもう、ここまで勘違いされると本当のことも言えませんでした(笑)」
社会人になってやっと、医療機関にたどり着けた
その後、社会人になると同時に多汗症に特化した皮膚科や専門医をたずねて、今では塗り薬などで状況は少しずつ改善していったそうです。

「汗っかきで相当生きづらい日々を過ごしていましたが、その頃は『多汗症』っていう病気があることすら知りませんでした。
それに、汗くらいで病院に行っていいのかすごく悩んでいたり。でも、私のように汗や匂いで悩んでいる人も世の中にはたくさんいると思うからこそ、言いたい。『こんなことで』ってためらわないで、すぐに病院へ行ってほしいです。私のように独学で変に突っ走らないで。
今では自分でも笑えますが、私なんか匂いを重ねまくって“悪臭の権化(ごんげ)”みたいになっていたので……。権化になる前に、ぜひ!」
病院に行くまでは憂鬱(ゆううつ)ですが、行ってしまえば意外と「こんなもんか」と思えるもの。思い悩む前にぜひ専門家にゆだねてみましょう。
―あの夏の黒歴史―
<文/赤山ひかる イラスト/真船佳奈>
(エディタ(Editor):dutyadmin)
