長い付き合いの男性の友達が、ある日急に恋人になる…ドラマや漫画なら素敵な展開です。
ところが、現実にはそう上手く行かないようで…。
学生時代の仲良い後輩、案外いけるかも
なんであんな喧嘩してしまったんだろう? 都内の某飲料メーカーで働くイズミさん(仮名・31歳)は、長らく封印しているという当時の記憶について振り返りながら話し始めました。それは、大学時代から弟のように可愛がっていたひとつ年下の後輩とのこと。
「インカレサークルで一緒だった後輩なんですけど、姉弟みたいに仲良かったんです。頼ってくれて、よく相談に乗ってました。後輩が就職して地方配属になってからは、会うこともなかったし、連絡もたまにになりました」
そんな後輩が東京に戻ってきたのは、彼の就職から数年後のことでした。後輩から誘われて、はじめて複数人ではなく二人で飲みに行ったのだそう。二人きりであることは特に意識もしませんでした。
「後輩は恋愛経験がほぼないのも知ってたし、だからってわけじゃないけど男って感じがなかったので」
以降、月1のペースで先輩・後輩として飲むようになって三ヶ月が経った頃。ふと、イズミさんはこんな気持ちになったのです。
――案外いけるかも。
「当時は、同じインカレサークルで一緒だった元彼と別れて1年くらい。なかなか新しい出会いもないし、いいなと思う人と知り合えてもそれとなくフェードアウトされるし。完全に空回りしてましたね。そんなときだから、『私に優しくしてくれる男の人いないかな? あ、いるじゃん!』って思っちゃったんです」
冗談っぽく「私と付き合ってみる?」言ってみたら…
今まで男として見てなかった後輩。よく見ると顔も、それに学歴も年収も悪くないし……ものすごい優良物件では?
「かといって、今さらどうやって男女の仲になれるかな~と」
二人きりの飲みに誘ってくる以上、後輩は自分に対して少なからず興味はあるはずだと踏んだイズミさん。
「また後輩と飲んだ別の日に、あくまで冗談っぽく、『私と付き合ってみる?』って言ってみたんです」

いったんはお互い冗談だと笑って終わったのですが、二人が急接近したのはその日の別れ際のこと……。後輩が急にイズミさんの手を握るなり、こう言ったのだとか。
「『今日はイズミさん酔ってるから、次酔ってないときにさっきのこと、ちゃんと話しませんか』って。冗談で終わっちゃったのかと思ってたので、ちょっと驚きました。これは本当に付き合っちゃうかもって」
早く後輩とこの先の話がしたくてたまらなかったイズミさんは、翌日に早速次の約束を取り付けました。それから一週間後――次の約束の日。やってきた後輩の態度は、いつもとちがってよそよそしいものでした。
付き合うのが「無理」な理由を次々に告げられた
「なんか変だなと思いました。食事が始まっても、なかなか核心に触れずにいるので、私から振ってみたんです」
こないだの話って? すると後輩は堅い表情で、「『それなんですけど、やっぱりイズミさんと付き合うのは無理です』って」
ぼう然とするイズミさんに、後輩は「無理」な理由を次々に述べたのです。
「『○○さん(後輩とも共通の知り合いである元彼)にイズミさんについて改めてきいてみたら、イズミさんが最近彼氏できないのには理由があるんだなって思いました』とか、『前回会って以降のイズミさんからのLINEが急に馴れ馴れしく感じてしまって、付き合うとなると無理だと思いました』とか……」
冷静に熟考を重ねた上での結論を淡々と話しだした後輩。
「でも、別にこっちは告白したわけでもないし。『冗談で言っただけじゃん』って言っても、『そういう不誠実なところも嫌だ』とか言われちゃって。取り付く島もない感じでした」
冗談を真に受けたのは後輩。私は本気で言ったわけじゃないのに、なぜ私が振られたような感じになってるの? イズミさんは内心ものすごく不愉快な気持ちでしたが、振られたみたいに惨(みじ)めになりたくない。そんな妙な意地から、帰り際にまた冗談っぽくふざけて後輩の腕に手を絡ませようとしたところ……。
SNSもブロックしたりされたり…それで最後になった
「猛烈な勢いで『やめてください』って振りほどかれて。もう最悪ですよね(笑)」

だから冗談じゃん、と言ってみても、後輩はうんざりした冷たい目。
「『もう先輩後輩でもいたくない!』って、そこそこ大きな声で言われて。私もカッとなっちゃって、『こっちは冗談で言っただけなのになに? そんなんだから彼女できないんじゃない?』ってまくし立てちゃったんです」
お互いにもう目を合わせるのも嫌といったような空気で別れると、つながっていた複数のSNSもそれぞれブロックしたりされたり……それが最後となったのです。
あんなに良い関係だったのに、とイズミさんは振り返りながら、
「手近なところで手を打とうとした私が悪いんです」
と、今でも少し後悔しているのだとか。
長年築き上げた関係も、壊れるのは一瞬のようです。
―人生最大の大ゲンカ―
<文/森田 奈々 イラスト/やましたともこ>
(エディタ(Editor):dutyadmin)
